第88話 出陣
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――隊編成の結果、全部で6隊となった。
第一隊は、アンヴィエッタ率いる1000人の隊だ。ここに【EGOIST】は振り分けられた。
第二隊は、2寮寮長率いる【戦乙女】を主力とした1000人隊。
第三隊は、3寮寮長率いる【ストームライダー】を主力とした1000人隊。
第四隊は、4寮寮長率いる少人数クランを集めた1000人隊。【EGOIST】も少人数ではあるが、エリザベスという高ランク魔法師が所属しているので特別扱いだ。
第五隊は、5寮寮長率いるサーヴァント持ちを多く集めた1000人+サーヴァントの隊だ。
そして、残りの1000人を率いる隊長が、アンヴィエッタの口から発表される。
「――クリストフ・シルヴァ! 前へ!」
闘技場内に響き渡ったその名前は、この学院にいる者なら誰もが知る人物の名であった。
クリストフ・シルヴァ――ラザフォード魔術学院序列1位、さらに〈剣帝〉の二つ名を持ち、今もっともSランクに近いと言われている男だ。
そして、ロベルトの実の兄でもあった。
クリストフは、アンヴィエッタの指示で生徒の集団から抜けると、壇上正面に設置されていた階段から寮長達のもとへと向かう。
クリストフのことを初めて見るアルヴィスは、予想とは大きく異なった見た目であったことに驚きの色を露わにした。
長身で筋骨隆々とした体躯に、ロベルトのような冷めた雰囲気の男だと勝手に思い込んでいたアルヴィス。だが実際は、180センチ強の長身ではあるが線が細く、とても1位の座に着いているような体格とは思えない。そして、纏う雰囲気はロベルトのような冷淡なものとはどこか違う。他者に関心が無く、常に見下しているような、そんな人物が放つ雰囲気を醸し出している。
全身どこをどう見ても、ロベルトとの共通点はブロンドの髪色くらいなものだ。
身形も少し変わったものであった。鼻や口をすっぽりと覆い隠し、目の下まで黒い布で顔を隠している。着けるマントは同色だ。そのマントに包まれている中身は、同じく黒を基調とした甲冑を頭部以外の全身に装着していた。甲冑の胸部にデザインされている鬼のような顔が威圧感を強調していた。
クリストフが階段を上がりきり、アンヴィエッタとすれ違う時に彼女が何かささやいたのか、小さく口が動いたことをアルヴィスは見逃さなかった。
「すまない、クリストフ。学生としての戦に、君を将とすることになってしまった」
「かまわない。任せろ」
両者視線を合わせることなく言葉を交わし、すれ違ったクリストフはアンヴィエッタの斜め後ろに待機した。
アンヴィエッタはクリストフが止まったことを足音で判断すると、また軽く息を吸い込み、スタンドマイクへ口を近づける。
「では最後に、軍を率いる総大将を発表する!」
「総大将ッ」「誰がやるんだ!?」
アンヴィエッタの発した台詞に、ドッと沸く場内。
全生徒がどよめき、色々な声が上がり響いた。その声に、空気が揺れているとさえ錯覚してしまう。
「壇上へっ――総大将、ローラン・イェーガー!!」
(誰ッ!?)
アンヴィエッタが叫んだ名前に、アルヴィスは1度たりとも聞いた覚えが無く、頭の中を疑問符が埋め尽くした。
――ズババァァーッ!! バリバリバリバリ……ッ!
刹那、壇上よりも上、観戦席最上段のそのまたさらに奥で闘技場を縁取る側壁の上に、一筋の落雷が生じた。
場内は突然の落雷による雷鳴と衝撃に、慌てふためく者や場外へ避難しようとする者で溢れ、混乱と焦燥に包まれた。
と、そこへ――
「うるせェぞテメェらァ――!」
空気を裂くほどの声量で、場内に何者かの怒号が響いた。
さらに――
闘技場の外では、ドドドドッとその数量の予測がつかない程多くの馬の足音が中にまで響いてきていた。
そのせいで外へと逃げ出そうとしていた生徒達は、押し戻されるように中へと折り返している。
怒号で我を取り戻した生徒達は、その発生源である側壁上の人物へと注目する。
「俺様がテメェ等を指揮するローランだ! いいかッ、俺様に従ってれば必ず勝たせてやる!」
壁上で叫ぶローランの姿は、くすんだ金髪をかきあげたような髪、全身は黄金に輝く甲冑を纏い、首の周りには白いファーのような毛皮が施されている。
体躯は、甲冑の隙間から見える四肢だけで想像がつくほど筋骨隆々とし、背は2メートル近くはあるだろうか。叫ぶ口許からのぞく歯は、まるで牙のように鋭い。
彼を表現するのなら、獅子のような男と呼ぶのが最適かもしれない。
「外には俺の隊も連れてきてやった! テメェ等、準備はいいか? ――出陣だァッ」




