みんなお待たせ、サァ、SANチェックを始めよう。2
小石のカケラや彼ら猟犬の牙、あらゆる鋭角からあらゆるタイミングで凡ゆる状況で襲いかかってくる。しかし、常に急所か手足を狙ってくるだけなので左腕を襲ったやつはタヌキチに喰われ、足を狙ったやつは超高速かつ攻防一体の月の魔力粒子に巻き込まれ細切れに、右腕込みで胴体を狙ってきたやつは純粋な剣技か魔法によって粉砕される。まあ、何が言いたいかといえば、だ。
「暗殺者が対策された時の呆気なさってやつかな。」
「あはは!!!」
目の前では雷と同じような速度で動く山田が逃げ回る猟犬を斬り殺すという動物愛護団体案件な場面が広がっているが残念なことにアレは不滅、存在として消滅することのない上位存在だ。肉体は殺せるが総量は変わらない、概念的なナニカなのだ。
というか一朝一夕には彼女の太刀筋、所謂剣術的な戦略を持った対人専用の剣技は矯正できない筈なのだが一応神聖王国を潰してから此処まできただけあって対魔物の剣技もそれなりに上手い、しかしそれ以上に蹴りや殴打、拙いながらも身体強化と魔法を併用した美しくない戦い方というのが上手く使えている。
「才能……か。」
目の前をかける紫電を眺めながらヒミツはそう呟き自身の凡庸さを感じていた。
さて、俺たちが今いる場所、そして倒している敵のようなモノはこのティンダロスという都市の付属品的なものだ。ティンダロスとは色々省くと知性のある飢えたナニカである。尖った時間だとか曲がった時間だとか色々と積もる話はあるだろうが、今現実に脅威となっているのは鋭角を駆け巡るその特殊にして強力な転移と上位存在であるがゆえの不滅性、そして・・・
「来たか。」
「う・・・」
山田の動きが止まる。それはそうだろう。今目の前で人間の死体が変形し、蝕まれナニカ同じ形の別のモノへと変貌しようとしているのだから。
コレはティンダロスの血を浴びかつ生きていた生き物へ起こる一種の進化のようなモノであり、そしてそのモノへの冒涜である。その姿は凡ゆる角度で構成されその身に曲線は一切ない、また常時次元がズレているので攻撃を当て致命傷足らしめるのも難しい怪物、今回は死体が変形したリビングデッドの強化版みたいなモノなので動きは緩慢だが、生物がああなって仕舞えばその凶悪さは猟犬に勝るとも劣らない、転移しないものの、常に次元が揺らめいているため殺しにくい上にこっちへの攻撃は簡単に通るので簡単に殺されてしまう。
そしてこの醜悪な怪物の最も嫌なところは人型を保とうとするだけであって急所は別に関係ないというところだ。とりあえず吹き飛ばすか細切れにでもしておくかしかない、面倒極まりないのだ。
「数が多い、それだけ中心に近づいてるってことだな。」
「それはいいんですが・・・コレは死ねます、ね。」
ヒミツは魔力粒子で山田は雷の生み出す超高速と熱でティンダロスの粘液的な体液を蒸発させたりしているためどうということはないが・・・山田は魔力が切れればただの人間、ヒミツは魔力が切れることはないが過剰に供給されているこの状況で制御が外れれば内側から吹き飛ぶ可能性もある。じかんはかけられない。
「まぁ、いい、押し通る。後ろにつけしにたくないならな。」
そう言うが速いか、それとも山田が其の身の毛もよだつ魔力の奔流を感じて避けるのが速いか、ヒミツの左腕たるタヌキチの魔法陣が高速連続展開され極大の氷系統魔法が発動される。
あまりの寒さに空間、時間ごと全てを氷漬けにし今回は直線状にはなったためその線状の全てが完璧に静止しているが、もしこれを地上で結界などの対策なしに撃てば大惨事となるのは間違いないだろう。
実際過去の戦争でこの魔法が大規模に使われた結果未だ全てが当時のまま静止した空間的にも時間的にも閉鎖された島ができた程だ。
「『全凍結』、物理的な攻撃力は皆無だがその凶悪さは他の極大魔法とは一線を画している。なんせ当たれば死ぬことも生きることもなく永遠と停止させられるんだからな。」
「・・・すごい。」
次元的にズレて異様が、死ななかろうが、この静止世界の中では身じろぎも取れず考えることもできずただただそこにあるだけの彫像となる。対不滅性、対不死性最強の大魔法だ。
「行くぞ、猟犬もまとめて凍らせたが親玉がいる限りこの都市は空に在り続ける。サクッとやってしまおう。」
「・・・そうですね。」
ヒミツは腹癒せにソニックブームを出しながら走ることで彫像を粉砕しながら中心部、凡ゆる物が鋭角で構成された城とは言えないナニカへと更に近づくのであった。
「コレは…」
「助…け…て。」
その頃成り上がり系チート勇者神凪は驚くべき人物に出会っていた。それは鋭角と人の生首だった角ばったモノで彩られた儀式的な祭壇の上に磔にされ、手足や心臓があるであろう胸に深々と角ばったナニカが突き刺さった幼女、しかし重要なのは彼女が人型をしていると言うこと、そして日本人的な顔をしていると言うことなのより彼が驚いているのはこんな状態であっても分かるほどの強烈な魔力を秘めている彼女が所謂ダンジョンマスターであると言うことだった。
「助け…て……」
「・・・・」
彼は手製の超劣化版エリクサーを服の内ポケットから出し、その奇跡の産物の構成を完璧に記憶しながら彼女の正体と何故このような状態なのかを考えつつ、とりあえず杭を抜き布を被せながら修復を開始するのだった。




