みんなお待たせ、サァ、SANチェックを始めよう。3
恐ろしさと言うものには種類こそあれある一定の共通部分が有る。
「お、ぇ。」
詰まる所あらゆる恐ろしさの根底には理解できない、未知の要素が含まれているということ。
「見るな、目に毒だ。」
そして、その理解できなさ、未知自体は怖さのなかでも可愛い方だ。それよりも何よりも同じ系統で同じような語呂だというに『理解し難さ』というのは人間には克服できないあらゆる意味で究極的な恐怖の一つだ。
「へぇ、キミは随分と上位存在寄りなんだ。人間に見えるけど。」
そこにいたのは鋭角や角度といったもので構成されたいた今までの法則を大きく覆し、まるで人間のような、強いて言うならケモミミ少年がいた。
しかしそれは俺が聖剣を解放していたり月の叡智に直接ではないものの接続することで思考の位階を著しくあげていることや、ものの本質を理解する超解析という聖剣の能力故である。
いや、それだけでは普通理解しがたいものを許容するという暴挙は到底できるものではないのだが・・・まぁ、強キャラの特権とでも思っておくといい。
山田や他の勇者にもだが、こいつはおそらくナニカが可笑しい理解できない立体的な多角形を持つ鋭角的なナニカという矛盾を孕んだ常人には理解しがたい情報を常に放っている邪神じみた何かだ。俺は彼女を狸川のいるであろう拠点に転移させ、目の前のケモミミ少年に向かい合う。
「で、迷宮を変化させてわざわざその身を窮屈な現世の触覚に押し込めてまで出てきたってことは何かやるつもりなのか?ティンダロスの王様。」
理解し難さというのは種族や倫理観、住む場所の違いあらゆることで組み上がっていく所謂常識というものの齟齬によって起こる未知への恐れであり、ある程度同一性が認められればそれは克服できる。
しかして目の前のケモミミ少年に見えるナニカはそう言ったものを超越した根本的に違う。
「ははは!ただただ気まぐれに、魔力と特異点が揃ったから出てきただけ、って言ったらしんじてくれるかい?」
俺は周囲に彼の氏族の一員であろうティンダロスという都市を運営する側のナニカが集結しているのを感じつつ。こう答えることにした。
「ああ、別にいいぞ。結構どうでもいいからな。」
「そうだろうそうだろう?やっぱりここは・・・うぇ?」
ノリノリで王様っぽい動きをするケモミミ黒いと黒い尻尾を持った狼のようなケモミミ少年がビキリと固まる。するとその影から滲むように侍女のような同じくティンダロスの王たる力を感じさせる女性が出てきた。
「ミゼール様、その阿呆面をさっさと元に戻してください、お客人が笑っていますよ?この愚王が。」
そして何故かこの場で最も力が強いであろう彼を蹴りつけ、踏みつけながら冷ややかな目で見下ろす。果たしてそれが支配者に対する接し方として正しいのかどうかは議論の余地があるかもしれないが相手の反応が駄目だった。
「あふん、蹴らないで!ああ!でもやめないで!・・・睨まれるのぎもじぃぃぃぃぃ。」
「・・・」
何だろう、結構頑張って強そうなやつオーラを出していたのが一気に解けてしまった典型的な場面を見ている気がする。あと、このSMプレイはいつまで続くんだろうか?
と、思ったのもつかの間侍女のような女性はアイアンメイデンのような何かをどこからともなく取り出し、踏みつける力を強くする。
「死にますか?この駄犬が。」
メリメリと音を立てて床に沈み込みそうになるミゼールと呼ばれた少年のような王様はジタバタと暴れ弁明する。
「あ、はいごめん、ふざけすぎた!ふざけすぎ・・・あ、今日は白なんだ「殺します。」え?ちょっ!ま、ぎゃあああああああ!!」
きっと彼の、女性に踏みつけられているという視点から彼女の顔を見ようと努力した結果彼女の長いスカートに包まれた三角の布が見えたのだろう。
それについて余計なことを言ったためにアワレ、少年はアイアンメイデンの中に蹴り込まれそれを熱されながら中の棘に刺されるという思いもよらない刺激的な体験をすることとなったのだった。
んん゛、ぎもじいぃぃぃぃ!!
「何や、盛った犬の鳴き声かいな?」
「う、っゲェ。」
「えへへ、神凪〜えへへ。」
「・・・・重い。」
結界のある最先端部まで届いたこの声はかれが真性のソレである事が周囲に知らしめられる事と同義であると同時にかれの興奮を更に掻き立てるスパイスになった。らしい。たぶん、メイビー。
「はぁ、はぁ、はぁ、んん゛!本題に戻ろう。」
「いや、何普通に取り繕ってんだこの変態。」
「・・・うん、ダメだ。興奮してしまう!」
本格的にダメかもしれない、というかむしろ既に頭がダメな気がする。
特に何の意味もないというか、意味を見出すことのできない居心地の悪さからくる静寂を破ったのは意外にも罵る以外の言動を一切していなかった女性だった。
「とりあえず数億年ぶりのお客様です。我々も邪で醜悪なという前置詞がつくものの神の端くれ、人間の一人や二人、五人や六人くらいもてなせなければバカにされてしまいます。」
そういうと一瞬で玉座しかなかったこの城に豪華絢爛な鋭角のみで形成された食堂が造られ、気がつけば山田をはじめとする勇者と謎の幼女が此処にいた。幸いもてなすと言ったのに嘘はなく、彼らも相当に気を遣って彼らにも少々の違和感は与えるが十分に普通の獣人に見えるように力や雰囲気を抑えている。
「折角です。此の都市に来た人間と・・・あら?誰でしょう?」
メイド服を来た女性の冥土に送ってくれそうな鋭い眼光を浴びた幼女は神凪の後ろに隠れてしまう。しかし俺も彼女から感じられる力について色々と疑問があるが、一瞬でそのことについての興味を失ったのか少し思案してから「まあいいでしょう」と呟き解けるように転移して行った。
とりあえず、出された料理に妙なものがなかったのは奇跡的だと思ったよ。




