迷宮探索最前線3
うーむ、
「うーむ?」
「どうしたのー?」
幼い声で心配をされたが、なんか逆に焦った。というか全身黒ずくめの男が幼女を連れ回してるって世間的にアウトじゃないかと今更思い至りちょっとばかし心が乱れた。
いや、本題はそこではない、ここに来て既に二時間、迷宮突入から八時間、倒した水竜は三桁を超え素材は少し戻って来た感じだ。
素材の回収効率はやっぱり迷宮よりも外の方がいいのだが、そこではない、二時間も、それも餌まで撒いて集めているというのにたった三桁しか倒せていないのだ。
「敵が少ない……と思わないか?」
おそらく俺とは違うベクトルの気配察知を持っている幼女に意見を求める。
「うーんと、下の方からザワザワする感じがする?かな?」
「下っていうと・・・迷路があるところか・・・なんかあったのかな?」
「さぁねー?」
しかして呑気な彼らを置いて状況は既に始まっていた。超巨大な魔力の奔流がこの海のように巨大な湖に満ち周囲の魔物を魔力に変換して急激に魔物の体を成していく。
「うぉお?」
「揺れてるー!」
気がつけばフィールドのほとんどが魔力に返還されまるで製作中のゲームフィールドのような白い平らな世界がむき出しになっていた。
「うわ!?なんじゃこりゃ!」
「面白そうねー…あら?ヒミツ?奇遇ねこんなところで。」
おそらく迷路の攻略をしていたのであろうデインとアシェイラが水に濡れた状態で白い地平に放り出されており、デインはなぜかボロボロで白い鎧やその体のほとんどに海藻のようなものや水草がくっ付いており、どことなく敗残兵感が出ている。
そしてアシェイラはいつも通りの黒いような紫のような黒魔女衣装のアシェイラが箒に乗って話しかけてくる。
「や、攻略はうまく言ったみたいだな。」
「それはいいのだけれど、ちょっと今回は駄目かもねぇ、アレを見てよぉ。」
アシェイラが指差した先にいるのは山、正確には山の様な大きさの瓦礫と水で構成された巨人だ。
まだ完成してはいない様だが、見た所何かしらの魔法か魔力の結晶が核となっているゴーレム系らしい、普通の石や鉱物で構成されたゴーレムと違い恐らく外皮を覆う瓦礫の中は液体である水なので核が高速で移動している場合が多い、デインとアシェイラの構成的に核を一撃で壊すにはデインが瓦礫をこじ開け、かつアシェイラの極大レベルの範囲魔法を撃って見て勝機があるかどうか、と言ったところだろう。
しかも此処は魔道具禁止の階層、優秀な魔法使いがいれば水中呼吸などはなんとかなるが・・・
「鎧やら装飾品やらの魔法効果は消失、威力は通常よりも低いからかなりの賭けかな。」
幸いな事に此処を探索していた冒険者は全員此処に集められたらしい、頭数は結構いる。だが・・・
「うわぁぁ!なんだありゃあ!」
「もう駄目だ・・・おしまいだ〜!」
「勝てるわけがないYO!」
あんまり頼りになりそうなのはいない様だ、魔道具の使用が出来ないというのに転移魔法の高級スクロールを使用しようとしたり、はるか高い場所にある三十九層へ戻る扉を目指して後ろ向きに前進したりする者もいる。
「アシェイラさん、デイン、魔力は?」
「あはは、ちょっとピンチかなぁ。」
「俺もダァ。」
恐らく自身に掛ける水中呼吸などの魔法や、慣れないであろう水中戦闘による消耗で体力も魔力も限界が近いのだろう。
とりあえず相手が完成する前にどうこうは出来ない様に透明な魔力障壁が出来ているのでデインとアシェイラ二人に魔力を分けて、此処では唯の透明な刀身を持つだけのバスタードソードになっている透華を背中に背負い、無手になる。
「さて、アリスちゃん、こういう場合の対処法は?」
「えーっとね、逃走は既に出来ないからできるだけ生き残れる様に立ち回る。かな?ああ〜でも、私の魔法剣は魔道具じゃないから、運が良ければ一撃で魔力をほつれさせられるかも?」
そう、実は彼女の短剣は正確には魔道具には及ばない簡単な杖の様なものであり、彼女が魔力を纏わせ付与魔法を発動しない限りは頑丈で少々大き目の護符の様な短剣だ。
それ故魔法禁止の場所でも戦えるし、魔道具使用不可の階層でもその魔法効果は効力を発揮するのだ。
そしてその付与効果は単純にして強力、『魔力破壊』だ。俺の場合は一週間、自身に効力を発揮する付与魔法や転移魔法が使えないだけだが、完璧な魔法使い型や体が魔力で構成されている場合一撃でその命を奪えるほどの力を持つ。
「ま、けどあれは迷宮内では死なない限りきちんとした質量と物理的影響を持つ化けもんだ。残念ながらその短剣は厳しいだろう。」
「うーん、残念!」
アリスと俺が喋っている間デインとアシェイラが魔力を直接投げつけられちょっと悶えており、なんだかくねくねと気持ち悪い動きをしているが、それを尻目に俺は聖剣が使用できるかどうかを確認していた。
《あはは〜!魔道具を封じるだけの階層で神の授けた武器たる聖剣やら神器やらが使用不可能になるわけないじゃん!面白いなー!》
「・・・」
(相変わらずむかつくなぁ、いいじゃないか、心配性なんだぜ?俺は。)
「どうしたのー?」
「いや、切り札が使えるか確認しただけだ。」
周りを見れば立ち向かおうと言う優秀なのは一握りで、ほとんどが心折れて精神がフライアウェイしてしまっている。そんなのは邪魔なだけなので左腕を使って魔力を増幅させ巨大な魔法陣を形成、転移させる。
「なっ!?」
「うーむ、素敵ぃ。」
マントを翻しながら格好つけてみた。




