第一章 会話不能
遅くなりましてすみません。
「ほう、これは珍しい……」
「いや、災いの象徴では……」
周りがなんだかうるさい。なんでゆっくり寝させてくれないの?それになんだか狭いし、布団は?
「ん……」
「っ!!起きたぞ!!」
「目も黒いとは……」
何だか騒がしい。
目を開けてみるとそこには広い広間だった。左右に段差の低い階段みたいになっていてそこにたくさんの人が座ってる。
そして真正面には同じような階段の先に立派な椅子に座っているおじさんがいる。左右にはインテリっぽい人と鎧を着た
でも、全部すこしぼやけて見えるのはなぜ?ん?壁?
「え?なにこれ!?」
私は今金魚鉢の大きいバージョンに入れられている。もちろん水も溢れんばかりに入ってる。
この扱いはなに?それにみんな周りの人の服、ひらひらしてて昔らくがきした中世の貴族っぽいような格好な気が……。
「ほう、目が覚めたか」
立派な椅子に座ったおじさんが話し出した途端、水打ったように広間が静かになった。
「あなた誰?えらい人?ここどこ?」
「お前は本当に人魚族のものか?」
「すべて無視ですかー?人魚族ってなに!?他に人魚がいたりするの!?」
「お主、レディという名だそうだな」
「いや、ちがうし!!人の話を聞け!!」
全く噛み合ってない会話が続き、もはや会話の成立は不可能だと判断してそうそうにあきらめた。
何やらまだ一人で会話を続けようとしているが、全て無視。仕返しだ、コノヤロ!!
それにしてもここ、日本じゃないっぽいよね?夢とか?でもさっきふつうに寝て起きたけど。異世界トリップってやつかな?それにしてもなんで人魚になる必要はないでしょ……。
「では、レディは王族の管理下とおくものとする」
「ん?」
どうやら話はまとまったらしい。何話してたんだろ?考えこむと周りのこと忘れちゃうくせ直した方がいいかな。
しかし、あんな会話無視の上司を持つと部下がつらいだろうな……。
「では、我の宮に……」
「お待ちください。陛下」
いつの間にか金魚鉢のそばに人がいた。
長い金髪の人。上から見下ろしてるから顔が見えない。またわけわかんない人が増えた。
「僕がレディを管理しますよ」
金髪は顔を見上げ、私の目を見てそう言った。
……もう展開についていけないのですが。誰か解説者を私に紹介してください。
王様は人の話は聞かない人ですが、宰相とはきちんと会話のキャッチボールができるみたいです。