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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
帝国侵攻編
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第129話 奴隷契約

 アルヴィスの突進に対して姉妹は慌てることなく対応する。


 右手を正面に向けて〈リフレクション〉を発動し、左手に魔力を集め始めていた。


 姉妹の行動を見たアルヴィスは両手に〈時の迷宮〉を発動させた。片手は〈リフレクション〉を消し、片手は姉妹の合体を解くためだ。


 そしてお互いの魔法発動から数秒、アルヴィスの右拳が〈リフレクション〉を殴り消した。


 一瞬たりとも止まることなく突っ込んできたアルヴィスを躱す暇もなく姉妹は左拳を腹部にくらう。


 強烈な一撃をうけた身体は踏ん張りがきかずに数メートルの距離を吹き飛んだ。だが姉妹はすぐに立ち上がってアルヴィスとの距離を取った。


 その光景にアルヴィスは驚いていた。姉妹があまりダメージを受けていないことにではない。〈時の迷宮〉を纏った拳を受けたにも関わらず、姉妹が未だにその姿を保っていたことにだ。


(アリスの影化すら一発で解いたのに効いてないだと!? あいつらの魔法の方が上ってことなのか? ならもっと触れる時間を長くしねェと……)


「アリス!」


「任せよ。――〈アイスフロア〉」


 アルヴィスの背後を追随していたアリスが前に出ると、両手を地面につけた。


 両手を発生源とした冷気が周囲の地面を凍結させていく。


 それは姉妹の脚を凍らせ地面に貼り付けるためのものだ。攻撃として使用した魔法ではない。アルヴィスに名前を呼ばれただけで考えを察するあたり、だてに付き合いが長くないということだろうか。


 だがそれすらも姉妹が発動させた〈リフレクション〉で返される。


 凍結した地面をさらに返された魔法で凍結していく。さらにそれをアリスが凍結させ、それすらも返され凍結するというループとなった。けれどそれは結果として成功だった。姉妹の動きを止めるのが目的だったからだ。


 アルヴィスはその隙に〈次元の穴〉で姉妹の背後を取っていた。


「もらった!」


 正面にいたはずのアルヴィスが突然背後に現れたことに驚きを隠せないでいる姉妹だが、その場を跳んで拳を躱すと、〈グラヴィテーション〉で自身を引っ張り空中で回避不可の状況を脱する。


 アルヴィスから10メートルほど離れた位置に着地した姉妹に待っていたのはアリスの〈影時雨〉だった。


 姉妹はそれを〈グラヴィテーション〉によって方向をアルヴィスへと変えた。


 アルヴィスは難なく〈時の迷宮〉で消すが、姉妹との間を凍結した地面が邪魔をしており距離を詰めることを困難にしていた。


 もちろん消すことは可能だが、攻防どちらのためでもないことに魔力を消費することを躊躇っていた。


 姉妹は地面から伸びる氷を蹴り砕くと、瞬時に〈リフレクション〉でアリスへと弾き飛ばす。


 アリスは飛んでくる多数の破片を風魔法でさらに吹き飛ばし返した。と同時に、影をこっそりと伸ばして〈影縛り〉を試みる。


 姉妹は弾き返さずに破片を避け、伸びてくる影を魔法で弾いた。


「チッ、これも返すか」


 舌打ちで苛立ちを露わにするアリス。あらゆる魔法を弾き返され頭を悩ましていた。


「アリス! 俺に魔法を放て!」


「なんじゃと!? ――そういうことか、なるほどの」


 アリスはアルヴィスの正面に出現している穴を見て理解した。


 〈影時雨〉を穴へ向かって放出すると、それは中を通って姉妹の四方に出現していた4つの穴から分かれて飛び出していく。


 1つの入口にたいして4つの出口を可能としているのはアルヴィスの空間領域だからだ。


 前後左右から飛んでくる無数の針を避けるには上しかない。瞬時にして全方位に〈リフレクション〉を展開するのは出来なかった姉妹は仕方なく跳んで躱した。


 そこに待っていましたとばかりに飛翔してきていたアリスがドレスを翻しながら蹴りを見舞う。


「ぐふッ――!?」


 蹴り飛ばされる先にはアルヴィスがいた。


 今度は殴らず掴もうと構えるが、そうは簡単にはいかなかった。


 姉妹は飛ばされながらも〈グラヴィテーション〉で方向を変えることに成功する。


 アルヴィスも追いかけようとするがその方向は氷の大地だ。


「これ邪魔ッ!」


 半ばキレながら発動させていた〈時の迷宮〉を纏う右拳で地面を殴りつけた。


 凍結した氷の大地はキレイに元に戻ったが、アルヴィスは消費した魔力で怠さを感じ始めていた。


(……殺さないように加減していたせいで無駄に魔力を使い過ぎたな。もう余裕もないし、片をつけにいくか)


「アリス、ちょっと全力でいくからもし失敗に終わったらあと任せたぜ」


「何をする気かわからぬが、わかった。好きに暴れてくるがよい、お前さんよ」


「おう」


 アルヴィスは頷くと、身体強化に使っている魔力を増大させ、さらに多重の加速魔法を掛け始めた。


「2,3,4,5,6,7,8,9,10――――」


 どんどん重ね掛けされていく加速魔法。その重ねた数は――


「――35!」


 魔法を掛け終えたアルヴィスが一歩を踏み出すと、周囲に衝撃波とソニックブームを生じさせた。


 一歩目から優に超音速を超えているのだ。


 瞬間的速さで最高速にまで達したアルヴィスの姿は、姉妹にはまともに捕らえることも感じ取ることも出来なかった。


 瞬きをする間もなく背後を取られているが、大音響と衝撃によってそれどころではなかった。


「いただき」


 アルヴィスは姉妹を掴むと、〈時の迷宮〉を発動させ残りの魔力を注ぎ込む。


 すると姉妹は発光しだし、その姿はシオンとクオンの2人に分かれ始めた。


 その光景自体は数瞬だったが、たしかに魔法を解くことに成功したアルヴィスは崩れるように片膝を地面についた。魔力の限界が来ていたのだ。だが勝負はついた。こちらにはまだアリスもいるが、姉妹はもう合体出来るほどの魔力は残っていないだろう。そう判断したアルヴィスは2人に向かって微かに笑った。


「俺たちの勝ち」

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