し、シリアス・・・だと!?
かなり長い間コントじみたやり取りをしていたため少し遅れたが飯どころに案内してもらった俺と幼女は猫耳幼女に渡されたメニューと鈴のような物をひとまずテーブルに置き席に着く。
俺は酒場じみた冒険者ギルドでのことをふと思い出したがメニューに書いてある料理は未知のものが多い、とりあえず無難に鹿肉と野菜の盛り合わせを頼み、幼女は大量の果物とケーキの様な物を注文した。
「そういえば自己紹介とかいる?」
出て来て数話たったが漸く幼女の名前が判明しそうである。
しかし、魔法使いや魔導師と言うのはあまり名を明かす事を良しとしない、俺の様に自身に作用するちょっとした魔法や世界を書き換える攻撃系の魔法ばかり使う所謂『魔法使い』と違い職業として魔法使いや魔導師と言うものをやっているものたちの多くは魔法のより深淵を見るため、願わくばより強い力を得るため怪しげな契約や召喚魔法などを使用することもあり、名前がとても重要になってくる。
「どうせ付いてくるんだったら呼び名の一つは欲しいかな?」
「ふーん・・・じゃあそうだなー、ジャックってのはどうかな?」
考えた末に俺の使ってた偽名かよ!まあいいけどね?
「わかった、これからよろしくしたくはないが死ぬなよ?ジャック」
「ごめん、やっぱマーリンでいいや。」
まさかそのまま受け入れられるとは思わなかった様で訂正を求める幼女、もといマーリン、しかし気にくわない相手には男でも女でもすこしの嫌がらせと無関心を貫く世話焼きなヒミツはすでにストックしてあった契約書にジャックと書き、いつの間にかと言われたらシェイクの時にと答えながら幼女の気づかない間に採った少量の血液と髪を添えて魔力を通す。契約書が輝くと奴隷契約は完了される。
「ほい。」
「・・・・えー」
適当ながらもキチンと手順を踏んで作られた契約書を見て顔をひきつらせる仮称ジャックちゃん。
「じゃ、よろしくジャック。」
酷く不満そうな仮称ジャック、本人的にはマーリンが良かったがあまりにサクサクと決められたためとちゅうでとめることができなかった。
そのあと仮称ジャック、自称マーリンが契約をし直すのに一時間かけてそのあと名義を変えるのにさらに一時間かかり、その間に飯を食い終わり部屋に戻ったヒミツを恨めしそうに見ながら食堂で時間ギリギリまで果物をやけ食いするマーリンの姿があったとか無かったとか。
「ぐむむ、やっぱり近くにいてもあの子の因子は感じないし、魔力に特殊な波形はなかった。でもあの剣が問題なく使えるんだから……ああ、もう!面倒臭いな!」
今年で三百歳になろうかと言う亜人、夢魔族と人族のハーフ、マーリンは1人果物をやけ食いしながら独り言を呟く。
「そもそも事の発端が私の目で見えないってどういうことだよ!あのクソジィが私を騙したとは思えないし、と言うか彼に関わる事すべての事象がバグってる様に見えるとかどう言う事なのさ!もう!まったく!」
通常夢魔族と言うのは夢を見せてくる精霊の様なもので半分くらい人間が混じったところで感情などそうそう生まれない、しかしマーリンである彼女はとても感情豊かにそれこそヒミツの前や上司の前で演技し続けている時よりもはっきりとむしろ情緒不安定なぐらいだ。
「それに奇妙なのは「俺が転生者なのは確実だが神からの恩恵と言う名の異物がないことか?」っ!いつからいたの?」
セリフに割り込む様に人の不自然にいない食堂にマーリン以外の声が響く。柱の陰から出て来たのは何時もの騎士鎧ではなく、私服姿のヒミツだった。
「いやね、あんまりにも部屋に来ないものだから見た目詐欺に引っかかったロリコンとかが誘拐してないかな〜と思って見に来たんだけど・・・なんと言うか何時もの嘘っぽい表情よりもかなりいい顔してるからついつい立ち聞きしちゃってね。」
しかしマーリンはそんなヒミツを見て違和感を感じる。
「人払いの結界は?」
「俺に精神作用系の魔法は効かねえ、ついでに結界内に悟られない様に入るなんて朝飯前だぜ?」
そういえばそんな事を言っていた様な気がすると思ったが違和感はさらに大きくなる。そもそも魔力のラインを感じないのだ。
「・・・ねえ、あなた何者?」
そういいながら感知できないレベルの微弱な魔力の塊を飛ばす。するとそれを大げさに避けたヒミツではない誰かは悪態をつきながら黒塗りの短剣を抜刀する。
「ッチ、魔法使いに魔法で挑むのは分が悪いか・・・まあいい、死んでもらう!」
姿が揺らぎ黒尽くめの仮面男が現れる。光操作系のちゃちな外見模倣、人が居なくなり少し薄暗い様な食堂でなければまともに見えない様な虚像、しかし暗殺者としての技量は優れているのか動きは緩急がつき見切りにくく
「ちょっと邪魔すんなよ!」
「ヴェ!?」
「ガッ!?」
なったと思うと天井から降りて来たヒミツの峰打ちが炸裂し仮面ごと顔面を凹ませる。そして今度こそ本物ヒミツが白いパーカーに黒鉄の騎士鎧の手足を着た軽戦士風の格好で華麗に地面に降り立ったのであった。魔力のラインは感じないが圧倒的な魔力の生み出す重圧と何よりそのパッとしない感じが本人のソレであった。
「で、だ。」
降りて来たヒミツは考えを巡らせる。一つはこの暗殺者と幼女マーリンの口から出て来た転生者と言うのと特典、そして異物、気になることばかりでおじさんちょっと困ってるけどまず一つ。
「お前は何者だ?」
奇しくもマーリンが暗殺者に対して使った言葉と同じ言葉を、ニヤニヤとしながら放つのであった。




