赤い壁と一人の少女
ここはどこだろうか?左目に眼帯をつけた高校生、赤羽 真<あかばね まこと>はその場にうずくまっていた。眼帯を付けているのは目を怪我したわけでも、ましてや、邪王から力を授かったという訳でもない。ただ、昔からこの目のせいで周囲から罵声を浴び、非常に生きにくくなったので、どうしようかと妹に尋ねてみると、「眼帯とかで隠したらいいんじゃね。」という提案により、今の状況に至る。そんなことはどうだっていい。今は、先ほどまで俺はなにをしていたかをおもいだせ。確か・・俺はダンボールに入った猫が流されているのを見かけて川に飛び込んだ。そこまでは確かに覚えている。しかしこんなところに来た覚えもないしここがどこだか俺にも分からない。気が付いたらここにいたそんな感じだ。あたりを見回してみるとドアが一つと、赤く薄汚れた壁の続く廊下があった。先は真っ暗で、何も見えない。ここは地獄で、今から俺は罰せられるのだろう。コツンコツンと誰かがこちらに向かってくる音がした。罰せられるのが怖い。そう思うと体が震えてきた。気が付くと、俺は必死になって謝罪をしていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・・・・」
その足音のは俺の目の前で立ち止まった。これで、もう終わりだ。そう諦めながら顔を上げるとそこには、一人の赤い目をした少女が立っていた。少女はおもむろに口を開くと、
「何を・・謝ってるんだ?気でもふれたのか?」
「えっと・・」
「それもそうだよな~こんな薄気味悪い所に無理矢理連れてこられて、そんで、今はどういう状況でしょうかって言われても分かる訳ないもんね。ははっ。」
少女はそう言うと、そっと手を差し伸ばした。俺はその手を掴んだ。そして、少女に導かれるがままに歩いて行った。まるで、迷子になった子供みたいに。高校生にもなってこうやって手を引っ張られるのはどこか恥ずかしかった。惨めで、情なかった。
「着いたよ。」
少女は小声でそう俺にささやくと、曲がり角の先を指さした。そこには黒いマントを羽織った何かがそこに立っていた。
「あいつ、殺せる?」
突然の物騒発言に驚き「ふぇ!?」と声が裏返ってしまった。なんだよ、殺せるかってどういうことなんだよ?状況がまったく把握できない。声にならないような声で、
「殺せるって、どういうことだ?」
「そのままの意味だって。さ、さ。」
「ちょ、ちょっとまって!」
背中を押され、黒マントの前に躍り出る。黒マント達はその様子に気づいたのかこちらを振り向くと、後ろに飛び間合いをとった。
「おーい。。私はここで見てるから、頑張れよ。」
声のした方を振り返ると、椅子に座って呑気に紅茶を飲んでいた。唖然とした表情で見つめていると、体に衝撃が走る。気づくと、先ほどまで正常だった視界がいつの間にか横になっていた。そうか、今俺は倒れているのか。体が重さを感じている。つまり今、奴は、俺の上にいる。視線の先を黒マントにむける。黒マントは自分の体の中に手を突っ込むと、拳銃を取り出して俺の顔にむける。これから死ぬというのに俺は、あの黒マントの体はどうなっているんだろうなんて呑気なことを考えていた。
「おいおい。早くどうにかしないと死んじゃうよ~。助けてほしいのなら、助けてって言わないとね。それについては条件があるんだけどね。」
「条件?なんなんだよ、それ。早く教えろって。だから、早く助けてくれ!」
「条件はね。うちの店がちょっと人手不足でね。そこでだね。助けてやるからうちの店で働くってのはどうだい?美味い話だと思うんだけどね。ま、君しだいだよーん。」
「いいから、なんでもするから助けて!!」
「頼まれたからにはやるしかないなー。」
一瞬の出来事だった。あまりのスピードで理解するのに少々時間がかかった。今さっきまで俺の上にいた黒マントは壁に打ち付けられもはや原型をとどめていなかった。突然少女は携帯電話を取り出した。
「ターゲットに会って来て、交渉は成立させたんだけどさ。ほんとにこいつでいいのか?まあ、よくわかんないけど、こいつを連れて来ればいいんだな。・・・ったくめんどくせえな。私の名前は、黒鳥 美咲<くろとり みさき>だ。よろしくな。」
「赤羽 真。よろしく。」
そうやって自己紹介をして立ち上がった。
「それじゃあ、ちょっとついてきて。」
そして、案内されるようについていくと、最初にいたドアに行きついた。ここはさっきまでは開かないはずだった、あのドアが今はいとも簡単に開いた。ドアの向こう側は、飛び込んだ川の近くの橋の下に続いていて、あたりは夕焼け色に染まっていた。




