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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
色欲の魔女編
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第65話 好きな色




 ――服選びから小一時間程経過した現在、アリスのファッションショーを独占していたアルヴィスだが、美幼女の生着替えという何とも贅沢なオプション付きにも関わらずぐったりと座り込んでいた。


 その理由もこれまたこの上ない贅沢なわけだが、きっと一部のマニアなら涙しながら喜んで大金を支払うだろう。


 その理由とは――アリスの裸体だ。


 オプションで生着替えを見せられていたわけだが、見せられた裸体は一糸纏わぬ状態だったのだ。そんな姿を小一時間もの間何度も繰り返し見せられる度、アルヴィスはどちらが年上なのか分からなくなるほどピュアな反応を繰り返していた。


 赤面しつつ両手で顔を覆い隠しては、アリスに服の感想を求められ手を外される。着ているかと思えば裸で仁王立ちのアリスがニヤリと笑っている。まるで悪戯が成功して笑っているような質の悪い顔だ。


 アリスの体つきは見た目年齢相応で凹凸の無いつるぺたボディーだが、実年齢が100歳を越えているせいか妙に艶かしくどこか扇情的だ。全裸を晒しているというのにも関わらず、その表情は余裕そのもので挑発的にも見える。


 アルヴィスは欲情しそうになる素直な感情と、相手が幼女ということで手を出せば犯罪になる理性との葛藤と戦い続け、現在の状態にいたる。


 ――シャッ。


 勢いよく開く試着室のカーテン。


 そこから現れたのは、胸元がざっくりと大胆に開き、背中が丸出しで布面積が極端に少ない深紅のドレスを身に纏ったアリスだ。


「どうじゃお前さん。儂はこれが1番しっくりくるのじゃが、お前さんのお眼鏡にかなったかのう?」


 試着室内でのファッションショーから室外に避難し、近場のソファーでぐったりと休んでいたアルヴィスに感想を求めるアリス。


「――……んー、ぁぁ……もうそれでいいんじゃないか?」


 しっかりと見る気力が残っていなかったアルヴィスは、チラリと1度見ただけで適当に返事をする。


 そんなやる気のない態度にアリスは「なんじゃまったく!」と少し怒りながらアルヴィスの眼前まで迫り、腰に手を当て前屈みで顔を近づけた。


「ど・う・じゃ? ――儂によく似合っておるじゃろ?」


 ざっくりとV字に胸元が開いているドレスを着たまま前屈みになったアリスの胸元は、ソファーに座っているアルヴィスからはとても危険な角度で見えていた。


 これによりアルヴィスはまた瞬時に赤面状態となった。その表情を見たアリスは満足そうに笑う。


「そうかそうか、そんなにこれが気に入ったのかお前さん。お前さんは素直で可愛いのう。何も言わずともその表情ひとつでお前さんの考えはわかるぞ? 今までで1番顔が赤いからのう。ういやつじゃ、カカッ」


 満足したらしいアリスが指を鳴らし近くにいた店員を呼ぶと、試着中のドレスを購入することを伝えアルヴィスに会計をさせた。


 深紅のドレスをそのまま着衣して店を出たアリスとアルヴィスは、今度は魔道具屋へと向かった。


 本来の順番的にはこちらの用事が先だったのだが、アリスの指示に逆らえず服屋を優先したのだ。


 魔道具屋で購入するものは既に決まっている。それは学院長の指示によりアリスに装着させることとなった魔力を抑え込む道具だ。半世紀以上もの長い間孤独に暮らしていた今のアリスは、自身の魔力を抑えておくという習慣がない。そのため常に周囲に恐怖を与えるほどの魔力が駄々漏れ状態なのだ。


 早速魔道具屋でお目当ての効力を持つ装飾品を探すが、ネックレスや指輪やら腕輪など色々な形状のものがあり、アルヴィスは思わず困り顔になる。


 だがアリスの一言によりあっという間に決まってしまった。


「うむ、指輪一択じゃの」


 アリスはその中でもさらに物が決まっていたのか、ルビーのような宝石がついている指輪を手にしていた。


 自身の瞳の色と同じような宝石つき指輪に、先程の深紅のドレス。きっとアリスは赤色が好きなのかもしれないとアルヴィスは思った。


 そんなことを考えていた主人の横でアリスは指輪を左手の薬指にはめて眺めていた。


「どうじゃ? 似合うじゃろ? 赤はお前さんの好きな色じゃからな」


「へっ……!? アリスがその色が好きなんじゃないのか?」


「そんなわけなかろう! 赤は儂の眼の色と同じで忌々しいわ。じゃが、昔お前さんが儂の眼の色を綺麗だと、似合っておると言ったのじゃ。――ま、お前さんは何も覚えておらんじゃろうがの」


(そっか、忘れてた。アリスの中では俺と昔一緒にいたことになってるんだっけな。それにしても昔の俺、そんなことを言うような奴設定なのかよ。寒気がするぜ)


 アルヴィスは腕を擦り身体を温める仕草をする。擦りながら思う。確かにその色似合ってんな、と。


 指輪を眺めているアリスに少しの間目を奪われていたことに気付いたアルヴィスは、頭を振って思いを振り落とす。


 その行動にアリスは小首をかしげるが、特に気にした風もなく1人で会計を済ませに向かう。


「おいっ、お前金持ってないだろ!」


 慌ててアリスの後を追うアルヴィス。


 無事会計を済ませると、陽が沈み始めていたので寮へと戻ることにした。

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