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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
帝国侵攻編
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第132話 皇子の思考

「――!? あの怪しいヤツが皇子!?」


 エリザベスの言葉に口に含んでいた飲み物を吹き出しそうになったアルヴィスは何とか飲み込んでから叫んだ。


「うん。あの人は初めて見たけど、コインの紋章は見たことあるの。それに第一と第二皇子が戦中って言ってたでしょ? 確か三兄弟のはずだから、そう考えると第三皇子ってことになるんだよねぇー」


「マジかよ……」


「マジですよ」


 アルヴィスの言葉に合わせておどけてみせるエリザベス。


 エリザベスが元王族だということをアルヴィスはまだしらない。なのでエリザベスがなぜ敵国の王族に詳しいのか疑問に思うが、家柄に関することには触れないようにしていた。初めての模擬戦時にそう決めたのだ。


「なんでそんな人がこんなとこにいるのかな? それに君にこの都市を任せるみたいなことを昨夜言ってたじゃない? 仮にも皇子なんでしょ? 敵国に自ら都市を渡すとか意味わかんないよ」


「やっぱりアリシアもそう思うか? だよなー、俺も1番にそこを疑問に思ったんだ」


「そんなのは簡単じゃ。何もせずに自分が王権を取るためじゃろ。儂らに兄たちを殺させての」


 2人の疑問に応えたのはアリスだ。ワインのボトルを数本あけている彼女はすでにできあがっているが、それでも思考はちゃんと働くらしい。


「それはないでしょうね」


「なんじゃぁ新入り? 儂に負けた分際で逆らう気かのう?」


 会話に参加してきたのは意外にもクオンだ。


 ギルドについてからずっと黙ったままだった彼女の参加に、一同は驚きと同時に注目した。


「別にあなたに負けたわけじゃないのだけれど。それと逆らうの使い方がおかしいわよ。ただでさえ頭が悪そうなのに、酔って大バカにでもなったのかしら?」


「貴様……殺すぞ?」


「やってごらんなさいな」


 本気の殺意を向けるアリスに物怖じすることなく正面から睨み合うクオン。


 アルヴィスはそんな2人が今にも殺り合いかねない雰囲気を放っているので、慌てて視界の間に割り込んだ。


「と、ところでクオン! 王権を取るためじゃないなら何だと思うんだ?」


「そんなことまで私が知るはずないじゃない。けれど、あの人が王位に興味がないのは有名な話だから否定しただけよ」


「そ、それと今のこの国を嫌っていることでも有名です!」


 クオンの説明に加え付けたのは姉のシオンだ。


 ちなみに、シオンはただ無言だったクオンとは違い、夢中になってスイーツを食べ続けていた。


「じゃあ俺たちに帝国を滅ぼさせようってことか?」


「そ、そこまではさすがに違うと思うけど、可能性は0じゃないと思います」


「でも現実的にそう考えるのが1番妥当だよね。主要都市の1つを簡単に独断でくれるんだもん」


 サラダを食べながらアリシアが言う。


「確かにそうかもしれないが、アリシア、シャキシャキいわせながら話すな。聞き取りづらいわ」


「野菜は大事なんだよ?」


「……うん」


 どうでもよくなったアルヴィスは頷くことで会話を切った。


 話が脱線する未来しか視えなかったからだ。


「なら望み通りさっさと滅ぼしてやればよい。もともとこっちもそのつもりなのじゃ、やることは変わらぬ」


「主、私は帝国から仕事の依頼をされることが多かったからわかるが、そう簡単に滅ぼせるほど弱くはないぞ。【七つの大罪】総戦力と同等の軍を皇子たち個人が持ち、さらに帝都兵はマジックスーツなる防具を皆着ている。各段に能力が向上するらしい。それでも私より強い者は見たことなかったが、今はわからない」


「カッカッ、それは楽しそうじゃのう!」


 エレナの言葉に酒のせいかいつも以上に喜びを露わにしたアリス。


「ちょっと待て、確かエレナとシオンもクオンも帝国に造られたんだよな? ただでさえ強いのに同じようなヤツがもしそんなの着てたら勝てないんじゃないか!?」


「その女のことは解らないけれど、私たちのことでいえばそれはないわ。私たちが研究所を壊したもの」


「……」


 さらっと言うクオンのセリフにアルヴィスは黙ってしまった。


 どうして俺のサーヴァントはみんなすぐに破壊したがるのか、と。


「主殿、私も同じだ。私も誕生と共に破壊したからな」


「…………うん、もういいよ」


「にゃ? どうしたご主人。にゃんか悲しそうにゃ」


 肉を口に咥えたルナがアルヴィスの表情変化に気付いて話し掛けてくる。


「ルナ……」


「にゃ?」


 首をかしげて鈴を鳴らすルナ。


「お前だけかもしれないわ。俺のことをわかってくれるヤツは」


「んー、たぶんわかってにゃいと思うけど、わかったことにしておくにゃ」


「マジかぁ……でもなんでもいいや。――なぁ、抱きしめてもいいか?」


「かまわにゃいが、ご飯の邪魔はするにゃよご主人」


「ルナ――!」


 ガシッとあつい抱擁をされるアルヴィス。交わしたのではない、一方的に抱きしめられたのだ。


「……なんで邪魔するんだよ、アリス」


「カッカッ、儂を間に置いといて勝手にお前さんを抱かせぬわい」


「俺が抱きに行くんだ! 抱かれるんじゃねェ!」


「同じことじゃ!」


「受け身かどうかが違う! とりあえず勝手に抱かれるわけじゃねーよ!」


「それでもお前さんの温もりをほかの者にやるわけにはいかぬッ」


「だからって代わりにアリスの温もりはいらねェよ。そして胸に顔を埋めようとすんな」


「カッカッ、お前さんも男じゃからのう。おっぱいは好きじゃろ? んぅ?」


「その顔ムカつくな! やめろそれ! やめろ!」


 アルヴィスは弄ぶ様な表情でからかってくるアリスに言うと、押しのけるようにして挟む胸から脱出した。


 その光景にエリザベスと飛鳥が顔を赤くしているのはいつものことだ。


 アリシアに関しては「やるねぇー♪」と口笛を吹いている。


「なんじゃせっかくサービスしてやったというのに。もうよいのか?」


「もうも何も初めから求めてないわ!」


「つれないやつじゃのう。まぁ満足したから許してやるわい、カッカッ」


「あ、ありがとう……?」


「よい、気にするな」


 いつの間にか立場が逆転していることを不思議に感じつつ、アルヴィスはそろそろギルドを出ようかと考えた。


「とりあえず、帝国壊滅に協力するかは置いといて俺たちは俺たちに出来ることをしよう。どうせそのうち命令で侵攻すんだろうしな」


 アルヴィスのまとめに頷く一同。


 とここで、アルヴィスは今更ながらあることに気が付いた。


「あれ? そういえばエリザベスたちはサーヴァント買わなかったのか?」


「えっ!? えーッと……えへへ」


「……」


 可愛く笑って誤魔化すエリザベス。アルヴィスは彼女と一緒に奴隷商に行ったはずのメンバーを順番に見ていくと、なぜかみんなも同様に何かを誤魔化すような表情をしていた。


 改めてそんな彼女たちをよく見ると、見覚えのない装飾品や服装を身に纏っていることに気が付く。


「はは~ん……。さてはみんな欲しいものに金を使ったな?」


「だ、だってしょうがないんだよ! これが可愛くて!」


「エリザベスさんが寄り道するので仕方なく!」


「このリボン可愛くない♪」


「お肉がおいしいにゃ」


 図星をつかれ早口で言い訳をしだす女性陣を見て、アルヴィスは深い嘆息を吐くのであった。

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