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放浪系騎士の様なナニカの冒険記的なサムシング  作者: 名状し難い魔王
天災剣士と化け物と暗殺幼女と迷宮と…
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迷宮探索最前線2


蛇というのは少々大きすぎるその体を使った豪快な質量攻撃は水面を揺らしその攻撃をもって波を起こす。大きさはそのまま力になるということの証明の様な魔物、それが水棲の魔物である。

とりあえず全部がデカイのだ。でかいタコやら、でかいイカやら、きわめつけは島のような大きさの亀、とりあえず陸にいるのとはまた別次元のスケールを持っている。


「ま、陸にあげちゃえば手玉なんだけどね。」


「Gyaoooooooooo!?」


全身にヒミツの魔力がまとわりつき、一つの魔法を形成する。


水上歩行(ウンディーネブレス)


それにより水竜の体は水に弾かれ上へ弾きあげられる。ブルンブルンと体の表面の水すら弾き飛ばし水棲に特化した水竜の表面から瞬く間に水分が奪われ動きが急速に鈍くなる。


「ホイッとな。」


そして動きが鈍り水に潜れない水棲生物などまな板の上の鯉である。刀身がないように見える柄だけの剣、透華を振り下ろし首と胴体を切り離す。その瞬間にその巨大な体は魔力の粒子と化して霧散し、ヒミツは後に残った竜の鱗や骨などのドロップを水面ゆえ、安定しない平面に陰の倉庫の入り口を展開し押し込む。


「次かな。」


彼が投下した肉に寄って来た魔物はまだまだ残っている。ヒミツは何時ものロングソードと少し御無沙汰だった黒剣を取り出しニヤリとして見せた。



ドバーン!バシャーン!激しい水の音に呆れたような笑みを浮かべつつも自身は得物を納刀し高みの見物に徹することにしているヒミツはアリスの戦いを見ていた。


「まだやってんのかよ、すげえな。」


だがまあ、これは戦いというより、強者による戯れだ。


「あはははは!」


笑いを浮かべるアリスは無傷、無論まともに当たれば即死故それは当たり前だ。問題は彼女の表情に余裕こそあれ慢心のカケラもなく、ただ殺しきる絶好のチャンスをうかがっているという事、彼女に、山田になかった光がそこにはあった。


「guoooooo!?」


残念ながら加速や強化などの単純な魔法しか使えない一般人レベルの魔法使用者であるアリスにヒミツのような豪快な戦い方や、無効化の方法などなく、魔力操作も今の所才能はあれど練習が足りない、それ故彼女の狙いは出血による体力の低下、ヒミツの魔法で水上でも陸と同じように動ける彼女は暗殺技能として身につけた歩法による挑発と回避を繰り返し相手が逃げない最低ラインの攻撃と挑発をしながら持久戦を挑んでいた。


見れば水竜の体の表面には無数の傷があり、彼女の魔法剣による攻撃はきちんと彼等の主要な血管に亀裂を生じさせ、筋肉を分断し、その硬い甲殻や鱗を粉砕している。


「guoooooo!!!」


既に致命レベルの血を失いながらも興奮状態の肉体は痛みや生命的な危機を忘れさせ、執拗に彼女を追っている。しかしその動きは既に緩慢で、どう見ても弱っている。

動きも単調、大振り、そうなってくればもう終わりである。


「えい!」


「Ga!?」


何度も切りつけられいつの間にか削れた心臓を守るための堅牢な筋肉と鱗は彼に知らない間に既に剥がれて、するりと攻撃の合間を抜けた小さな暗殺者の攻撃を防ぐ事なく。急所は簡単に粉砕された。

眼を見張るはその身体能力、おそらく強化込みだろうが一歩で10メートルはゆうに跳んだ。

そして、その突進力と短剣の切れ味は間違いなく彼女の敵を粉砕した。


「はぁー、フゥ〜。」


そして周囲の警戒をしつつ素材を回収、完璧な流れだ。

彼女の体についた魔物の体液が魔力となって霧散する頃にはヒミツの獲物たちは既に跡形もなくまた、新しい魔物として再構成され新しくどこかの階層の魔物となっているだろう。


「お疲れ。」


「フにゃー、はぁ。雇い主さんはこんな強いのに私たちを雇うつもりなの?」


彼女は悠々とこちらを観察していた彼から冷えた飲み物と清潔な布を受け取り、健康的な故に滝のように出る汗を拭いながらそんな疑問を投げかける。

確かに彼は彼彼女に直接的な戦闘力を求めてるわけではない、


「そうだね、一つに単純な人手が欲しいっていうのがある。」


先ずは数、数は暴力であり絶対的な力だ。さすがのヒミツだって大量の超高位魔物や低位であってもそれこそ無限に等しい数がいれば体力も尽きるし魔力も一応は有限な彼にとってはたまったものではない、


「それに、隠密の技術や人の中にいて情報を集めてくる力っていうのも欲しいし、何より君らを雇う最大の理由は常識を忘れないためだよ。」


「ほえ?」


しかし、それ以上に彼が恐れているのは彼が名実ともに化け物、常識外の何かになってしまう事だ。いや、正確には違うのだが、それに近いことを恐れている。それ故に近くに普通の人間を置いておきたいのだ。例えば賢者であり魔法使いとしては規格外なマーリン、例えば神をその身に降ろし膨大な魔力とその権能をふりかざす常識はずれの巫女佐藤小夜の様な、そんな自身とある意味同レベルの人物が近くにいるというのが当たり前になりすぎてそれに慣れてしまうというのが怖いのだ。


「つまり、足枷がいるの?」


「そういう意味じゃない、ただ単純に自分の弱さってやつを直視できるようになりたいだけさ。」


「ふーん、よくわかんないや!」


その気になれば、という言葉は前世では言い訳だったがこの世界で彼は、本当に、現実的な話『その気になれば』世界征服だってできてしまうかもしれないのだ。聖剣を振りかざし、天体の魔力をその身に宿し、その触覚として存在しようと思えばそうできてしまう。それが何となく恐ろしいような気がして、それを止められる『人間』が、化け物を殺すことに躊躇いのない『人間』がいて欲しいのだ。


(人外はみんな人外でよくわかんない価値観持ってるし、それになんか一人がなんかしようとしても止めなさそうだしね、・・・というか大雑把すぎるんだよね。マジで。)


というか普通にと言ってはなんだが、人外は人知を超えているとかそれ以前に人間として何かが外れているのだ。ヒミツはそういうところを常に疑っているし、彼自身が彼自身の価値観を異常であると断じているのはそこにあるのだ。


「ま、いいじゃん、給金は弾むし、飯もターンと食わしてやっからさ!」


「わーい!楽しみー!」


ちょっとばかし単純すぎる雇う予定の少女に苦笑いしつつ、彼はこの階層に来てからずっと感じている違和感、胸騒ぎのようなものに気を配りながらまた、足りない素材を回収しに水面を歩くのだった。

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