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ラスボス系俺氏3


義手全体から赤い粒子を放ち、手の部分からは高エネルギー体である魔力から形成されたブレード状力場が展開され、右目からは白い稲妻じみたものがほとばしっている義手義眼無表情系サイボーグ君もとい神凪君、そして狐面と黒い軍服に軍刀白い手袋の糸目君もとい狸川孤空君、いやぁ、なかなかに厨二心というか童心擽られる姿だ。


「山田ちゃんと筋肉君はなんかないの?」


俺は手慰みに発動した極大魔法(出力一割以下)を神凪君と狸川君に射出しながら土煙の中仰向けになっている二人に問いかける。が、殺気。


「危ないぜ?」


俺は左手二本指でロングソードの柄を離さない様に器用に刀をつまみそこを起点とした拘束魔法で忍者君を縛り上げた。


「グッ!」


「マジか。」


「マジかいな!?」


俺はそのまま透華を振るい服部と呼ばれた忍者君を刺し殺す。・・・ま、当然場外転移されるだけなんだけどね。

しかしその間に山田ちゃんが起き上がってきた。


「あ・・・はぁ、あはぁ。」


既に集中力は極限を突破し、全身の筋肉はそのパフォーマンスを十二分に発揮しきり、魔剣の解放や身体強化をするための魔力は一滴も残っていない、しかし、彼女は喘ぎ声の様な艶かしい吐息を吐きながら鞘を支えにたち、刀を構える。

刀を構える右手、右腕は震え、足も膝も既に体重を支える力を出すことすらおぼつかない、しかして、その顔は闘争の愉悦と圧倒的格上との極上に近い戦いに喜色をたたえていた。


「ぐ・・・ぬぅ!」


筋肉君も立ち上がる。身体的な損傷はないが精神的のも肉体的にも損耗しているし磨耗している。彼の姿は最初の1.5倍程に膨れており、全身の筋肉があますところなくパンプアップしているのだった。

空気との温度差に湯気を立てる彼の体温はおそらく既に人を超えている。しかし彼は笑顔だった。なぜ、と聞かれてもその答えを明確に持っていない彼は、やはり笑顔で返すだけだがその笑顔が何よりも頼もしく見える。


その二人を見つつ自分たちも援護の余裕などない狸川と神凪、既に磨耗しきった二人がよろよろと戦闘態勢に入るのを見て接近を試みるが魔法を一部、しかもかなり手加減して解放した彼の弾幕は全く攻略の糸口を見いだせず、ヒミツが二人に近づくたびに二人の焦燥は煽られる。



「いい、闘志だ。君らはきっと不屈の精神って奴を備えているんだろう。その獲得過程や、肉体的余裕の差、様々違うものはあるだろうが結果として二人が今立っているのは二人がやってきた鍛錬や修行、戦いの結果に他ならない、素晴らしいよ。」


ヒミツは高校生である勇者達の精神がこの力が支配する異世界という場所に置いてどう変容するのか、それがとても気掛かりだった。

自分の様にひねくれ、壊れている者もいるだろうが、そうでないものやおおよそこの世界というものに存在する一般的で善良な市民である筈の彼らの大部分が手に入れた力に振り回されてはいないか、天狗になってはいないか、腐っていないかが気掛かりだった。


(しかし、現実として彼らは冷静かつ適切に集団としてまとまり、戦闘経験が豊富な一部の人を除けばまるで元の世界の倫理観のまま生きていけている。)


ある意味異常だし、健常でないと言えるかもしれないが、力を手に入れた程度で壊れるほどヤワな人間ではなかった様で安心した。彼がこの戦闘訓練で一番入念に確認したのは一番最初に出した心折れた彼ら、彼らは正しく彼を評価し、正しく彼を化け物とみなした。なんとか足腰に力を入れ、自身の持つ力の限り生存を図ろうとした。


(そういう意味ではここに残ったのは落第生かもしれないな。)


少し可笑しくて笑ってしまったが、目の前にいる彼らにはフルフェイスの兜をかぶった不審人物しか写っていない筈だ。


(きっと彼らは彼らの持つ独自の何かを一番に行動し、そして何より弱きを守るのを良しとしている。)


それは危ういし、若いし、青臭いが・・・得てしてそれは英雄性の表れであったり、異常性の表れであったり、必要に駆られてのことであったり、理想を求めてのことであったり、彼ら個々人の持ちうる何かによるものだ。それを才能というか個性というか、様々意見はあるだろうが俺はそんな彼らを見て少し安心した。


「あは!光栄・・・ですね?」


「そうとも、我が筋肉は最強故にな!」


返答するくらいの余裕があるならきっとそれは強がりで、意地なんだろう。


「さぁて、くるな?」


俺は二人の戦士に敬意を払い、一瞬だけ本気で、認識不可能だったかもしれないが剣と拳を振り下ろした。



「っ!」


「・・・わいらが最後か〜」


消え去る魔力の反応、そして一瞬だがめまいがする様な威圧感を放った異様な魔力、


「さあて、変身した。というかちょっと本気を出した君たちには敬意を評して・・・ちょっと本気を出してみよう。」


魔王だ。御伽噺の魔王がいる。

黒いボロマントをはためかせ禍々しさすら覚える強烈な魔力を見に纏い、異形とかした左腕には黒い粘性の液体に黄色い球が夥しい数浮き上がり、その手には柄だけの魔剣と白い魔剣が握られた。


「一瞬で終わらせよう。」


何かが通り抜けたと思うといつの間にか皆がいた。

いや、それは正確ではない。正確には・・・


「やられた・・・か。」


圧倒的、とはこのことである。きっとかの国の馬鹿どももこんな気持ちだったのだろう。怪物、化け物、


「・・・上には、上がいるんだな。」


「そうやねぇ。」


俺たちの帰るまでの目標が決まった瞬間だった。

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