表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
新人戦編 ―前編―
9/143

第8話 起源







「──2034年、第三次世界大戦が起きわずか10日で終結しました。この短期間での終結は現在でも最短の戦争として記録され、この戦争時に主力兵器として扱われていたものが何なのか。わかりますね、レインズワース君?」


 見た目は40代後半といったところだろうか。丸眼鏡に教授用の白衣、頭髪は短く切り揃えられているがボサボサだ。そして無精髭を撫でながら黒板前で話している男がどうやらこの歴史学の講義を行っている教授のようだ。


 アルヴィスはというと、エリザベスとの模擬戦から1週間が過ぎ、入学時からお待ちかねの実践形式の授業をいよいよ次に控え興奮気味に後列の席で講義を受けていた。


 頬杖をつきながら教本をパラパラと捲り流し読みをしていると、教授に回答者として指名され肩をビクリと震わせる。


 たまたま開いていたページに解答らしき文章を見つけたアルヴィスは、質問に質問風で返す。


「……核兵器……ですか?」


「そうです。核兵器により小国は消え去り、世界人口は約3分の1にまで減ったと記録されています。理由として有力なものは資源の強奪。ははっ、現代よりも当時のほうが生活水準は高そうなのに戦争とはね」


 男は髭を撫でながら笑う。どうやら無自覚の癖のようだ。


「戦争を仕掛けた国は未だわかっていない。今更調べる者はいないが。──人工衛星をハッキングしての数ヵ国同時発射だそうだ。この戦争が原因で今ではインターネットに繋がる端末機は国に認可された施設にしかない。再発防止や、情報漏洩防止などの為だろうな。だが、例外として皆も着けていると思うがこの──」


 男は自身の右手を講義室にいる者全員に見えるように軽く挙げた。


「骨振動を利用した指輪型携帯電話だけは、連絡手段が無くなるのはあまりにも不便ですから一般に普及しているわけです」


 男は耳に指輪をはめている人差し指を入れ、実際に使用している真似をしながら話す。


 因みに、アルヴィスはこの指輪を持っていない。戸籍がある者には国から支給されているので国民の殆どの者が所持しているが、アルヴィスのような孤児には支給が無い。だからといって入手自体が不可能というわけではなく、1万ゴールドと比較的安価に購入可能だ。


 それでもアルヴィスが持たないのは、わざわざ1万ゴールドもの大金を払ってまでも連絡を取れないと困る相手がいない、という彼の生活環境からだ。


 アルヴィスが働き稼いだ金銭は、その殆どを孤児院の為に使っていた。


 そして孤児のアルヴィスが出来る仕事も多くなく、報酬は安い。この様な理由から1万ゴールドでも彼には大金であるのだ。


 男は指を抜き講義を続ける。


「そして人口を増やすため、予てから研究されていたらしい人工のヒトの生成が2045年に成功したわけです。それまでの過程でホムンクルスも生まれたそうです。今となっては存在が当たり前ですが、このホムンクルスが魔物の始まりになります。それから約20年後、我々魔術師が生まれました。つまり、我々魔法師の起源はヒトやホムンクルス同様に人の手によって生まれたのです。もちろんここにいる皆さんは産まれたわけですが」


 男はまた髭を撫で眼を閉じながら黒板の前を左右にゆっくりと歩きながら話す。


 自身の話に浸っているのか周りが見えていないだけなのか、生徒の面倒臭そうな表情を気にもせず講義を続ける。


 どうやらこの男の悪い癖のようだ。そして内容は知っていることが当たり前のようだが、アルヴィスだけは珍しくちゃんと聞いていた。


 この次の話が気になるようだ。


「そしてさらに10年、2078年──第四次世界大戦勃発。この戦争には皆さんも関係がありますね。この戦争は人対魔物ですから、飼い犬に手を噛まれたような戦争ですね、ははっ。ですが内容はまさに世界大戦級。自然界に脱走した魔物が独自の生態系を築き知能も高くなったのでしょう、世界中の魔物が一斉に人間を襲ってきたのです。そして皆さんの祖父母にあたる方々が魔物と死闘を繰り広げ、このときの大戦で高い武功を上げた者ほど高い地位を獲得したのです。つまり、爵位が与えられ貴族の復活。皆さんの今の生活があるのも御祖父さん御祖母さんのお陰なので感謝ですね。──おっと、もうこんな時間ですか。ではこれで講義を終わりとします」


 男は眼を開いたときたまたま視界に入った壁掛け時計を見ると、自身が思っているよりかなり時間が経っていたのだろう。眼を少し見開くと講義の終わりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ