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実話集  作者: かんから
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占い師

 その人は占い師である。だが、事実上の開店休業状態であった。10年以上前にネットというものを覚え、ホームページを作ってみたはいいものの、いまはまったく役目をはたしていない。知名度はほぼ0。


 詳しいことはしらないが、昔は地域ごとに必ず一人配置させるような占いの団体があったらしい。そこで最初、四柱推命をやっていた。一時はよく当たると評判になり、多くの人が彼の名を知る。ただ・・・ブームは過ぎ、まるっきり依頼のない日もあった。


 暇なので、本を読みふけった。兄が作家だった影響もあるのだろうか、兄弟そろって本の虫。そのうち兄は紫綬褒章まで頂き、弟は得た知識より新たな占いを成立させた。人は四柱推命で占ってくれというが、彼は拒んだ。その新たな占いでならいいと。


 並々ならぬ自信があった。どんな占いよりも優れているはずだ。姓名判断は流派や旧字体新字体によって全然違う。風水も元来は中国にとっての占いだ。東には海が広がるので青となり、南は暑いので赤となる。西は砂漠の色、北は蒙古の暗黒さと非道を示す。つまり周りの環境より作られたもの。日本にそのまま当てはめることはできない。


 

 ・・・でも、食ってはいけなかった。なので、農家をしている。農家が本業。占いは副業。それでも研究は怠らない。・・・ただ、数年前に足を悪くした。滅多にないが客人がくると、無理矢理足を引きずらせながら出迎える。体は畳に横たわる。私が帰る時などは、玄関へ這いつくばって来ようとした。動きはどうしてものろい。必死に動こうとする姿に、私は涙が出そうになる。


 「来なくてもいいですよ。そこで十分です。」


 制止すると、やっとで動くのをやめた。私は一礼して、その場を去る。改めて泣いた。



 生きずらさ、生きずらさ。占い師自身も苦労している。なんでこんな目に合わなければいけないのだ。ほかの人との違いはなんだ。なにをこのような運命にさせるのだ。



 私も研究を始めてみようかなと思う。だが別の仕事もあり、本腰をいれることのできない今日である。

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