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青の羅針儀  作者: 奈木 一可
第一部
61/99

15:悪魔囁き人過つ-03

 人形の軍勢は、まだ罠には至らない。進軍速度にもさほど変化はなく、陣までは残り数分というところ。黒騎士率いる別働隊はヴィゴさんと数人の樹獣兵で対処中で、罠へと誘うよう、じわじわと後退を試みているようだけれど、中々思うように食い付いてくれない。さすがに十把一絡げの人形とは違うか。

 ……それにしても、ああもう、この待ち時間が、ほんと駄目だ。耐えられない。

「ライゼル、もうじきだ。後少し辛抱せよ」

 ついつい手元の弓の弦を触ったり、ポケットの中の石をざりざりいじったりしていると、ローラディンさんに苦笑まじりの声で言われてしまった。

「そうは言われましてもね、その後少しが大変なんですって。落ち着いて待ってなんていられませんよ」

 答えながら、震えそうな息を吐く。

 地鳴りのような進軍の音は、もう随分と近付いてきていた。実際に音が耳に届くまでになると、嫌が応にも残り時間の少なさを認識せざるを得ない。着々と大きくなっていく足音は、その主が探索の術式で把握している距離よりもずっと近くに迫っているように感じさせて、余計に緊張が高まってくる。

『見ていた限りでは、罠の仕掛けにも何ら問題はなかった。後は時が来れば、自動的に結果は出る。気に病んでも仕方あるまい。我々も考え得る、可能な限りの手は打った。それで尚も破られるのなら、相手の方が上手だったということだ。向こうを褒めるしかない』

 頭の上に乗ったままの鳥が、おもむろに声を上げる。先生はあくまでも罠の敷設に関わるオブザーバー的な立場を貫くことにしたらしく、これまで精神感応ネットワークにも加わらず、沈黙を保っていた。お陰で、随分と久しぶりにその声を聴いたような気がしてしまう。

「そりゃあ、そうやって、どんと構えられればいいんでしょうけど」

 つい眉間に皺を寄せてしまいながら、呟く。

 自分は全力を尽くしたのだから、その上で破られるのなら仕方がない。そう言いきってしまえる自信の程は、少し羨ましくもあり、どこか空恐ろしくもあった。アルマ島王直轄の技師連に名を連ねるくらいの腕利き人形師である先生も、当然ながら自分の術に対して一定の自負がある。もちろん、それには明確な実績や経験に基づく根拠があり、そうでもなければ今の立場にあることも難しいに違いない。

 ただ、やっぱり私はそこまでの自信を持つことはできない。万が一の失敗や、予定通り事が運ばなかった場合のことを考えると、胃がシクシクと痛んでどうしようもないのだ。

「私はそんなに自信家になれないんですよ……」

『ふむ、ではそう言った心構えの点から、一度鍛え直すべきか』

「無事に事態が解決したら、是非とも宜しくお願いします」

 ははは、と強張りかけの貌の筋肉を動かして、何とか笑ってみせて答える。

 そう言えば、クローロス村は冬になると雪も降って寒いけれど、アルマはどうなのだろう。ラファエルさんのアレは方便だったのかもしれないけれど、避暑地に挙げられるくらいなら、やっぱり通年気温は低めなんだろうか。そうでなくて、さほど冬が厳しくないのなら、避暑ならぬ避寒も兼ねて長期休暇の間に弟子入りさせてもらうのも良いかもしれない。

 ただ、夏の終わりかけのアルマは、意外に寒かったんだよなあ。ヴァラソン山だったっけか、あの辺りが特別寒い地域とかだったのなら、まだいいのだけれど。寒い季節にわざわざより寒いところに行くなんて、あんまり嬉しくないお話だ。

「アルマの冬って、こっちに比べて寒いですか?」

『いや、アシメニオスに比べれば暖かい方だろう。少なくとも滅多に雪が降ることはない』

「あ、そうなんですか? じゃあ、また冬の間少し旅行するのもいいかもですね」

 私の緊張を解そうとでもしてくれたのか、それからも先生はそこまで脱線しないまでも、ぽつぽつとささやかな会話を続けてくれた。そうして、落ち着かないこと極まりない時間は刻一刻と過ぎ去り――

「先頭が踏み込んだぞ!」

 その時が、来た。ローラディンさんの抑えた声が言う通りの反応を、私の術も捉えていた。会話を中断し、術へと意識を傾ける。

 怒涛の勢いで、陣の中に雪崩れ込んでくる人形の群れ。恐ろしいことに、その進軍は人間が走るよりもずっと速いけれど、十秒で五百メートルを走破するほどではない。逆に移動速度が遅すぎても、罠にかかる数が少なくなってしまう。現状のこれは、都合のいい速さ、と言って言えなくもなかった。

 人形の軍勢の先頭を意識的に追いながら、頭の中でカウントダウンを始める。十、九、八……

「――起動します!」

 先頭を走る人形が八割がた陣の中を走り抜けたところで、陣が起動した。見立て通りに、タイミングとしてはかなり上手い具合だ。ほとんどの人形が陣の中に入り込んでいる。

 地中の魔力を枯渇させる勢いで吸い上げる陣は、まず地形の改変から始めた。まず陣を敷いた地面が深く陥没し、落とし穴の要領でぽっかりと地表に口を開ける。突然空中に放り出された格好の人形たちは呆気なく、そして当然極まりないことに穴の奥深くへと落ちていく。まだ陣に踏み込んでいなかった人形も、進行方向に突然大穴が出現したからと言って、急には止まれない。走る速度が速ければ速いだけ、その勢いのまま穴に飛び込んでいくことになる。

 それを好機と見てとって、追撃隊を指揮するサヴェラムさんが大音声を張り上げた。

『総員攻撃! 残りの人形を突き落せ!』

 弓矢と投石に加え、シェーベールさんの光が一斉に残る人形の背に向けて放たれる。穴に落とされるもの、そのまま核を破壊されて動かなくなるもの……瞬く間に地上から動く人形は駆逐されていく。

 ――ただ、穴の中に落ちた人形も大人しくしてはいない。下に落ちたものを踏み台に、穴の縁を這い上がろうとしている。けれど、そうは問屋が卸すものか。

「第二段階の起動を確認」

 穴を出現させる為に退かさなければならなかった土は、もちろん消え去った訳ではない。転送の魔術はただでさえ難易度が高いのだし、そんなことをしては元から高い罠のコストがとんでもないことになる。よって、選択肢はその場で再利用する一択のみ。

 ざああっと音を立てて、陣の周囲にうず高く土壁が盛り上がる。高さはおよそ三メートル。その壁でもって、人形の進行方向を塞ぐ。落ちたものは逃さない。逃がしてやるつもりは、端からない。

「ローラディンさん、ヴィゴさんと繋げられます!?」

「無論!」

 短く応じる声が響くや、口早の詠唱。魔力が迸る気配があり、精神感応の回路が接続される感覚。

 それを認識した瞬間、私はまだ姿の見えない彼の人へ向けて呼び掛けた。

『ヴィゴさん、聞こえます!? もうじき、契約切りの罠が発動します。あの黒い鎧の騎士が出てきたんですよね、誘引できそうですか?』

『おお!? 何でお前の声がすんだ!? ――って、んなこと言ってる場合じゃねえか』

 そう言って、一瞬の空白。おそらくは、思案の間。

『あの野郎、どうにもやたら手堅く来やがるから、すぐにってのは難しいわな。前の時と違ってやけに慎重で、そう易々と踏み込んで来ねえ。手っ取り早く言葉で誘っちゃあみるが、期待はすんな。この野郎、何だかんだで腕は立ちやがる。あの人形遣いにとっても、相当の手札だろ。仮にこいつが素直についてきたとしても、飼い主の方で契約切りを邪魔するような手は事前に打ってあるんじゃねえか。俺達にとって都合のいい策なら、あっちが対策をしてねえはずがねえ』

 ヴィゴさんの語り口は、淡々として聞こえるほどに落ち着いていた。

 言われてみれば、確かにその通りだ。あの人形遣いは王都で襲ってきた時も、忠実でない人形を三度叱責しながらも用い続けた。アルマでの騒動や、この国での連続爆破事件のように、容易く人形を使い捨ててきた所業を踏まえれば、異例の措置とすら言える。それだけ手放したくない切り札であるという可能性も、まるきり有り得ないことだとは思えない。

『……ごもっともです。分かりました、騎士はお任せします。が、無理はしないで下さい』

『まあ、元々全部片っ端から叩きのめす予定だったし、変わりはねえよ』

 どこをどう解釈してみても大真面目にしか感じられない調子で返されて、何と言うかもう頭痛がした。ああ全く、と吐き出した嘆息は、残念ながら向こう側には届かない。

『念の為に確かめておきたいんですけど、無謀とか酔狂って言葉知ってます?』

『おう、今初めて聞いたわ』

 返事はきっぱり、すっぱり。あんまりにも歯切れが良すぎて、いっそ清々しいくらいだった。

 ため息を吐きたいのを堪え、会話を聞いてはいるローラディンさんに目を向ける。返ってきたのは、ある程度予想はしていたけれど、やはり呆れたような眼差しだった。

『蛮勇にも程があるぞ、ヴィゴ。敵がその騎士とやらを容易に失いたくないように、我らもそなたを喪う訳にはゆかぬ。契約切りの術式が成り次第、援軍を出す』

 そこまで言って、ローラディンさんは精神感応ではなく、実際に耳で捉えられる声で囁いてきた。

「援軍には我々も加わるぞ。そなたが傍にあれば、奴もそう無理は出来ぬだろう。戦場に近付けるのは本意ではないが、そなたは必ず私が守る。安心せよ」

 願ってもない言葉だった。私が頷き返すのを待って、ローラディンさんは再び精神感応で呼び掛ける。

『ともかく、戦いの最中に邪魔をした。我らが到着するまで、くれぐれも倒れてくれるなよ』

『ハッ、誰に言ってんだ。到着する前に全部ぶっ壊れてねえか、そっちを心配しとけ!』

 相変わらずの自信に満ちた一言をもって、会話は終了した。

 全くもう、とため息の代わりに呟きが零れる。別に信用していない訳ではないけれど、どうしても不安は拭いきれない。未だ、というか、忘れることなどできるはずもない「死」のカードが脳裏にこびりついて離れたないのだ。あの占いだけは、何としても成就させてはならない。

 軽くこめかみを押さえながら、頭を切り替えて罠の方へと視線をやる。幸いにして目を向けた先では、想定通りの光景が広がっていた。音声を介さない会話はほんの一、二分のことだったけれど、人形で埋め尽くされた大穴の外周を土壁で囲いきるには十分な時間だ。追撃隊の掃討も完了し、今や目の届く範囲の地表には動く人形は一つとして存在していない。

「さて、画竜点睛――と」

 いよいよ第三にして、最終段階。仕上げの始まりだ。

 探索の術式越しに、大穴と化した罠の陣の中でバチバチと爆ぜる白光を垣間見る。その光はやがて、罠の基点となった緑柱石に込めたものとそっくり同じ魔術陣を描き上げた。地中から吸い上げられた魔力の残る全てを喰らって、光り輝く陣が起動。余りにも大量の魔力が作用しているせいだろう、ある程度距離を取っているこの場所にいてさえ、全身が細かく揺さぶられているような感覚に陥る。

 ――そして、その瞬間。

 まるで太陽が落ちてきたような、凄まじいとしか言えない光景だった。地中深くに穿たれた穴の中から、眩い光が爆発的な勢いで迸る。視界を一杯に覆い尽くし、天を突き、空を焼くような真っ白い閃光。

 余りの規模と眩しさに、自分が仕掛けたことでありながらも呆然としてしまった。

『驚いている余裕はないぞ。人形の反応は?』

 頭の上からまた声が聞こえて、はっと我に返る。慌てて罠の大穴へと意識を戻すと、ついさっきまでがりがりと穴を囲う壁に爪を立てて登ろうとしていた人形たちが、ことごとく電池の切れた機械のように微動だにせず積み重なって倒れているのが感じられた。核は生きているけれど、その中には何もない。

 本来吹き込まれているはずの擬似生命も、今回押し込められていたはずの死者の魂も。

「今、確認しました。問題なし、穴の中の人形は全て行動不能です」

『よし、ひとまず作戦は成功だな。ここまでくれば、後に残ったものを回収するにしろ破壊するにしろ、君の管轄ではあるまい。次の行動に向けて、用心したまえ』

 次、と言われてぎくりとする。そうだ、急いでヴィゴさんの援護に行かないと。

 手に持っていた弓矢をしまい、樹上から飛び降りる準備をしながらローラディンさんを見やる。と、手振りで待つよう制止された。

「待て、今サヴェラムと話をしている」

 どうやら精神感応で対話中らしい。それなら、下手に急がせる訳にもいかない。

 じりじりと急く心までは抑えられないけれど、黙って会話の終わりを待つことにした。逸って二人で駆け出しても仕方がない。きちんとした援軍を、対抗できる戦力を連れて行かないと。ローラディンさんはともかく、私はまたただの足手まといになってしまう。

「よし、待たせたな。無事に話はついたぞ。この場の指揮はサヴェラムに任せることに決まった。我々は動員できる樹獣兵を率いて援護に出る。ライゼル、そなたは私の樹獣に乗って行け」

 短い間の後、そう言うが早いかローラディンさんが枝から飛び降りた。いきなりの行動に、ぎょっと眼を見開いた私が悲鳴を上げるよりも早く、舞い落ちる羽根か木の葉のように軽やかな着地。ああもう、びっくりしたなあ……。

 私達が足場に使っていた枝は、何だかんだで地面から結構な距離がある。しばらく潜んでいられるだけの頑丈さと、周囲には身を隠せるだけの枝葉がなければなければいけなかったので、四苦八苦しながら太い枝を求めて上に上にと上ったのだ。――で、何を言いたいかと言えば。

 端的に言って、ちょっと高すぎたのである。上った時は夢中でそんなに意識しなかったけれど、思いの外に高い。思わず、枝を蹴って宙に飛び出す一歩が止まるくらい。もたもたしてる場合なんかじゃないのは、分かっているのだけど。

「ライゼル? 何をしている、早く降りて来ぬか!」

 なのに、心の準備もできる前から、下からは急かす声がするのである。ああもう、こういう時こそヴィゴさんが傍にいてくれたらいいのになあ!

「そう急かさないで下さいってば!」

 けれども、不在なものは仕方がないのである。頭の上の鳥が小さく笑う声を伝えてきたような気がしたのは、全くもって気のせいだと無視しておくことにして、軽く深呼吸。

「今行きます!」

 ええいままよ、と一思いに枝を蹴ってジャンプ、飛び降りる。足元から吸い込まれていくような、背筋のぞっとする落下感。そして、ほんの瞬き分ほどの空白時間があり――先に降りて来ていた人とは比べ物にならない、ざしゃりと土を踏みにじる音。

 何だかんだで、私も昔に比べれば頑丈になったということなのだろう。どうにかこうにか、としか言えないレベルではあったけれど、何とか着地を決めることができた。幸いなことに、足を捻ったりも、転んだりもしなかった。ただ、じーんとした痺れが足の裏から太ももへと這い上がってくるのばかりは、どうしようもない。ぞわぞわとした、くすぐったくもあるような感覚を振り払う為に二度三度と足踏みをしてから、ローラディンさんの傍に歩み寄った。

「樹獣兵の人たちとは、どうやって合流する予定です?」

「我々が先行していれば、追い付いてくるだろう」

 あっさりと言いながら、ローラディンさんは手早く樹獣を作り出していく。それは援護隊を率いるとは言わないんじゃないかしらんと思わなくもないものの、まあ、結果として追い付いてきた部隊と行動を共にするのなら問題はない、のかな……。たぶん。

「ヴィゴの方の様子はどうだ?」

 瞬く間に造形を終えた樹獣の背に、ローラディンさんがひらりと跨る。私もまたその後ろに続くと、ほどなくして植物で形作られた獣は颯爽と走りだした。

「味方の弓兵が上手く相手を牽制してくれているようなので、今のところ大事はなさそうです。敵の数も減らせているみたいですし」

 初め十数体の群れだった相手方も、今や動けるものは八体ばかりに減っている。行動不能に陥っているものも、四肢を破壊されて物理的に身動きが取れないようにされているものがほとんどで、核を破壊されているものは少ない。きちんと情報が伝わっているらしいことに、ほっとする。

 黒騎士率いる別働隊の人形が、ついさっき罠にかかったものより個々の質が高いのだとすれば、安易な破壊こそ避けた方がいいのだ。核を破壊したところで、契約を切らなければ別の素体での戦線復帰が可能だと想定される以上、多少の時間稼ぎにしかならない。手間がかかるとしても、手強い人形こそ確実に契約を切って戦線離脱させてしまわないと。

「先生、人形に直接接触しての契約切りとかって、私でもできます?」

『不可能ではないが容易でもない、と言ったところだ。君は子供の割によく使うが、さすがに本職には及ばない。骨の折れる仕事になるだろう。件の陣を封じた緑柱石が余っていれば、いくらか楽になるが』

「……未加工の石なら、多少残ってるんですけど」

『ならば、力技でいくしかない。単純に死霊を捕えている契約術式に干渉し、破壊する』

 頭上の鳥は簡単そうに言うものの、敵勢の精鋭となれば束縛する術式もより強固に精密に施されているに決まっている。さっきの軍勢は、一種の働き蟻的な――最も数の多い歩兵だったから、さほどの抵抗もなく術が効いた側面もあるはずだ。それに魔力溜まりという地の利と、時間をかけて周到に用意した石や魔術陣の補助要素もあった。

 これからは、そういった助けが何一つとしてない。自前の魔力と脳味噌だけで、果たしてどこまでやれるだろうか。とてもじゃないけれど、省エネとか言っている場合じゃなさそうだ。

「とりあえず、やれるだけやってみます」

『くれぐれも無理はしないように』

「そりゃあ、もちろん。私だって我が身は可愛いですからね」

 だといいが、とはため息まじりに。信じているんだかいないんだか、みたいな調子だ。

 どうも先生の中では、私は少なからず無茶をしたがる傾向にあるというか、自己防衛に難があるタイプだと認識されているような気がする。今回はまたまたま事情が特殊だっただけで、本来は全くもってそんなことないのにな。

「ライゼル、その点においては私も同意するぞ。ヴィゴのような蛮勇を振るわれても困る。契約を解いて死人を解放できずとも、破壊することで少なくともその時点の戦場から退けることはできるのだ。対するそなたには、代わりなど居らぬのだからな。身を削りすぎてはならぬぞ」

 挙句の果てに、ローラディンさんに至極真剣な風で言われてしまった。

「そんなこと、しませんって」

 一体私はどんな風に思われているんだろうか。全くもって心外である。

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