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実話集  作者: かんから
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プログラマー

 その人は聡明期からプログラマーだったらしい。元々は違う職業だったが、ひょんとしたことで仕事を変えた。昔は素手で長い配線をつないだり外したり、それはそれで面白かったそうだ。周りからは力を認められ、果ては大学教授までなる。幸せな家庭も築き、子供らも名をあげた。



 ・・・ある日、突然。彼は失踪したくなった。すべてを投げ捨てたくなった。いろいろな講演でためていた別預金へそくりをあてに、あちこちへと旅に出た。存分に好きなことをしてやろうと。


 ブログにも進出し、興味ある芸能人にコメントを送りまくる。時には大きな花も送る。オークションで金に物を言わせ、百万以上の物を余裕で買ってしまう。そのうちに業界の関係者が”何者だ”と騒ぎ始めた。とある女優は”もしよろしければ会いませんか”と送ってくる。そういうときは、アカウントごと変えることもある。そしてまた、同じことを始める。


 結果として何がしたいんやら、はた目からみたらまったくもって無意味である。


 ・・・一年中浮浪して、盆や正月に家へ帰る。奥さんからは激しい怒りを受ける。旅の時などは近くの人に”仲が悪い、嫌い”などと愚痴る。ただいくら年老いても、愛しているのは一目瞭然であった。なぜなら彼のブログのアイコンは、若き日の妻である。 


 

 私は偶然にも、出先で彼と出会う。65ぐらいだとは訊いたが、80ぐらいに老けて見えた。さすがに長い旅の疲れがたまっている。その指先は歪に曲がり、苦労がうかがえた。



 ねえ、何のために彷徨うの。きっと本人も、わかっちゃあいない。本能のまま動くのみ。


 哀しくも思え、羨ましくも感じた。

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