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青の羅針儀  作者: 奈木 一可
第一部
36/99

08:力無きものたちの為に-05

「癒しの泉を島王が欲しがってるって話は、前にじいさまから聞いてた。でも、じいさまはずっと断り続けてたし、第一、主が所有権を持つってのも、本当は逆なんだ。主が泉を所有するんじゃない。泉が主を選ぶんだよ。泉に選ばれた主が館を捨てれば、泉も枯れる。でも、王は――王の兵もそれを知らなかったし、言っても信じなかった」

 時々声を詰まらせながら、ヴァネサは訥々と喋った。その話を隣の椅子に座って聞いていた私は、何とも頭の痛む思いで一杯である。

「それで、子供たちを連れて行って、どちらか選べと?」

 もういっそ目眩さえ感じてしまうような気分で問いかけると、ヴァネサは疲れ果てた表情で頷いた。これだけ距離が近いと、嫌でもその憔悴の程が分かってしまって、非常に胃の中がむかむかする。

「そう、泉の所有権を渡せば、街に家を用意して、資金の援助もしてくれるって」

「まあ、そこだけ聞けば悪い話じゃないんだろうけどねえ……」

 答えながら、ため息が口を突いて出た。

 全くただでさえヤルミルの問題もあるのに、どうしてこうも厄介ごとばかり重なってくるものか。ヴァネサにしても、困惑するしかなかったに違いない。これまで暮らしてきた館を離れるのは単純に嫌だろうし、そもそも館を捨てた時点で泉は枯れるのだから、選びようがない。

「あの自動人形の坊主がこの館に近付く奴に反応してたのは、それが原因か?」

「え?」

 不意に、近くの壁に寄り掛かって話を聞いていたヴィゴさんが声を上げた。思いもしない言葉に驚いて振り返ってみれば、

「ほれ、この前二度目にやり合った時によ。言ってたろ。館に近付くものは許さねえとか、館を狙うものは許さねえとか」

「あ――ああ! そう言えば!」

 思い出した、言ってたそんなこと!

「何者かの思惑によって狂わされているのなら、確かにこの館まで私達を追ってきたのは明らかな逸脱行為。狂っているけど、多分、狂いきっていない。寧ろ、目的を果たす為に進んで施術を受け入れた可能性すらあるかも。……ヴァネサ、ヤルミルがその話を先に聞いていた可能性はある?」

 ヴィゴさんに向けていた顔を戻して尋ねると、ヴァネサはきょとんとした表情を浮かべながらも、何やら考え込む風を見せた。

「あの大雨の日の……確か二日くらい前に、街に毛皮を売りに行ってたと思う」

「大雨の二日前……となると」

「騒ぎが起き始めた後だ。戦場で兵士の消耗を減らすにゃあ、腕のいい治癒魔術師が不可欠だかんな。その代用に泉を欲しがるのは、そりゃ当然の考えだろうよ。しかも、敵は疲れ知らずの自動人形と来てる」

 泉の待望論が持ち上がるのも無理はない、か。ああもう、本当に厄介な時にこの島に来てしまった!

「とりあえず、泉の選定についての話を聞いてもらわないと……」

 或いは、ここでこそ「アシメニオス王国王立魔術学院首席」の肩書を生かすべきなのかもしれない。ヴァネサに選択を迫ったということは、後でそれを確かめにも来るはずだ。それまで泉の維持構造を調べ上げて、その時に説明するしかない。

「ヴァネサ、話を持ってきた王の兵? は、また来るよね? いつ?」

「み、三日後って言ってたけど……」

「だったら、これから三日の間の泉の維持構造を解析して提示、所有権の譲渡が不可能だと突き付けるしかないね。話して無理なら、証拠を叩き付ける。こんな時なら、私の肩書も生きるだろうし」

「肩書?」

「ああ、いや、こっちの話。とりあえず、そういう訳だから、二日三日滞在させてもらっていい? 費用は払うから、その間食事とかももらえると助かるんだけど」

「そりゃ、願ってもないことだけど――」

「良かった! じゃあ、そういうことでお願いね。早速だけど、私は泉を調べてくるから!」

 事態は一刻の猶予も許されない。そう言うだけ言って、私は食堂を飛び出した。



   * * *



「……ったく、勝手に決めて飛び出してきやがって」

 言うだけ言って飛び出して行ったライゼルが開け放った扉を一瞥し、ヴィゴは軽く息を吐いた。がりがりと頭を掻いていれば、テーブルでぽかんとしていたヴァネサと目が合う。

 涙の痕も濃い、年若い娘。無骨な傭兵には、何とも扱いかねる存在である。

「まあ、何か災難だったな」

 そそくさとした感が否めないものの、そう声を掛けてヴィゴもまた食堂を出ようとする。いや、別にこれは逃げるとかそういう訳じゃねえぞ。あいつは一度何か熱中すると飯を食うのも忘れてのめりこみやがるから、お守りが必要なんであって――などと、その脳裏では聞かれてもいない言い訳が漂っていたが、ふと「ねえ」と呼び掛けられるに至り、思考と共に足も止まった。

「……おう、何だ?」

 半身に振り返れば、ヴァネサの困惑したような表情が見えた。

「ひょっとして、ライゼルは大層な身分のお嬢様なの?」

 予想外の言葉に、ヴィゴは思わず二度三度と瞬く。ややあってから、肩をすくめてみせた。

「んにゃ、当人曰く『平民のサラブレッド』らしいぜ」

「じゃあ、肩書って――」

「そいつは俺が勝手に喋っていいことじゃねえやな。知りたきゃ、後で本人に聞いてみろよ。あいつが教えて良いと思ったら、そん時ゃ教えてもらえんだろ。――ああ、前に借りた部屋使っていいか?」

「え。ああ、うん、好きに使ってくれていいよ」

「あんがとさん」

 言うだけ言って、今度こそ食堂を出る。泉のある裏庭に通じる道筋は、前回の滞在の時に教えてもらっていた。すぐに向かうこともできるが、折角部屋を使う許可を得られたのだ。先に荷物を置いて身軽になった方がいいだろう。

 ヴィゴは当初の予定を変更して歩き始めたが、次第にその表情は苦々しいものになった。子供の声がないだけで、これほどまでに寒々しく感じるものか。暗い廊下は、どんよりと暗雲に沈んでいるようにさえ感じられた。これでは気も滅入ろうし、嫌な方向へと思考が落ち込んでいくのも已む無しというものだ。

 重苦しい息を吐きながら目的の部屋に着くと、幸い窓から入る陽光で室内は明るかった。ほっとした気分で荷物を置き、軽く中身を検める。食料はもちろんだが、それ以外にも不足しているものがあれば、この機会に補っておかねばならない。ざっとそれらの目星をつけてから、ヴィゴは再び陰鬱な趣の廊下に戻った。やはり、部屋の中の明るさが嘘のように暗い。半ばうんざりして足を進め、やっとのことで裏庭に出ると、降り注ぐ陽光の暖かさと解放感とが相俟って深々とした息が漏れた。

 気を取り直して辺りを見回すと、見慣れた背中が泉の傍で何やら座りこんでいる。ちょうどヴィゴに背中を向けている格好なので細かな様子はうかがえないが、周囲にはインク壺やら羽ペンやらの筆記用具が散乱しているところを見るに、既に調査に入っているらしい。裏口の扉の開閉する音は確かに上がったはずだが、ぴくりともしない様子からすると、ヴィゴの存在に気付いているかも怪しいところだ。

 とは言え、何か特別な話や用があって追ってきた訳ではない。調査を邪魔しては本末転倒、ヴィゴは近くの壁際に置き捨てられていた木箱を椅子代わりに腰かけることにした。槍を抱えるようにして腕の中に置き、軽く壁に寄り掛かって辺りを見渡す。泉への侵入を阻む為だろう、広い裏庭は高い塀で囲われている。早々危険もありはしないだろうが、周囲の警戒も護衛の仕事の内だ。



   * * *



 いつの間にそんな時間が過ぎたものか、羽ペンで書きつける巻紙が赤く染まっていた。はっとして空を見上げれば、すっかり赤と紺のグラデーションに染められている。これでは日が落ちるまで大した猶予も無さそうだ。これ以上屋外で作業をするのも難しそうだし、泉の傍の土と水を採取して、後は中で作業することにしよう。

 手早く採取を終え、荷物を纏める。ずっと座り込んでいたせいで、今になって腰とお尻が痛い。次は座布団か何かを用意しようしないと。そんなことを考えながら、よっこらと腰を上げ、振り向いた――ら。

「よう、お疲れさん。今回はちゃんと引き際わきまえてたみてえだな」

 良かった良かった、と快活に笑う人。かぱっと自分の顎が落ちるのが分かった。

「ゲッ!? ヴィゴさん、いつからそこに!?」

「人の顔見て『ゲッ』たあ、失礼な奴だなお前はよ。いつからって、そりゃずっとに決まってんだろ」

「いや、だから、そのずっとはいつ!?」

「お前がここに来て五分くらいじゃねえ?」

「うっわ、そんな前から!? まさか、ずっと見てました!?」

「誤解されそうなこと言うなよな。周りを警戒してたんだよ」

 まだ騒ぎも解決してねえしな、とヴィゴさんは言う。いや、まあ、それは……その通りなんだけども……。

「声掛けてくれたら良かったじゃないですか」

 溜息を吐きたいのを堪えつつ、鞄を肩にかけてヴィゴさんに歩み寄る。

「邪魔したら悪いと思ったんだよ」

 言いながら、ヴィゴさんは近寄った私に手を伸ばしてくる。今さっき掛けたばかりの鞄の持ち手を掴まれたかと思うと、するりと腕から抜かれた。なんか手馴れているなあ、と一抹の反発感のようなものを覚えなくもなかったことは無視することにして、まるきり何でもないことのように私の鞄を自分の肩に掛けた人を見上げた。

「ヴィゴさん、荷物は?」

「借りた部屋に置いてきた」

 行くぞ、と促されたので、大人しく歩き出す背中に続く。数歩分先を歩いていたヴィゴさんはやはり裏口を開けて待っていたので、少し早足になって扉をくぐった。私が先に中に入ると、その後に足音と気配が続いてくる。

 そのまま並んで、歩きながら話をした。

「何か分かったか?」

「微妙なところです。泉を作った魔術師は、ほんとにとんでもない凄腕だったみたいで。言われてることは何となく分かるけど、理解できないし信じられないって気分です」

「真似られる気はしねえ?」

「逆立ちしても無理でしょうね」

 魔術には確信が不可欠だ。聞くところによれば、大成する魔術師は八割が自己陶酔型の極度の自信家で、残り二割が構築した術の理論を信奉するガチガチの学者肌なんだとか。要するに、自分と自分の術にどれだけ自信があるかが関わってくる。

 自分から魔術師を志望しておきながらなんだけど、それは割と私にとって致命的だ。今まで勉強してきたことや、経験を踏まえれば一定の自負はあると思うけれど。どうやったらそこまで強固に自分を信じ込めるのか、その心境が全く理解できない。

 はふ、と息を吐き出すと、頭の上に大きな手が載るのを感じた。

「まあ、その辺は別にいいんじゃねえの? 結局、この泉はヴァネサがここに居なけりゃ枯れるって証明できりゃいいんだしよ。下手に泉の作り方なんざ分かっちまったら、また厄介なことになんだろ」

「ですかねえ……。こうなったら、ヴァネサ自身の方を調べてみましょうかね。泉の選定を受けたのなら、多分何がしかの契約が成立してるはずですし」

 夕食の後にでも、少し時間をもらおうかしらん。それで何か得られてもそうでなくても、今夜中にある程度の筋道を立てておきたい――などと、考えていたらば。

「そりゃいいけどよ、徹夜とかすんなよな」

「……え? あっはっは、まさかそんなことする訳ないじゃないですか、はっはっは」

 答える声が、うっかり空々しくなってしまったけれど。いや、気のせい、実に気のせいである。図星だったとか、そんなことは言わない言えない。

 そして頭の上の手が不穏に頭蓋骨を掴んでくるのとか、ははは、気のせいなら良かったんだけどなあ! ほんとに!

「……お前よお」

「待った、ちょっと待った! 誤解、誤解ですよ。人の言葉を疑うのは良くない!」

「そういうお前が疑わせてんだよ、このアホ!」

 そう言って、頭を掴んでいた手が離れたかと思うと、チョップが落とされた。そんなに痛くはなく、衝撃だけだったのは、多分まだ警告だか忠告だかだからだろう。

「ヴィゴさんは割と過保護ですよね」

「誰が過保護だってんだ。そうしなきゃならねえじゃじゃ馬がいるからだよ」

「失敬な! 私はこれでもギリギリのラインは、割と、えー、まあ、それなりに見極めてますから。大丈夫ですって」

「そのどこが大丈夫なんだよ、お前はほんとに頭は良いのにアホだな」

「さっきから人のことをアホアホ言い過ぎじゃないですかね!?」

「本当のことだから、しょうがあんめえ」

 おのれ、すっぱり言い切ってくれよってからに。

 何か言い返してやろう、と口を開きかけた瞬間、

「世話あ焼かれんのが癪なら、もちっと気い付けて動けや。仕方ねえだろ、俺は俺でお前が大事なんだかんな」

 ……そんなことを急に、しかもさらっと言ってくるので。ああもう、こんにゃろう。

「さよですか」

「おう、そういうこった」

 けろりとした返事は、まるで何も気にしていないよう。私が地味にじわっと反応しているだけらしい。それが経験の差だと言うのか。私だって今は十七歳だけど、その前に二十三年生きたのにな!

 因みに、泉から引き上げてそのまま向かった食堂では夕食の準備ができており、

「ライゼル、なんか顔赤くない?」

 と、ヴァネサに言われたりもしたけれど。

「赤くない。全然赤くない。熱もない。万が一赤くても、夕日のせいか日焼けだと思う」

 そうやって全力で否定する私の隣で、認めたくはない事態の元凶は会話そっちのけでもりもりご飯を食べていたので、出来るものならその脚を蹴ってやりたかった。


 ソイカ氏から久々の連絡があったのは、その日の夜のことだ。

 食後にヴァネサを少し調べさせてもらって、やはり泉との間に縁が結ばれていることを確認し、さてそれをどう泉の維持と関連付けて証明するか――と悩みながら部屋に戻って間もない時のこと。

 俄かに鞄の中から飛び出して部屋の中を飛び回り始めた銀の鳥に驚いて、隣室のヴィゴさんを呼んで。そうしてお互いの状況をざっと説明してから、何日ぶり彼の会談は始まった。

『結論から言うと、北方で回収されたと思しき魔石の反応は島内になかった。いずこか、持ち去られたようだ』

「うーん、やっぱりそっちでしたか……」

『ああ。王宮でも魔石の行方と追跡を巡って、議論が紛糾しているらしい。持ち出された魔石の為に、余所で狂った人形の軍勢が再編成されても大事だ。――その上、ハント嬢の懸念も部分的に当たっていた。連中は石切り場の石でゴ―レムの素体を作り、核を植え替えて壁役を増産している。今や鉱山はゴーレムの壁に守られて、様子を窺うことすら容易でない有り様だ』

「鉱山にこもってる連中は、あれか、魔石掘り出し続けてんのか」

 ヴィゴさんが問うと、銀の鳥は苦々しげな溜息を吐いた。

『その通りだ。連中の目的は、全て魔石にあったらしい。……ところで、ラファエルが王宮に上がったそうだな?』

「ええ、はい……。私達の代わりに」

 身代わりにしたことを責められるだろうか。責められて当然だとも思うけれど、嬉しいことではない。自然と低くなる声で答えると、『あれもきちんと役に立ったようだな』と全く考えもしない返事があった。

「え?」

『君たち二人がこの状況で有用やもしれんとは言え、あれの肩書と身分は別格だ。王の使者に追い付かれてしまったとしても、君たちとあれとを比べた場合、王は間違いなくあれの方を求めると思っていた。あれがいれば事件の解決も早くなろうし、アシメニオスにしても、事件の詳細を知ることができる。どう転ぶとしても、それなりにそれぞれが利を拾えるならば、角も立たんだろう』

 その意味でうってつけの駒だと思い、派遣することにした――とソイカ氏は平然と言った。なんと、それは見事な。そんな意図があったとは。

「ははあ……お陰で助かりました。ありがとうございます」

『いや、こちらこそ上手くアシメニオス一の騎士を公に手駒に組み込むことができた。君のお陰だ』

「私は何もしてませんよ。……それで、そちらの方は無事に片付きそうですか?」

『明朝、ラファエルが先頭に立って軍が制圧に出ることが決まったそうだ。何事も異変がなければ、そう長くはかかるまい』

「なら、後はどれだけ魔石の持ち逃げを防げるか、ですね……」

『君ならば、どうやって魔石を移送する?』

 問われたので、以前ヴィゴさんにも話した移送方法の推測をざっくり説明すると、同意を示すかのように銀の鳥は頭を上下させてみせた。

『やはり、そうなるか。転送、召喚、自動人形の利用――我々もその三案に絞っている。幸い、今は魔石も鉱山周辺に密集していることが分かっている。いざとなれば、一帯を結界で封じて転送を防ぐつもりだ』

「なるほど、それなら十分に対応できそうですね」

 ソイカ氏の落ち着いた話しぶりからするに、街の方は随分と余裕がでてきたようだ。ラファエルさんが加わったことで戦力が増強されたお陰だろうか。既に戦勝気分でいるのでなければ、歓迎したいところだ。それでソイカ氏が自由に動けるようになっているのなら、尚いい。

 できることなら、ソイカ氏には少し探りを入れて欲しい。泉の接収に関して、王の側の出方や、正確な情報を得ておきたい。選択肢が広がるかは分からないとしても、持っている情報――手札は多いに越したことはないのだし。

『ああ、こちらは問題ない。……しかし、昼間奇妙な噂を聞いたのだが。島王の指示で癒しの泉の館に兵が出入りしているとか。君たちはちょうどその館に戻ってきているのだろう。何が起こっている?』

 言おうと思っていたことをタイミングよく先回りされた格好で、つい苦笑が浮かぶ。

 ちらりとすぐ近くの壁に目を向ければ、寄り掛かったヴィゴさんが立ったまま舟をこいでいるような――というのは、この際見なかったことにしよう。思うところがないではないけれど、今そこを突っ込んでいる場合じゃない。

「そうですね、ひどく厄介なことになっています――」

 視界の端の揺れる頭に何か投げつけてやりたい気分を呑み込み、私はソイカ氏にこの館の入り組みまくった事情をここぞとばかりに打ち明けたのだった。

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