第2話 バーコード
ぬ
朝の静かな駅のホーム。相も変わらず人が少なく私は先頭で電車を待っている。隣もいつも通りの男子大学生。澄ました顔をしているが実態は犯罪者予備軍に片足を突っ込んでいる。
さて、今日も心の声聞いてみましょうか。
横目でチラッ。
(やっぱ朝の空いてる時間はいいなー…あの混雑は懲り懲りだ)
あーわかる。私もこうゆうことがあって、起きれる時間の中で一番空いてるこの時間にしたんだ。続きをどうぞ。
(今日の昼飯どうしようかなー…唐揚げ定食or生姜焼き定食。迷うな〜)
私は自分の爪の伸び具合を確認する。
国内にいんなら相場『or』じゃなくて『か』だろと些細なこと以外で、得に過激的思考は確認できない。
まぁ、毎朝そんなこと考えてたらイっちゃてる人だし当然か…
眉が下がるのを感じながら再び横目を向ける。
(滅ぼッッッッッッッッッしてやるよ!!残り少ない生き残り全部!!)
イッちゃてる人じゃないか。
でも、待ってはいたから嬉しい。
生き残りって一輪車で騒音起こしてた連中のことかな?いや、一輪車で暴れる大の大人はそもそも種族として登録されていないか。
(あのバーコード野郎…レジを平気な顔で抜かしやがって)
私は天井を見上げる。
生き残りって両岸⦅複合した髪⦆を繋ぐために並べられたハシゴ⦅単一の髪⦆のことか。ハシゴは種族として登録されててもおかしくないな。まぁ、レジを抜かすのは良くないことだが、私のパパもハシゴ所持者だから撤去されるのは少し悲しい。
私は横目以下略
(2回目だぞ…普通やるか⁇やらねーだろ!!店出るスピード2回目の方がゆっくりなのがより僕を⤴︎⤴︎)
たぶん舐められてる。
確かにかなりムカつく案件だ。
まぁ、そうゆう人は自分よりも若いだとか、大人しそう人だったら何も言ってこないと思ってるし、実際その通りになってる。
悪い成功体験をしちゃってる人だ。
(もう1回やってみろ、3度目の正直だ。目の前のレジでテメーの頭のバーコード読み取ってやるよ!!価値は53円でそのままゴミ箱いきだろうなァァァ!!)
私は口を指先で覆う。
絶好調だ。これは1回やられたときから得物を研いでいたんだ。
よろしくないことは重々承知なのだが、3回目きてほしいな。
また隣で磨き上がったものを見せてくれるか、隣からいなくなってテレビで見ることになるのか楽しみだ。後者なら、ポップコーンとジュース持って裁判見に行こう。
(けど、あのくたびれたスーツ…ちゃんと働いてるんだよなぁ)
!?
(バーコードだってなりたくてなったわけじゃない。産まれた時に組み込まれた遺伝子、労働でのストレス。家庭では奥さんと娘にだらしないと叱られる。可哀想。)
得物をしまった。
勝手に結婚してるし、子供がいる設定になってる。
しかも子供は娘だし…その編成に優秀な兄がいたら私の家族のようになる。そして、ハシゴ所持者と言うより頭がスッキリしてる人への優しさが生まれている。身内にいるのかそれとも作——
(頭が良くてバイトしてて、髪型で誤魔化してるような優秀な兄もいるんだろうなぁ。)
私の家族じゃないか。
ちょっとディスってる部分があったが私の兄じゃないか。まぁ、それは置いといて、わかってはいたが感情の起伏が激しい。今のとこ喜怒哀楽の怒と哀にエネルギーが注がれすぎている。
いつか、喜と楽も聞いてみたいなぁ。
(僕がバイトした瞬間膝かっくんしてやるよ!!そのままレジの店員さんにバーコード読み取ってもらえやッッッッッ!!最高にhappyでイイぜ!!)
…………喜と楽見れたよ…
「まもなく電車が到着します〜お体を黄色い線の—」
米はおいしい。