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青の羅針儀  作者: 奈木 一可
第一部
76/99

18:命溢るる逆月の泉-01

 改めて眺めてみると、どうにも珍妙な面子だと言わざるを得ない。四人と一羽が円を描くように並んだ一角から周囲を見回し、しみじみと思う。

 半人前魔術師の私。腕利き傭兵のヴィゴさん。私を助けに来てくれた先生(と、その人形)。……それから、潜入捜査じみた状況にある騎士のラファエルさん。百歩譲って、ここまでは良しとしよう。

「改めて、名乗っておこう。私はエレメイと名付けられた、彼の人形遣いの傀儡だ。元はラビヌの国で騎士団長の任を拝していたが、今となってはその肩書にも意味はない。それよりも、君にはこれまで随分と惨い振る舞いをしてしてしまった。謝って済む話ではないが、申し訳ない」

 律儀に言って、寸前までの敵であった黒騎士――改め、エレメイさんは私に向かって頭を下げた。目下最大の難敵と認識していた人だったことを思うと、何とも複雑な気分だ。

「いえ、まあ、エレメイさんがやりたくてしたことでもないですし……」

 肩をすくめてみせると、エレメイさんはますます申し訳なさそうな症状を浮かべる。居た堪れなくなって目を逸らすと、今になってその身を固める鎧の消耗の激しさに気が付いた。

 これまでの戦いの激しさを物語るが如く、黒鋼の鎧はあちこちが破損している。とは言え、何だかんだであの人形遣いもエレメイさんを頼りにはしているのか、以前のヴィゴさんに破壊されていたはずの眼ばかりは、きちんと補修がされていた。私を見下ろしているのも隻眼でなく、きちんと一揃い二つの赤色だ。

 何とはなしに見てみると、その眼を成す鉱石が意外に澄んだ色合いをしていることに驚く。美しいとすら言えるピジョン・ブラッド。かつてアルマで対峙したヤルミルのように濁ってもいなければ、黒く浸食もされていない。もしかすれば、人形遣いはエレメイさんを支配しきれていないのかもしれない。

 ついそんなことを考えていると、自分を見詰めたまま動かなくなった私を不思議に思ったのか、エレメイさんが首を傾げる姿が目に入った。慌てて愛想笑いを浮かべ、話を変えるべく言葉を続ける。

「それよりも、問題は今後の方策です。一番いいのは、エレメイさんを縛る契約を切ってしまうことなんでしょうけど。ちょっと今すぐにって訳にもいかなさそうですし」

 ねえ先生、とすぐ隣に佇む銀の鷲へと水を向ける。別に注目を自分に逸らそうとした訳ではない。そんなに。

 私の内心を知ってか知らずか、鳥はちらりとこちらを見た後で、小さく喉を鳴らした。

『そうだな。術による束縛に加え、名付けによる所有化が図られているのならば、この場でというのも難しい』

 通常の死霊傀儡――と表現するのもおかしいけれど――であれば、対象とする死霊の生前の名前をそのまま使う。生前の名で括ることによって、一度死んで肉体を失ったことで崩れやすくなった死霊の自我を保つのだ。けれど、エレメイさんは敢えてそれをせず、新しく名前を付けられている。

 おそらく、人形遣いにとってエレメイさんの自己意識は邪魔だったのだ。生前の己――亡国ラビヌの騎士団長という立場。死した後でさえ国を守る為に戦い続けた、騎士の中の騎士。その認識を少しでも薄める為に、従わせやすくする為に、新しい名前で縛った。

「なら、これからもどうにか抜け道探して、そこを突いてくしかあんめえよ」

 あっけらかんと言い放たれたヴィゴさんの言葉に、「そうだな」と頷いたのはラファエルさんだった。

「今はライゼルを保護するという名目で我々に同調しているが、敵がひとまずライゼルは脇に置くと決定を下しただけで崩れてしまう脆い同盟だ」

「何にしろ、急いだ方がいいだろ」

 軽く嘆息して、ヴィゴさんが槍を担ぎ直す。銀の鷲とは逆隣に立つ人の表情は、窺うにも容易だ。いつになく険しく、そして渋い。

「本隊の指揮官から連絡が来た。死霊の軍勢もまだ底が見えねえんで、援軍の出しようがねえ。ついでに言うと、そんなだから余裕かましてんのか、敵の指揮官は姿をくらましたとよ。どうせ内応もバレてんだろうし……こりゃあ、こっちに来んぞ」

「そう言えば、さっきまで一緒にいた援護の人たちはどうしたんです?」

「本隊に戻した。どっかの誰かさんのお陰で雑兵が消えたんで、援護してもらう必要もなくなったかんな」

「さよですか、それは重畳で」

「何が重畳だアホ」

 また頭に手が伸びてきそうだったので、さっと身体を傾けて逃れる。

「まあまあ、他の部隊とか、アルサアル王の動きについては連絡ありません?」

「いよいよ立て込んでるみてえだったから、詳しくは聞けてねえ。外側の結界際まで出張ってた連中も残った戦力を掻き集めて、こっちに向かっちゃいるらしい。が、あっちもあっちで人形にまとわりつかれて難儀してるとか何とかだ。的がでかい分、自爆の効き目がありすぎんだとよ。相当数が進軍途中に吹っ飛ばされたそうだぜ」

 淡々とした声で告げられた状況報告に、ぞっと背筋が震える。相当数が吹っ飛ばされてるということは、すなわち相当数が死傷しているということに他ならない。ぶるりと肩を震わせると、小さく喉を鳴らした鳥が、犬の鼻面ならぬ嘴を私の頬に擦りつけてきた。……な、慰められてるんだろうか?

『……今のはこちらの操作ではなく、アクィラの自発的行動だ』

 ぼそりと先生が言う。はあ、と頷きながら鷲の頭に手を置いてみると、目を閉じて掌に頭を押し付けてきた。なんだか人懐こい犬や猫を思わせる仕草で、ちょっとかわいい。

 アクィラが名前なんだろうか――って、そりゃ人工のものとは言え命を造り出され、それを核に持つのが自動人形だ。名前がないはずがなかったか。そう思えば、あの小鳥にも悪いことをしてしまった。いつも先生との通話の窓口みたいに扱っていて、名前も知らないままだった。今度直せたら、改めて名前を聞いてみよう。

 なんて思っていると、今度は逆隣からじとりとした視線が降ってきた。

「んで、エルフ王は敵が増えるのを防ぎつつ、人形遣いっつーか、その上を辿る腹でなんかやってるらしいが――人が説明してる時に何鳥と遊んでんだお前はよお?」

「いやあ、ちょっと出来心で。援軍が期待できないなら、とりあえず泉の傍まで行って番でもしてるべきですかね?」

「であれば、二手に分かれるべきだろうな」

 ラファエルさんの提案に、つい「二手に?」と鸚鵡返しの問い掛けが口を突いて出た。

「そうとも。エレメイ殿はいつまた人形遣いの支配下に戻されるとも分からない。泉には近付けないでおく方が得策ではないかね」

「賛成一票。泉付近への転送魔術はエルフ王が逐一解除して阻んでるっつーが、自前の足で走ってくる奴はどうにもできねえかんな。こうなった以上、泉の傍で守りにつく奴も要るだろ」

「私も異論はない。伏兵や陽動は奴の好むところでもある、守りは固めねば」

 ヴィゴさんとエレメイさんが口々に言う。戦いに通じた二人がそう判断しているのなら、私が言うことは特にない。所詮は素人だし、戦略とかそういうものに明るい訳でもないし。

「じゃ、二手に分かれるとして、どういった組み分けになるんです?」

「何、明快な話だ。君と君の傭兵、それ以外。これ以外に組み合わせがあるかね?」

 にやりと口角を持ち上げて、ラファエルさんは嘯く。私は一瞬、どんな反応をすればいいのか分からなかった。はあそうですか、と頷いてしまうには、兄弟子(仮)の表情が何とも腹立たしい。

『ラファエルの嫌味な喋り口は無視しなさい、いつものことだ。そも、これは純粋に戦力の配分を考えてのことで、他意などあるまいよ。そんなものを挟んでいる場合でもない。もしも敵方の増援が現れ、且つエレメイが再び敵に回ったとしても、アクィラがついていればラファエルが孤立せずに済む。対する君たちも、下手にラファエルと組ませるよりはいつも通りの方が戦いやすいだろう、という訳だ』

 そう語る先生の声は、いつも通りに落ち着いている。言われてみれば、それもそうだった。

 私とラファエルさんでは相互理解が皆無で共闘どころではないし、エレメイさんは泉に近付ける訳にはいかない。いざ到着した時に人形遣いに操られて、泉を占拠でもされたら大問題だ。一方で、その万が一に備えてラファエルさんとヴィゴさんをエレメイさんにつけても、それはそれで戦力が偏りすぎる。私と先生、それにアクィラが待ち構えていたところで、泉を守り切れるかは怪しい。というか、無理だ。

「確かに、そうですね。では、その通りに――っとぉおお!?」

 頷いた途端に、首の後ろを掴まれて身体が引っ張り上げられた。振り返ってみれば下手人は予想通りの人で、槍を持っていない左腕で私を抱え上げると、

「話がまとまったとこで、俺達ゃもう行くぞ。そっちはそっちで頼まあ」

 言うが早いか走りだす。あっという間に加速すると、すぐにラファエルさんやアクィラの姿は木立に紛れて見えなくなってしまった。その上、走りながらとんでもないことを言い出すのである。軽く頭痛がした。

「オイ、泉ってどっちだ?」

「そこ知らないで動き出したんです!? ああもう、あっちですあっち! 東南東におよそ一.五!」

 あっち、と進むべき方角を示しつつ、半ば叫ぶようにして指示を出す。

 幸いにして、アルサアル王に転送してもらった指揮塔でこの辺りの地図は一度見ているし、探索の魔術の作用範囲内にも常に含まれていた。泉の場所までの距離と方角については、間違いなくと自信を持って言える。

 あいよ、と快活に応じたヴィゴさんは私が示す先へと進行方向を修正しつつ、木々の合間をするりするりと抜けていく。この分なら、数分と掛からずに泉に辿り着くことができそうだ。

「余裕があれば、泉の周囲で罠でも張りたいところですよね」

「だな、何か宛はあんのか?」

「一応、案だけならいくつか。ただ、手持ちの石がそう多くはないんですよね。色々考えて用意してきてはいたんですけど、さっき逃げ出す時に最低限しか持って来れなかったので……」

 指揮塔から逃げる時は、援軍を見つけるまで走り回って逃げなければならないと思っていた。だから、用意してきた浄化や魔除けの石も革袋に一つ、ベルトに吊るして問題ない程度にしか持って来れなかったのだ。

「なので、作るとしても人形の接近に応じて柵を出現させるとかが精々ですかねえ」

「精々っつっても、足止めができるんなら充分だろ。数秒だろうと、時間を稼げるのと稼げねえのとじゃ大違いだ」

「だと、良いんですけど」

 そう相槌を打った時、視界が開けて広い空間に出た。

 森の中だということを忘れてしまいそうな、だだっ広い平地。ヴィゴさんが木立の間を抜けて五メートルも歩んでいくと、足元は緑の草地から白い石畳へと変わる。石畳の縁には、さながら緑と白の境界を示すかのように石柱が等間隔に佇立していた。

 落ち着きなく辺りを見回す私とは真逆に、ヴィゴさんは微塵の躊躇いもなく草地を突き進む。歩めば歩むほどに強く鼻先を漂う水の匂いに、知らず息が詰まった。石畳へ足が掛かる段になると、いよいよそれは濃密になる。まるで深い霧か、霧雨の中にいるようだ。

 コツコツと足音を響かせて、ヴィゴさんは更に石畳の上を進んでいく。すると、今度は数メートルも歩かないうちに「それ」が現れた。

「これが、『命溢るる逆月の泉』……」

 一見して、それは地面に埋められた水盤のようだった。話に聞く効能の凄まじさとは裏腹に規模は小さく、直径は三メートル程度。石畳を円く一段窪ませるようにして作られたそれは、中央に私の腰ほどもあろうかという巨大な杯が据えられている。首を伸ばして伺ってみれば、今空に無いはずの真円の月が沈み込んでいた。なるほど、「逆月」の由来はこれか。月の魔力を集めることで、極度に強い癒しの水が生成されているのだろう。

 杯の奥底からは、逆月を透かしてこぽこぽと水が沸き出し、水盤へ滴り出していく。けれど、溢れた水を受け続ける水盤の水面は、不思議と凪いだままだ。循環しているようにも見えないし、それこそ神秘の泉の為せる業というものなのかもしれない。

「思ったより小せえな。これなら守るのもちっとは楽かね」

「そうですね、敵の攻撃も柱の陰に隠れれば、ある程度は防げそうですし」

 ヴィゴさんが石畳の上に下ろしてくれたので、あちこち歩き回ってみながら答える。見通しの良さで分かってはいたけれど、泉の周辺は柱以外の障害物は完全に何一つとして存在していなかった。もう少し身を隠せるものが欲しいのが本音だけれど、無い物ねだりをしても仕方がない。

 とりあえず時間もないし、急ぎ罠を仕掛けてしまわないと……

「ヴィゴさん、近付いてきた奴を個別に足止めするのと、柵とか固定障害を出現させて止めるのとどっちが使いやすいです?」

「その二択だったら……そうさなあ、柵の方かね。長く残る方が助かる」

「耐久性重視、ってことですね。了解です」

 持続性の面で言えば、断然後者の柵の方が上だ。個別対応のは罠にかかった敵が倒れればそれで終わりだけれど、柵なら壊されるまでそこに残すことができる。

 当然ながら、そういった罠を作る為には、石畳よりも草地に基点となる石を埋めた方が効率がいい。使うのは緑泥水晶、それから手持ちに残ったありとあらゆる魔除けと浄化の石。石柱の合間合間にそれらを埋め、そこを始点にして徐々に陣地を広げていく。一通り埋め終わったところで、ひたりと右の掌を草地に押し当てた。

開式(セット)――私の声は魔なる汝を拒み、押し留める」

 パリッと魔力の迸る感触があり、きちんと陣が構築されたことを知る。何だかんだで、罠を張るのもこれで三度目。最初に比べれば、慣れてきた部分もある。その経験則から言えば、手応えはそこそこ。問題の耐久性も、この急場で仕立て上げた割には悪くないはずだ。……まあ、罠が真実有用であるか否かを決めるのは、私ではないのだけれど。

 自負はあれど、不安は消えない。自然と重くなる息を吐き出しつつ石畳の上に戻ると、ヴィゴさんは何やらしゃがみこんで足元を探っているようだった。

「今度は何の調査中です?」

「いや、これ剥げねえかと思ってよ。いざとなったら、足元引っぺがして投げることも有り得んだろ」

「……まあ、そりゃあ使えるなら手段として利用するのはアリなんでしょうけども、ここは森のエルフの聖地みたいな場所ですよ。そう簡単に荒らせるような整備不良は残してないんじゃないですか」

「そうかー、やっぱしかー」

 心持ち残念そうな声で言いながら、ヴィゴさんは立ち上がって辺りをウロウロし始める。少しでも緩んだ場所を探しているのか、はてさて……。

「それより、泉の水を拝借して回復を図った方がいいんじゃないですか?」

「おー、そうしとくわ」

 軽やかに言って、ヴィゴさんは泉の傍に戻り、片膝を突く。血にまみれた手をジャケットにこすり付けてから水面に手を伸ばす姿を横目に、私は私で残る準備を片づけてしまうことにした。

 弓に弦を張り直し、矢筒の中の矢を数える。……十五本。ポケットの中の石だって、今さっき張った陣にかなりの数を使ってしまった。正直に言って、心許ないにも程がある。いざとなれば、矢を作ることも考えておかないといけなさそうだ。

 それから、探索の術式も設定し直さないと。作用範囲は、泉周辺の草地と森の境界から十メートルばかりでいいかな。広範囲探索による事前察知は捨てて、とにかく細かく詳しく調べることを念頭に置く。遠くにいる感知しやすいものより、近くにいる感知しづらいものに気付ける方がよっぽど大事だ。

 そんなことを考えつつ、一通りの準備が終わったところで泉へと向かうべく足を動かす。下手に離れているより、ヴィゴさんの近くにいた方が安全に違いない。

『――ライゼル、ライゼル? 聞こえるか、私だ、ローラディンだ』

 そうして歩き出した時、不意に頭の中に響く声があった。はっとして足を止め、声に出さず問い返す。

『ローラディンさん? 無事だったんですか!?』

『無事ではないが、大事ない。そちらはどうなっている?』

 問いに対する答えには、如実に苦々しげな感情が乗っていた。歯痒さや苛立ちがひしひしと伝わってくる。無事ではないということは、何がしかの手傷は負っているということだ。大事ないという表現を信じるなら、それほどひどいものではないと想定したいけれど。

『こちらも厄介なことにはなっています。泉を守る二重の結界は消失、敵の有象無象が多過ぎて防衛に手が回りきりません。ひとまず、私とヴィゴさんで泉の周囲に罠を張って警戒はしていますが。……そちらの状況は如何です?』

『こちらも似たり寄ったりだ。第一の結界際に布陣していた部隊全てを掻き集めて向かってきたが、人形共の捨て身の攻撃で四割近くが削られた。王は泉付近への敵の出現を阻みつつ、北の悪神の再出現に備えておられる。直接人形共やその操り主を叩くことは望めまい』

『……二度目があれば、多分その瞬間に負けが決まりそうですもんね』

『うむ。四割近く減ったとはいえ、我々も決して寡兵ではない。泉の専守部隊を攻める人形――いや、屍か。その軍勢は、今現在前後で挟撃して殲滅にかかっている。王の御業により、これ以上敵が増えることもあるまいからな。事が成り次第、残存兵力を再編して泉へと向かう。済まぬが、それまで耐えてくれ』

『正直なところ不安半分ですが、とりあえず了解しました。お早い到着を願っていますよ。……ローラディンさんも、お気をつけて』

『そなたもな。ヴィゴにも、努々逸らぬよう伝えよ』

 そこで会話は途切れた。周囲に意識を戻してみれば、突然立ち止まった私をヴィゴさんが不思議そうに見ていることに気付く。

「今、ローラディンさんから連絡があったんですけど」

 言いながら、足早に泉の傍に佇む人に歩み寄る。そうしてざっくりと連絡内容を伝えると、ヴィゴさんは表情を引き締めて頷いてみせた。

「大体は分かった。要するに、こっからはどっちが全滅するのが早えかの消耗戦てこったろ」

 いよいよ終わりが見えてきたな、と呟く声に、私はただ黙然と頷き返す。きっと、表情の強張りなんて少しも隠せていなかっただろう。

「――ま、あれだ。お前は死んでも生き延びさせる。そう心配はすんなよ」

「そんなこと言われても、これっぽっちも嬉しくないんですけど」

 だから、そう言い返したのは、純然たる意地だった。

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