俺、旅に出ます。
ハハッ!他の小説を書いてたら別のが書きたくなる奇病にかかったよ!
「と言うわけで今月の給与だ!全部酒場に突っ込んだりするんじゃないぞ!」
フルフェイス型の兜を脱ぎ少々傷が目立つもののそれがまたイケメンさを上げている感じの隊長が兜を木製テーブルに置くとそう叫ぶ。
「「「「イエーイ!!」」」」
それ合わせて雄叫びをあげるむさ苦しい男達、勿論俺もである。だって給料いいし、それにまたこの給料には俺だけの特別な意味があった。
「はははは!元気がいいなお前ら!いいぞ!今から配るので受け取りに来い!」
隊長は良い人だ。町の人からも好かれ時たま世帯持ちであるのにも関わらず可愛い女の子に言い寄られ奥さんに追いかけ回されている。・・・べ、別に羨ましくなんて無いんだからね!
「じゃあ俺いちばーん!」
「ああ!ずりぃぞ!」
こう言う時は何処か可笑しな奴らだが仕事はできるし性格もいいおまけに何故かどいつもこいつもイケメンだ。・・・クッ!妬ましい!なんだよ!俺も顔悪くはねえんだぞ!だがこいつらに混じってるとさっぱりもてる気がしねぇぇぇぇぇ!
「最後だ。来い・・・本当なのか?ここやめるって言うのは。」
「はい。」
どいつもこいつも馬鹿騒ぎしているおかげか最後になった俺と隊長の恐らくこれが最後であろうやり取りは誰にも気がつかれる事なく終わり、少し食い気味に、決心が鈍らないように答えた俺の目を見た隊長は少し残念そうにしながら給料を俺に手渡した。
突然だが俺は『転生』と言う奴を経験した所謂転生者だ。実際別に大したものでも無い、隣国ではまた新たな転移者を保護したと聞くし、東の方ではまた転生者と思われる人物が国を起こしたと言う話もある。確かに珍しくはあるのだろうが先人の知恵によってそれなりに発展したこの世界において俺のような普通の奴の知識や経験はほとんど意味を成さない・・・少しだけ料理を売ったりした事もあったがまあそれなりに好評で今でも定期的な収入がある。
まあ、それはいいんだ特に問題じゃ無い、実際戦争孤児として親にあった記憶などないままにこの辺境都市で教会に引き取ってもらい冒険者から安定した衛兵の仕事に移りそれなりに暮らして来れた。
俺を引き取ってくれた教会への援助もひとしきり終わり、このままこの場所に居つくのも良いとは思う。
別にその選択をしてもしなくても誰も困らないしそもそも俺がいなくなってもさしたる影響は無いだろう。
だが、それでは前世の焼き増しである。必死に安定を求めはや15歳、転生した時この世界で俺は一歳くらいの幼児だったのを考えればよくここまで来れたと思うしマジで転生者とかじゃなかったら詰んでいた。特に交渉ごととか小手先の知識とかな!
前世では40の大台に乗りそれでも相変わらずゲームとかラノベとかアニメ好きなおっさんだったがちょっと働きづめだったのが祟ったのか何なのかは不明だが死に、この奇跡も魔法もある異世界に来たわけだ。
「冒険・・・したいじゃん?」
餞別にと隊長はいつもより少し多い給料と決して安くはなかったであろう鋭利な短剣をくれた。その短剣を眺めながら寮の部屋を見る。床は綺麗に磨かれ荷物はすっかり処分し纏め終わった。ふと窓から見える二つの月を眺めると自然とニヤリとしていた。
「よし、行くか。」
冒険者登録を復帰し様々な手続きを終え携行品を買い整え一度今の時間もぬけの殻状態の寮に帰ると既に空の中天近くに太陽が来ている。
急がなければ乗り合い馬車に遅れるだろうと思った俺は最早着て居ないと違和感すら感じる少し薄汚れた鎧を身につけて行く、様々な箇所にあった紋章を削り取り軽量化の為様々な改造をしフルフェイス兜にフードをかぶるという怪しさ全開の浪漫装備に少しだけ愉快な気持ちになるが直ぐに治める。
剣を二本短剣を三本、太いレイピアの様な物を一本下げ予定より大きくなった鞄を担ぎ同僚や隊長に挨拶する様な気持ちで寮に向かって礼をする。重装備だろうと変わらない脚力に自分でも驚きつつ乗り合い馬車の待合所に到着、間も無く商隊と一緒に今回俺が乗る乗り合い馬車が到着割符を見せ乗車する。
「よし、よし、よし!オールオッケー。」
メモがわりの少し少ない羊皮紙のやる事リストを再確認し、教会への挨拶や買い物、登録更新など終わったことを再確認し完璧なことを確認すると安堵とともに一抹の寂しさが湧いて着たが馬車の隙間から見えた遠くなって行く町と流れて行く風景を見るとやはり嬉しくなった。
俺は、冒険をすることにした。
がんばるぞい!