影の国と難儀な男2
「グゥ、申し訳なかった。」
「何で上から目線なんですか!ぶっ飛ばしますよスカアハ様!」
「わーい!おーいシー!」
「カオスだ。」
まごうことなき混沌だ。と言うか頭痛くなってきた。
取り敢えず現状整理だ。心を落ち着けよう。
ここは影の国の女王たるスカアハの持つ住処、異界の中にあって最も異質な豪奢絢爛な城だ。本人的にはそこらへんで戦いに次ぐ戦いを繰り広げられる野宿が好きらしいが、俺の様に少なくない人がこの影の国という異界を訪れるため体裁と彼女の娘たる『ウアタハ』の管理するお客用の寝床となっている。らしい、
「うぅ、辞めてくれウアタハ、そんなに胸を叩かないでくれ。」
「・・・うふふふふ、こんな!駄肉ばかり!ガアアアアア!!」
ウアタハが壊れた。
彼女は母親にとてもよく似ているが、貧乳だ。目も顔立ちも髪の色もほぼ同じだが。彼女はショートカットで貧乳、スカアハはロングで巨乳だ。
「ああ゛?」
ウアタハがスカアハを快楽の海に叩きおとして少々痙攣する彼女をすておき、いつの間にか俺の方をジッと、野生の獣的な眼光で見ている。
「ウワー、ウアタハサンチョーカワイイ!」
「・・・ふんっ、まあいいでしょう。私は少し母とOHANASHIしてきますので、どうぞごゆっくり。」
「うわ〜!イノシシの丸焼きだー!」
なんていうか美人の目から光が消えるっていうのがどれほど怖いかはアーサーちゃんやらモードレッド王でよく知っていたはずだが、油断していた。というかウアタハの方からかなり高い神性を感じたので多分神様としての役割は彼女が受け持っているのだろう。多分。
ちなみに、俺がなぜ今、ここで、歓待を受けているのかといえば、スカアハが心臓をぶち抜いたという事への謝罪と、強い者である事を証明したが故らしい、というかなんか軽い感じでスカアハとウアタハから加護を貰ったのだが、そのせいか、月の女神様が拗ねている。効果は影に関する能力強化だ。
一応あの戦いに巻き込まれたものの生き残っている事を評価されというか、ウアタハがアリスを痛く気に入ったからか、アリスにも加護・・・ではなく魔槍ゲイ・ボルグの改造版『必中必死の短剣』ふた振りと影の女神の寵愛を貰ったそうだ。貰った直後のアリスの頰が上気し潤んだ様な目になっていたのは俺の気のせいだと思う。
「あれー?魅了効かないよ?ウアタハ様〜」
「精神防御が硬すぎるわね…大丈夫よ、薬を盛ればぶち抜けるわ。」
とかそんな会話が聞こえた気がするのも気のせいだと思いたい!
あと短剣を使うときだけ魔力操作が急激に向上し、魔力操作のよって出来た見えない腕によって短剣を四つ同時に使うとかって言う天才的な戦闘センスを見せつけられ少しへこんだりもしたが、取り敢えず料理が上手いからいいや。
「すまない、今戻った。」
酷くボロボロのスカアハを引き摺ってウアタハが登場、スカアハが気絶しているが構う事なくいすにすわらせ、自分も席に着く。
「取り敢えずなぜ君らがここに呼ばれたかを説明させてもらう。」
「むーむー!」
「・・・口に物を入れて喋るな。」
ウアタハが気絶しているスカアハの代わりに事情説明をしてくれるらしいが、多分ロクなことではないだろう。何たって仮にも一つの異界を管理する身である彼女があらゆる能力を隠蔽し、槍使いであるのを隠して魔法使いとして人間の中に紛れ込んでいたのだ。彼女の暇つぶしか、それとも最近多い弟子とか師匠とかの話か・・・また邪神がらみか。
「そう、邪神がらみだよ、君の思っている通りに、ね。」
ウアサハは経緯を話し始めた。
まず、俺が邪神を倒した頃、時を同じくして北欧神話系の神の一部が不穏な動きを始めた。同じく北欧神話系ケルト神話の影の女神スカジの化身とされる彼女らもその動きを察知し、スカアハは外に何が起きているのか調査ついでに才ある者を拾って気休め程度に育成、ウアサハは影の国と言う異界の特性を活かし凡ゆる影と一方的な繋がりを作り北欧神話系主にロキを中心とした碌でもない神々の監視をしていた。
「と言うかそもそものところ、昨今の勇者召喚の連続や外界の神であり狂気や宇宙的な叡智によってしか干渉してこなかった旧主の動きの活性化が妙だったのだ。それに極めつけが貴方、異世界の転生者ヒミツや今となっては珍しくもない転生者や転移者と言う存在、これらが始まったのは約300年前から、そこから導かれた結論は一つ。」
「モキュモキュ…」
ウアサハは未だ起きない自分が気絶させた母親を見ながら呆れたように言う。
「世界と世界の境界や、旧主の異界と神々の異界の境界が曖昧になって来ているのだ。」
「へぇ。」
「うわ〜!何だろうコレ〜!」
そしてそれ以上にどうでも良さそうなヒミツ達、理由は単純だ。
「で、俺は絶対仕事受けないからな?振りじゃねえぞ?と言うか適性を見る前に心臓ぶち抜くような所に信用とかないからな?」
「グッ!いや、ほら加護のぶんくらいは「返そうか?」あ、すいません加護や寵愛をあげる人がいなくて異界の維持もできなくなるんでやめてくださいお願いします。」
何と言うか、威厳は吹き飛んでむしろ可哀想な感じすらある。
「まぁ、良いではないか、自分にかかる火の粉は払うだろう?」
いつの間にか起きていたスカアハが涙目状態のウアタハの交渉を止める。
「ですが!」
「まあ、元はと言えば私が心臓を貫いたことが原因であるのは確かに悪いと思っているが、既に邪神や終末の神に目をつけられているんだ。そう簡単に世界の流れからは逃れられないぞ?」
さりげなく不吉なことを言うスカアハに絶句する俺、そしてそもそもの原因を作ったのを思い出し彼女の頭をグリグリと締めるウアタハであった。
(終末の神?シヴァの事か?いやだが、目をつけられた、だと?)
そして彼の周囲はやはり混沌に落ちていく。




