表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
七つの大罪編
98/143

第98話 終戦とそして――

「アリス! どこへ行ってたんだ!?」


「すまぬ、ちょっと遊び歩いておった」


 手綱を引っ張り馬を連れて中央まで歩き戻ったアリスに、睡眠から目覚めたアルヴィスは心配していた様子で待ち人の名前を叫んだ。


 視線をアリスから馬に向け、そして乗せられている傷だらけの2人の存在に気付く。アルヴィスはアリスに近付きながら、馬の上に干される様に乗せられている顔を覗き込んだ。


「――!? このヘッドフォンはあの時の!? それとこいつは誰だ?」


 首にかけられた見覚えのある物で、アルヴィスは馬で運ばれてきた1人の正体に気付いた。けれどもう1人の顔は何度見ても解らなかった。


 アリスは首を捻って考え込んでいる主人に、連れてきた女戦士の正体を伝える。


「こやつは敵将の1人じゃ。たしか……エレナとか名乗っておったかのう」


「敵将って……【七つの大罪】メンバーってことじゃねえか!?」


 アリスの言葉に一瞬ポカンと止まったアルヴィス。だが単語の意味がわかった途端に驚き叫んだ。


 なぜなら、自身が先ほどまで死闘を繰り広げていた半獣と仲間で、なおかつ今回の敵の1人であるからだ。


「まあそう驚くでない主人さまよ。こやつは今さっき儂の物となったからのう。もう手出しはさせぬ」


「儂の物って…………はッ!? それって【七つの大罪】の1人を仲間にしたってことか!?」


「平たく言えばそうなるのう。じゃが、仲間などという対等なものではない。儂とお前さんのような、主人と下部のような関係じゃ。さらに付け加えるとのう主人さまよ。儂の下部ということは、儂の主人さまであるお前さんの下部でもあるのじゃ」


「な……ッ!? マジかよ……」


 アルヴィスは頭を抱えて頭を振った。


 ただでさえ厄介な2人を既にサーヴァントとして持つアルヴィスは、さらに爆弾を抱えることになったのだ。


「まあそう悩むでないわお前さんよ。戦力が増したと思えばよいじゃろ?」


「そんなポジティブなことじゃねェよ……」


「カッカッカッ」


 アリスは愉快そうにアルヴィスの様子を眺めていると、遠方で感じる魔力の変化に気が付いた。


「どうやらあちらもケリが着いたようじゃのう」


 雷丘がある北東の方角を見遣って呟くアリスに、アルヴィスもつられるように顔を向けた。


「ケリってローラン隊のことか?」


「そうじゃ。大きな魔力が1つ消えおった」


「!? どっちが勝ったんだ!?」


 アルヴィスは、自身が眠る間にローラン隊が出陣していったことをルナから聞いていた。なので、総大将が攻めたということは、その先に敵総大将がいるはずという考えが容易に浮かんでいた。


 今回の質問は、そのことから出た内容だ。


「――そんなこと、言わずともわかるじゃろう?」


「…………そうか、勝ったんだな」


「カカッ」


 アルヴィスは、ニヤリと笑うアリスの表情を勝報と受け取ると、視線を姿の見えないローランへと向けた。


「もうすぐ勝報と共に戻って来るじゃろ。儂らも帰り支度をするかのう」


「ああ、そうだな」


(間に合えばあやつの戦闘を見てみたかったのじゃが……)


 アリスは主人に提案をしつつも、遠方のローランが気になっているのか眺めたままだった。




 ――そして、終戦から5日が過ぎた。


 学院へと帰還していたローラン軍は、学院長であり国王でもあるエドワードに今回の報告を済ませていた。


 なんと戦の大きさから、学生の戦いでは異例の論功行賞が行われた――


 第一功に、敵総大将を自ら討ち取ったローランが選ばれた。武功の厚さから考えて当然の結果である。そして、【七つの大罪】という世界に広く知れ渡る悪名高きクランの、そのリーダーであるカイサル討伐の功績により、中将へと昇級を果たした。


 次いで準功に、2名が選ばれた。


 1人目は、【ストームライダー】のリーダーであるカイであった。カイも敵将であるマモンを討ち取った功から、金を与えられ、さらに【ストームライダー】のクランランクがAランクに昇級となった。


 そして2人目は、なんとアルヴィスであった。アルヴィスも敵将であるラビス――【七つの大罪】の副将であった――を一騎討ちの末に討ち取り、本陣への突撃を防いだ。アルヴィスは与えられた恩賞を断り、代わりに捕虜扱いで連れ帰った敵将エレナを自身のサーヴァントとして国に受け入れることを願った。


 ルナという異例であり前例があるので、エドワードは断ることが出来なかった。


 そして、同じ願いをもう1人の人物が申し出たことが決定打となった。


 左翼を指揮し、被害ゼロという驚愕的な戦績を残したクリストフに特別準功が授けられ、大佐への昇級と恩賞を与えられるはずであったが、「こいつを俺の配下にする」と言い、アルヴィス同様に恩賞を断ったのだ。


 こいつ、とは――怠惰の知将・ニコデモスであった。


 さすがにエドワードも驚きを隠せずにいたが、2人からも申請が出てしまうと断ることが出来なかったのだ。


 そうしてクリストフは、大佐への昇級とニコデモスをサーヴァントとして自身が保有するという隊に入れたのだ。


 ちなみに、中央の戦いで一際活躍の目立った【EGOIST】と【戦乙女】もクランランクが昇級した。ランクはそれぞれDランクとAランクへとなった。


 こうして、今回の【七つの大罪】との大戦は終結を迎えたのだ。


 ――ちなみに、今回の戦の発端はカイサルのお気に入りであるルナの脱退が原因である。それも、ルナの魅了チャームにより虜となってしまっていたカイサルの個人的感情が招いたわけである。


 ルナの能力が大戦の引き金になっていたわけだが、このことに気付いているものは1人もいない。そう、ルナ自身も気付いていないのだ。カイサルが魅了に掛かっていたことすらも。


 アルヴィスが拾った黒猫は、とんでもない拾い物だったのかもしれない。

この話でこの章の終わりとなります。

いかがだったでしょうか?

今回は万単位の戦いの話でしたが、かなり難しいですね……もっとがんばります。


次からは新章突入です!

【EGOIST】の戦力もかなり揃ってきてどうキャラが動くのか自分でも楽しみです。(書いてるうちに考えと違う話の流れになることがあるので……)


ブックマークが日に日に増えていて嬉しいです!

ありがとうございますm(__)m

感想欲しいなぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ