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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
新人戦編 ―前編―
13/143

第12話 約束

「…………」


 指を鳴らした刹那、砂塵が舞いアルヴィスは姿を消した。僅かな間フィールドは静寂に包まれ砂塵が止むと、そこには1人佇むアルヴィスと10m程先に横たわっているロキの姿が。


 観戦している学生は一体何が起きたのか解らずざわめいている。


「──なんてやつだッ!?」


(通常の5倍速の加速系等魔術に縮地を合わせることでこの私ですら初動をとらえることが出来ないとは。──あそこまで速いと眼のみで追うのは無理だな。だから魔力を感じ取り動きを読むのがセオリーだが、さすがに序列5位とはいえまだ無理か)


 アンヴィエッタは興奮のあまり立ち上がりフィールドの様子を眺めていた。


「うぅ……ぅっ……」


 フィールドで転がり倒れているロキは微かに呻き声を上げている。鎧はというと腹部にあたる部分を中心に蜘蛛の巣状にヒビが入り破壊されていた。


「案外脆いもんだな、あんたのご自慢のそれ」


 アルヴィスは鎧を殴り破壊した自身の右手を冷ますように息を吹き掛けながらロキに話しかける。だが返事を求めているわけではない。今のロキがとてもまともに会話など出来そうにもない状態だというのは追いやった当の本人なのだ、そのくらい聞かなくとも解っているつもりだった。


「……ぅっ……お、おいっ……はぁっ……はぁっ……」


(!?)


 だが意外なことにロキは倒れて空を見上げたまま反応してきた。表情は苦しそうに片眼を瞑り息は荒いままだが。


「……貴様……この俺に……手を、抜いて……いたのか……?」


「いや、あんたのその鎧がなかったらこの術を試すつもりはなかったぜ、ロキ」


(生身相手じゃ殺しかねないからな)


「……ちっ、俺の判断ミスか……。──今回は貴様に勝ちをくれてやる……来月の新人戦、絶対に出てこい……そこで叩きのめしてやる」


(新人戦? そんなものがあるのか?)


「ああ、俺もまたあんたとは闘ってみたい。今度はお互い全力でだ」


「……ふんっ」


 ロキはまるで自分はまだ全力ではないと言っているようなアルヴィスの言葉を鼻で一笑しそれを返事とすると、術を解き〈全身岩甲冑フルロックアーマー〉で武装された状態から素に戻る。鎧は形状変わらず地面に落ち、まるで脱皮を行った後の様にも見える。


 ロキが術を解いたことを敗けを認めたと判断したのか、アンヴィエッタが二人の元まで近づいてくる。


 アルヴィスはその時初めてもう一方のフィールドで行っていた模擬戦が既に終了し、生徒全員に観戦されていたことに気付く。


「私はいい試合程度にはなると思っていたが、まさか勝つとまでは思ってもみなかったぞ坊や」


「おいおい、試合をさせておいてそれはないだろ先生。それより、なんかそれ違和感があるんだけど?」


「序列5位を倒しておいて、もう君を〈最下位〉と呼ぶわけにもいくまい」


「んー、それでも坊やはちょっとなぁ。俺も15だぜ?」


「私からみたらまだまだ坊やさ」


(私からって、あんたもどう見たってまだ20代だろ)


 アルヴィスは内心どこかまだ納得いっていないが改善されそうにもないので諦め、気になっていることを聞いてみることにした。


「ところで、さっきのロキと先生の約束。あれ、俺にも適用されるのか?」


「ん? ああ。──今ここでやるかい、坊や?」


「…………」


 アルヴィスはアンヴィエッタの眼をジッと見つめ、暫しの時が経つ。


 アンヴィエッタから感じる計り知れない程の魔力。強者の風格。


 やってみたい。アルヴィスは好奇心という単純な欲望に満たされていた。


「──いや、また今度頼む」


 が、アンヴィエッタとの模擬戦を断った。


「そうか」


(分かっているようじゃないか、今の君では試合にならないと)


 アンヴィエッタは眼鏡の位置を直しながら鼻で笑い、密かにアルヴィスの評価を上げていた。


(ちっ。悔しいけど、今の俺じゃまだ足りねぇ)


 アルヴィスは腰に両手を当て空を見上げると、己の中にもやもやと残る悔しさを吐き出すかのように溜め息を吐いた。


「皆今日の試合の反省をしっかり行うように! これにて終了とする!」


 アルヴィスの様子を見たアンヴィエッタは話は終わりだと背を向けると、観戦席にいる生徒に聞こえるように大声で講義終了のあいさつを叫んだ。

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