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孤児の俺と魔術学院生活~人生逆転計画~  作者: 神堂皐月
戦場の歌姫編
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第104話 最強、再び




 エレナとアルヴィスの戦闘は一方的なものとなっていた。


「オラァッ――」


「ぐふっ……!」


 腹部に強烈な拳の一撃を放つアルヴィス。


 2人の戦闘は、アルヴィスが圧倒的な戦闘力で進んでいた。


 アルヴィスの加速によりエレナの槍は触れることすらできず、水柱などの遠距離魔法も全て消されてしまう。


 戦争のような集団戦闘ではないため、今のアルヴィスは魔法を全開で使っていた。


 この数ヵ月、多くの実戦経験と鍛練によって、アルヴィスの魔法師としての実力はかなりのものにまで成長をとげていた。もともとの身体能力が高いアルヴィスに、魔力を操る操作力が加わりつつある今、1対1でまともに渡り合えるのはSランク魔法師レベルの者達くらいだろう。


 エレナも相当に強いのだが、洗脳されている今の状態では本来の実力が発揮出来ていない。そんな状態が、アルヴィスの相手になるわけがなかったのだ。


 だがこの結果には本人であるアルヴィス自身も驚いていた。


(よしっ、この調子ならそろそろ気を失うだろ)


 再び距離を取り、エレナの出方を窺うアルヴィス。


 その時だった――


 突如として施設内に響き聞こえてきた合唱。


 アルヴィスは慌てて後方で待機しているアリシアを見た。


「魔法を発動させたみたいッ! 私がいなくて未完成なはずだからこの施設内のみだと思う! だけど急いで止めなくちゃ!」


「マジかよ!? ってことは――」


 アルヴィスはこれから起きるかもしれない可能性に気付き、耳を澄ませて施設内の微かな変化にも注意を向けた。


「――――……カカッ」


「!?」


 施設内のどこか遠くから近づいてくる、聞き覚えのある笑い声。


「おいおい……それはいくらなんでも冗談キツいぜ……」


 冷や汗を流すアルヴィスの表情に、首をかしげてハテナ顔のアリシア。


「どうしたの? 洗脳が効かない君なら問題ないでしょ?」


「ああ、この魔法自体は俺には問題ねェ。俺には、な……」


「どういうこと……?」


「来たか……!」


 アルヴィスは纏う魔力量を格段に上げ、東西南北4つある出入り口のその1つに視線を向ける。


「カァーカッカッ! 待たせたのうお前さん!」


「ようアリス。まさかお前まで操られてるなんてな。冗談なら止めるのは今のうちだぜ?」


 豪快に笑いながら登場したアリスは、なんとキマイラに騎乗して駆けてきた。


 その姿に、アルヴィスは引き吊らせた笑みを見せながら確認の言葉を発した。


「悪いのう、さすがの儂でも会話だけで精一杯じゃ」


「その割りには楽しそうじゃね?」


「久々のお前さんとの戦闘じゃ。折角じゃから思いきりやってみることにしたのじゃ、カカッ」


「折角じゃねェよ!」


「カッカッカッ。すまんのうお前さんよ。死ぬでないぞ?」


「手加減は……してくれねェわけか」


 アルヴィスは洗脳で全力を出せないという僅かな勝利への希望にかけていたが、アリスが身体を影へと変え始めたことで諦めた。


 エレナのときとは違い、実験段階とはいえ戦略級魔法以上に仕上げようとしている魔法の影響を受けたアリスは、ほぼ全力に近い状態まで出せるようだ。となると、かなり弱らせてはいるがエレナもここからは全力を出せるということになる。


 アルヴィスは前方二方向にいる最悪な仲間の姿に、唾を呑んで覚悟を決めた。


「魔法兵装――〈影纏い〉」


 アリスが身体を完全に影へと変化させると、騎乗していたキマイラを刺し殺して降りた。そしてペタペタと裸足の音を静かに鳴らしながら近寄ってくる。


「30重加速――まずはその影、解かせてもらうぜ」


 アルヴィスは加速魔法を発動させながら、さらに右手に〈時の迷宮〉を発動させてアリスの影化を解こうと試みる。


 刹那的な速度でアリスの背後をとったと同時に、アルヴィスはその場を緊急回避した。


「ほう、やるのう」


「そう簡単には触れさせないってか」


「カカッ。接近してくるとわかっていれば、周囲に予め〈影縫い〉を発動させておくだけじゃ」


「つーかよ、それだけ行動と思考がリンクしてるって、本当は洗脳なんかされてないんじゃねェのか?」


「行動そのものを支配されているというよりも、感情の支配に近い感覚なのじゃ。お前さんをとにかく殺せという憎悪のようなものが流れてくる。だから殺すための手段としての行動なら、少しは自由がきくかのう。といって、手を抜くことは出来ぬがな」


「ったく、それじゃあ俺もほんとに全力でやるしか対抗できねえじゃねェか。――お互い恨みっこなしな?」


「もちろんじゃ」


 ――パンッ!


 アルヴィスは両手を合わせ叩き、加速魔法を解いてその分の魔力を次の魔法に使う。


「〈空間歪曲ディメンションディストーション〉!」


 アルヴィスはアリスを囲むように幾重にも魔法陣を展開させ、周囲の空間を歪め曲げようと魔法を発動させる。


「させぬ――〈影村雨〉」


 アリスが右手を薙ぐように振ると、その手が描く軌跡から玉状の影が群になって散りながら降り注ぐ。


「チッ……」


 アルヴィスは魔法を中断して魔法障壁を発動。なんとか防ぎきると安堵の息を吐いた。


 玉状で打撃に特化した魔法だったのでヒビが入る程度で済んだが、〈影時雨〉のような針状で貫通力のある魔法であれば防ぎ切れなかっただろう。


 避けるか防ぐか、この選択を間違えるだけで致命傷になりかねないアリスの魔法の威力に、アルヴィスは改めて彼女の強さを感じていた。


 ある程度までなら死ぬほどのダメージを負ってもアルヴィスは復活するが、それは魔法によるもので魔力が当然必要だ。つまり回数に限度がある。けれどアリスの不死身の能力は体質によるものだ。つまり魔法ではないので限度がない。


 長引けば圧倒的にアルヴィスが不利である。それに武器も今はアリスの影の中。素手で戦うしかないアルヴィスは、一撃必殺の魔法で無力化するしかなかった。


 だが、発動する前にタメが必要となる強力な魔法は先ほどのように止められてしまう。しかも、アリスは瞬時に強力な威力を持つ魔法を発動できる。


 それを可能としているのが影化である。影の状態であるのとそうでないのとでは、同じ魔法でも威力や発動速度がまるで違うからだ。


(どうする……体力を回復するためか手出ししてこないエレナが参戦する前に打開しないと、さすがに2人相手じゃ絶望的だからな)


「試してみるか……?」


 アルヴィスは1つの方法を思い付き、汗をたらしながらどう実行するかさらに思案しだした。

いつも読んでいただきありがとうございます!


この度新作を同時進行で書き出してみました!

よければこちらも読んでください!

【俺の始まり、或いはキミの終わりを告げる戦場】

http://kasasagi.hinaproject.com/access/top/ncode/n1836ec/

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