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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
帝国侵攻編
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第123話 脱退

 食堂を後にしたアルヴィスは、部屋にいるロベルト以外の【EGOIST】メンバーに今後の話をした。


 自身が都市ノクタルの領主になるかもしれないこと、取り合えず引き継ぐまでの責任者になったこと、100人で護らないといけないこと、そしてクリストフ達がこれからどうするのかをだ。


 これらに関しては様々な声が上がったが、決まった以上どうすることも出来ないので早々に話し合いは終了した。


 次いで出た話題が戦力増強についてだ。


 攻撃力についてはこれ以上無いほど高いが、防御力に関しては圧倒的人数不足。これを解決しないことには、今回だけではなくこれからの活動にも支障が出るだろう。


 どうやって兵力を集めようか相談していると、そこに扉をノックする音が2回。


 アルヴィスが返事をすると、開かれた扉から現れたのは姿を消していたロベルトだった。


「ロベルト!?」


「ロベルトくん!?」


「シルヴァくん!?」


 驚いたのはアルヴィス・飛鳥・エリザベスだけで、他の者達はさして興味が無さそうだった。


 アリスに関しては一瞥しただけでそれ以上見ることすらしていない。


 どれだけアルヴィス以外の男に興味がないんだという話である。


「ロベルトッ、今までどこにいたんだよ!?」


「…………アルヴィス、俺はこのクランを抜ける」


「…………はッ!?」


 アルヴィスは一瞬何を言われたのか理解が出来なかった。


「確か言ってたよな? このクランは好きに利用して良いと。自分の為に使っていいと」


「ああ……」


「俺にも属していることで価値があると思って入っていたが、最近は貴様の指示に従ってばかりで、その価値を見出だせていない。俺自身の成長が無い」


「それは……ッ!」


「俺はこんなところで止まってられない。兄を、やつを越えないと俺は前に進めないんだ」


「そうだったな……クリストフを越えることがロベルトの目的だったな……」


「これからは貴様等と敵対することもあるだろうが、その時は容赦しない。俺は俺の道の為に貴様等相手でも斬る」


「ならそん時はテメェを一発ぶん殴って黙らせてやるよ」


 拳を突き出すアルヴィス。


 それを見たロベルトは、ふんっと小さく鼻で笑うと背を向けた。


「世話になった」


 ロベルトの言葉を最後に、扉が閉まって強制的に話が終了された。


「い、いいんですかアルヴィスくん!? このままロベルトくんを行かせるんですか!?」


「俺だって止められるならそうするけどよ……あいつの目的を知ってるからな。それを言われたら止めることなんて出来ねェよ、飛鳥……」


「目的……ですか?」


「ああ。飛鳥にも目的があるだろ?」


「え? あっ、はい。三種の神器を集めることです」


「このクランに入って少しは役立ってるか?」


「そ、それは……」


 予想外の質問に言葉がつまる飛鳥。その表情には曇りも見える。


「飛鳥も目的の為なら抜けたっていいんだぜ?」


「そ、そんな……!?」


「ちょっとアルくん! そんなこと言わなくてもいいじゃない!」


「エリザも、皆もだ! 目的のためにこのクランが邪魔になったときは遠慮なく言ってくれ。俺にも孤児院を護るっていう目的がある。その為なら俺すら抜けるかもしれない。だから、みんなも遠慮なんかしないでくれ」


「私は私の為にアルくんの傍にいるの! クランなんて関係ないよ!」


「エリザ……ッ」


「わ、私もです! 私もアルヴィスくんには恩があります、一緒にいることにクランなど関係ありません!」


「飛鳥……」


「私は君といることが1番の近道だと思ってるからね、どこまでも一緒にいるよ」


「アリシア……! ――皆……ありがとな。そう言ってもらえて正直ホッとしてるよ。皆をこの先もっと辛い目にあわせると思うと、抜ける良い切っ掛けだと思ったんだ」


「そんなことを思ってたの? アルくん、ちょっと私たちのことを甘く見すぎじゃない?」


 エリザベスがアルヴィスの顔を覗き込む様に前のめりになり、頬を膨らまして覗いてくる。


 アルヴィスはその表情にドキッとしながらも、「わ、悪ィ……」と謝る。


「忘れてないよね? 私、一応Aランク魔法師なんだからね? 飛鳥ちゃんやアリシアちゃんだって、凄い魔法を持った魔法師なんだよ? 少しは力を信用してくれてもいいと思うんだよね、私」


「そうですよアルヴィスくん。私も成長しました。式神だって以前より使いこなせます。もっと戦略に絡ませてください」


「わ、私は攻撃には向かないから、ほどほどでいいかな~……」


 エリザベスと飛鳥が詰め寄る勢いで言ってくる中、アリシアは吹けない口笛を吹くようにそっぽを向いていた。


「わ、わかったから離れてくれ……! アリス、どう思う?」


 エリザベスと飛鳥を押し離すと、アルヴィスは隣にいるアリスへと話を振る。


 アリスは質問の意味を瞬時に理解したのか、エリザベスと飛鳥を少しの間観察するように見詰めると、口を開いた。


「小娘はそうじゃなぁ……せいぜいDランク以下なら100~200、Bランクなら30人といったところかの。Aランクなら3人相手にして生き延びれはする程度じゃ。あっちの和装娘は以前に見た鬼を出せばAランク5人までは相手出来るじゃろうな。じゃが魔力が小娘よりも少なすぎる。長期戦になる多勢相手には不向きじゃ。Dランク以下でも同時に相手するのはせいぜい100までじゃな」


「そうか。ちなみにアリシアとルナ、それにエレナはどうなんだ?」


「あの洗脳娘か? 話にならんのう。よくてもDランクとの一対一じゃよ。まぁ……魔法が魔法じゃ、使い方次第じゃな。猫娘も一対多には向いておらん。同時に相手出来てもCランクを10人程度じゃな。じゃが猫娘もそこじゃないのはお前さんもわかっておるじゃろ?」


「ああ、そうだな」


 アリシアもルナも期待するのは戦闘力の高さじゃなく、その魔法能力だ。使い方によっては1人で都市すら落とせるだろう。


「で、エレナはどうなんだ?」


 アルヴィスの言葉に、エレナ本人もピクリと反応する。


「我が僕は強いぞ? この儂が見込んだやつじゃからのう。そうじゃのう、この都市くらいなら単独で落とせるはずじゃ」


「ま、マジかよ……!?」


(アリスと同じことが出来るってことかよ!? 1人で戦ってるところを見たことないから分からなかったが……まさかそんなに強いなんてな……)


「じゃ、じゃあ……復活した今のアリスなら……どうなんだ?」


「今さら聞くのか我が主さまよ。お前さんが望むなら国すら落としてやるわい、カカッ」


「は、ハハハ……はは……ッ」


 アルヴィスは当たり前のように言ってのけた規模に引きつった笑みを浮かべた。


「あ、アリスちゃん! アリスちゃんがいくら強いからってそれは冗談でしょ……?」


 エリザベスも驚きを露わにし、その規模が冗談であって欲しそうに聞き直す。


「カッ、冗談などではないわ。護る者がいない単独ならいくらでも破壊してくれるわい」


「絶対するなよ?」


「お前さんの指示が無ければ自らはせんよ。前にも言うたじゃろ? 今さら城攻めや国取りに興味などない」


「ふぅ……ならいい」


 アルヴィスは額の冷や汗を拭いつつ、呼吸を整えた。


「ちょ、ちょっと待ってください……! ということはですよ? アリスさんは以前にアルヴィスくんの方が強いと、最強だと仰ってましたよね? それって、アルヴィスくんも国を落とせるってことですか……?」


 飛鳥の問いに、アリスが困った顔をする。


「難しい質問をしよるの。我が主さまは一対一では最強じゃ、儂でも勝てぬからの。じゃが攻撃力でいえば儂の方が上じゃと思うておる。我が主さまは護りに秀でてる能力じゃからのう。うーん……難しいのう……」


 頭を悩ませるアリスの表情は、出会ってから今までで1番の悩み顔だ。それほどにアルヴィスの戦闘力を例えに出すのが難しいということだろう。


「い、いいよ俺のことは……! それよりこの後の話をしようぜ!」


 自身も気になるところだが、アルヴィスは結論を聞く前に話を変えることにした。


 聞いたところで戦力が変わるわけではない。それよりも今は兵数を集めることが先決だ。


「そうね。ならギルドに行くのはどうかな? ギルドでならこの都市の情報が多く手に入るはずだし、逆に情報を流すことも出来るしね」


「それだ! ナイスエリザ!」


「えへへ」


 エリザベスの提案により、一同は都市ノクタルにあるギルドに赴くことにした。

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