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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
帝国侵攻編
133/143

第133話 防衛と引き継ぎ

 ギルドを出たアルヴィス達は館へと戻っていた。アルヴィス隊でどうやってこの都市を護るかの作戦会議を行うためだ。


 けれど、思いのほか簡単に会議は終わりを見せた。


「じゃあこれで決まりだな。アリス達には負担をかけるけど宜しく頼む」


「カッカッ、余裕じゃ余裕。気にするでないわ」


「私をこき使うなんて許せるものではないけれど、はぁ~、まぁいいわ。借り1つ、ということね」


「く、クオンちゃん! 私たちは奴隷なんだから使われて当然なんだよ? 借りだなんて失礼だよぉ」


「姉さんはわかってないわね。確かにあの人のことをご主人様とは呼んであげているけれど、私は奴隷になったつもりはないし、ご主人様とも思っていないわ。形式上仕方なく呼んであげているのよ」


「俺の呼び方なんてなんでもいいよ。別に主人になったつもりはないし、お前たちを奴隷とも思ってない。ただ買った以上協力はしてもらう」


「ほら、この人もこう言っているわ。だから私たちはへりくだる必要なんてないのよ」


「わ、私はご主人様と思ってるからね!」


「お、おう。わかった」


 アルヴィスは勢いよくシオンの顔が近づいてきたので、慌てつつ咄嗟に身を退いた。


 本人は無自覚なのだろうが、顎の下あたりで両手を組む姿勢が結果的に胸を押し寄せているので、耐性の低いアルヴィスはそれだけでドキリとしてしまうのだ。


「じゃあ各自持ち場に移ってくれ。数日続くと思うがみんな頼んだぞ」


 アルヴィスの言葉に頷きや返事で応える一同。そこには当然クリストフから預けられた100人の兵もいるので、会議室のかわりに使用していた大広間は活気で満ちた。


 【EGOIST】のメンバーは割り振られた兵を連れてそれぞれの持ち場へと向かって行く。


 割り振りはこうだ。


 正方形で都市を囲み護る壁上に、4つの小隊が配置される。


 北をアリス。南をエリザベスと飛鳥。東をシオンとクオン。西をエレナとルナ。そこに兵25名ずつが割り振られている。


 北と東は帝国領が広がるため、攻めてくるならこの方角からのはずということで単独でも都市を容易に落とせる3人を配置した。ちなみにシオンとクオンは合体時の話だ。


 西はカタルシア国の領土に向いているため、念のため高い戦力を持つエレナを中心に割り振っている。


 南は自国がある方角であり、尚且つ攻め落としてきた街しかないので1番安全である。そして援軍などが来るとしたら南からなので、エリザベスと飛鳥を配置したのだ。実力は信用しているが、やはりそれでもアルヴィスは2人を安全な場所に担当させたかったのだ。


 アルヴィスは館に残り報告を聞く、伝える、そして万が一の時は能力で瞬時に移動出来るため助っ人としての役割を担っている。


 予想では1週間もしないうちに引き継ぎの隊が来る。それまでの間、大都市をこの少数で護らなければならないわけだが――アルヴィスの不安で眠れない日々が始まった。







 クリストフ達が都市を離れ、同時にアルヴィス達が都市を護り始めてから5日。


 予想よりも2日早く引き継ぎの隊が姿を現した。


 そして5日の間も驚くほどあっけなく過ぎ去っていた。


 2度、都市奪還のため5000~8000程の隊が襲撃してきたが、予想通り北と東からだったのでアリスが嬉々としてこれを撃退。なんと東から攻めてきた隊もアリスが単独撃破したのだ。アリス曰く、視界に入ったので奪ってしもうた、だそうだ。


 無事引き継ぎを終えたアルヴィス達は、100人の兵とともに都市を後にして自国の王都へと帰還を目指す。


 【EGOIST】メンバーのみならアルヴィスの魔法で一瞬にして帰れるが、兵がいる前ではその魔法を使わないようにしていた。


 もしそれが広まれば、アルヴィスを利用したがる者が溢れるだろう。だからこそ秘匿にしておきたいのだ。なぜならば、アルヴィスの正体を知る者は【EGOIST】メンバーを抜かせば、孫であるエドワードと1寮寮長のアンヴィエッタだけだ。そしてアルヴィスの魔法はエドワードしか使えないというのが世の認識だ。それを少年が使えると知られれば、なんとか引き込もうと考えるのが権力者の思考だ。


 王都へ向かうアルヴィス達の脚は緊張の疲れからか遅く、帰るまでに10日ほどかかっていた。原因は100人の兵である。


 数々の戦場を潜り抜けてきた【EGOIST】とは違い、兵たちはどうやら別だったようだ。そのせいかただ見張るだけの役割で5日間が終わったにも関わらず疲弊しきっていたのだ。


 途中何度もアリスが見捨てればよいとアルヴィスに言ったが、それを彼は断った。隊長としての責任感からか自身の経験からなのかわからないが、置いていかれることほど怖いことはない、とのことだった。


 それを聞いた時のアリスは過去を思い出したのか、遠くを見るような目付きで「そうじゃの……」と呟き、それからは大人しくなっていた。


 王都が見えると、寄り道などせず直ぐに学院へと向かった。もちろんエドワードに報告をするためだ。


 学院にまで着くと、そこで隊は解散となった。報告に大勢はいらない。


 【EGOIST】メンバーだけになると、アルヴィスは〈次元の穴〉で謁見の間入口まで移動する。


 予め連絡はしていたので、ノックの返事はすぐにきた。


「失礼します。学院長、報告にきました」


「ふぉっふぉっ、今は国王として会っています。学院長としてではありませんよ、レインズワース大尉」


「失礼しました。――やっぱダメだな。すまん、俺にはかしこまった話し方出来ねェよ」


「ふぉっふぉっふぉ、わかりました。いいですよ別に、楽な話し方でかまいません」


 玉座で笑うエドワードは言葉の通り本当に気にしていないようだ。だがこれはアルヴィスが祖父だから許されているだけで、他の者が同じような態度を取ることなどはありえない。


「じゃあ、任務報告させてもらうぜ」


 アルヴィスは一歩前へ出ると、都市ノクタルを落とすまでの報告を始めた。

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