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第一章 人魚族と常識

「……」

「……」


しばらくルカと私は、無言のまま見つめあった。

いや、別に恋人同士のようなピンクオーラを出しているわけではないですよ?


「アイ。アイは自分の尾びれの色について何か思うことはない?」

「ん~、赤いよね」


無難に濁して答えたつもりが、ルカは満足したのかにへらっと笑った。

こっちまで気が緩んじゃうよ。


「アイは生まれたばっかりなんだよ。人魚族は、水の精霊の加護が宿るせいで青い髪、瞳、尾びれと青尽くしなんだよ」

「……えーと」


もしかしなくても発言を間違えたかも。

これは、記憶喪失設定を発動するべきか。

でもその前に本物(?)の人魚に会ってみたい。青尽くしとかすごくきれいなんだろうな。

ルカは、笑顔のまま話を続ける。


「アイは、赤い尾びれに、黒い髪に瞳。赤色は、火の精霊の加護色だから一緒に出ることはないんだ。青系統の色を全く持たない人魚族なんて聞いたこともないし」

「……へぇ」


まずい、まずいぞ!!これは。

私が、視線を逸らしてそっぽを向くと、ルカが話を続けてた。


「それに最近では滅多に見れない人魚族が近海で網に引っ掛かるなんていうのも珍しいというかおかしいんだよね」

「……そうですか」


もう白状したほうがいいのかもしれない。

緊迫した雰囲気がこの部屋を支配している。

さらにルカの方を見ないように首をこれでもかと捻子っていると、ルカがクスっと笑った。


「まぁ、いいや。アイがこの国に災いをもたらすんだったら保護対象ではなくなるけど、今のところそうは見えないし」

「もちろん!!平和って大事だよね!!」

「ルカ殿下!!こんな子どもでも知っていることを知らないのに、17歳というなんて怪しいです!!きちんと調べるのも管理者の仕事の1つです!!」


和やかになったと思ったとたん、ニルカが抗議し始めた。

もう、空気読めないやつだな。それにしても、管理ってことはルカに監視されながらこの金魚鉢が私の住むことになるのかな?

金魚鉢という狭いところにずっといるのはとてもいや。どうせなら広いお風呂とかがいいな。ルカに言えばそのくらい叶えてくれそう。

でも、ニルカもいるし危険な発言は自分の命を縮めそうだし。


「人魚族は精霊と人間の間の子であり、とても神聖なもの。アイ様には神聖という言葉は当てはまりません」

「ケンカ売ってんの?」

「いえいえ、そんなことはありませんよ」


ニルカって腹黒?いや、まんま黒い!!

腹が立ってきた!!言いたいことは言うべきだ!!

私は、ルカをきっと睨むようにして見る。


「ルカ、私の住まいがこの金魚鉢だなんて私いや」

「じゃあ、俺の風呂にする?でも深さが足りないかも」

「それでも結構!!」


ルカはほののんと言った。

ルカって王子だし、当然お風呂は大きいよね?

これは期待できる。


「ルカ殿下。そのような発言は軽々しく言ってはなりません。他のものへどう認識されるか、この王宮での権力図への影響を考えてくださいと何度も……」


また説教を始めるニルカ。

将来禿げるフラグが立ってる。こういう人はストレスが溜まりやすそうだし。

ルカとニルカのやり取りを見ているとノックする音が。はーい、と返事をするとツィネさんとシルアさんが入ってきた。


「失礼致します。アイ様にお菓子をお持ちしました」

「わーい」


2人の手にはティーポットとカップ、それにお菓子。

クッキーだ!!よかった、楽しみだったけど、意味不明の物体とか人魚だからとか言って海藻のみとかチラッと思ってたんだ。

私は、足をバタつかせてぷはっと金魚鉢から顔を出して淵に腕をのせる。

でも、クッキーがのせてあるお皿に精一杯手を伸ばしても届かない。

これはツィネさんたちの協力が必要だ。


「……アイ様」

「?」


ツィネさんたちがまた驚いて固まった。

え?まずいことした?ただ顔を金魚鉢から出てクッキーを取ろうとしただけだよ?

まさかマナーがなってない、食い意地が張って退いてるとか?


「アイ、もしかして精霊の力を使えないの?」


ルカは、固まらずにあのにへら顔で考えてなかったことを聞いてきた。

精霊?それはおとぎ話とかに出てくるあれですよね?精霊の力を使うとかそんなことできるはずない。

でも、この反応からするとどうやら人魚族は精霊の力を使えるらしい。

そういえば、さっきニルカが精霊と人間の間の子って言ってたけど、それと関係してるのかな。


「え~と~只今ケンカ中……?」


またしても沈黙。

もう色々と苦しいです。

最初から記憶喪失ってことにしておけばよかった。

今からでも間に合いますかね?

思ったよりも話しが進みませんでした……。

ニルカは、思ったより姑みたいに色々うるさそうなキャラになってしまいました(笑)


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