第二章 散歩と笑顔
大変遅くなりました!!
ルカが前で紅茶を飲んでいる時、私はもんもんと次の計画について考えてた。
海…に行かなくちゃいけない気がする。
頼んでも叶えてくれる人もいないし。(ニルカは一言で撥ねつけて、ルカはそうなんだの一言。ニルカには水をひっかけてやった)
「外に出たいの。ねぇ散歩できないかな?」
ルカが出て行った後、私はこっそりと2人に提案してみた。
ツィネさんは苦笑して、シルアさんはにっこりとほほ笑んだ。
随分と対極的な反応だな。
「アイ様、ルカ様方が許可なさらないと難しいかと」
「いいえ、ツィネ。私たちの主人はアイ様なんだから望むなら叶えて差し上げないと」
「……シルア。少しは表情を隠したら?何か企んでるのバレバレだよ」
ひそひそと2人が話し始める。
シルアさん……ルカがいなくなったら本音が出たとか?
「えっと……」
異世界トリップ戸惑ったけど、こっちの方が戸惑う。
環境が変わるよりも身近な人のとんでも暴露の方が衝撃でかいよ。
シルアさんは、いつも素敵笑顔で癒しだったのに……。
今の笑顔は、ニルカと引けを取らないような気がするよ……。
「さ、アイ様。散歩に行きましょう」
「ひっ」
幽霊は大丈夫だけど、この笑顔は無理!!
思わず奥へと逃げるけど、なんでだろう。水がいつもより冷たく感じる……?
「アイ様」
「し、しるあさん?」
「やはり私はアイ様に仕えることができて幸せでございます」
にっこりとほほ笑むとさらにもう一言言った。
「ニルカ様の嫌そうな顔見れるし最高の職場ですわ」
……。
うん、聞かなかったことにしよう。
ツィネさんは額に手をあててやってしまった、という表情をしている。
この世界の人って本当に腹黒が多い。一体何考えてるんだかわからない。
あれか。これが外国人から見た日本人ってやつなのか。
固まった思考でいらないことを考えていると、知らないうちにおなじみの金魚鉢が登場し、その中に入れられた。
散歩がしたかったからこれは望んでいたこと。
でも、こんな状況を望んでいたわけじゃない。
振り向くと、カートもどきを押す綺麗な女性たち。
やたら機嫌のいいシルアさんと眉間にしわが寄りっぱなしのツィネさん。
鼻歌が聞こえてきそうなのと、ため息が聞こえてきそうな二人。
(どうしたものかな)
いつもお世話になってるし、話くらいなら聞いてあげられるかな。
考えていると、ふとあることに気がついた。
この道ってルカの執務室に繋がる道じゃ……?
「ねぇ、なんでこの道を進んでるの?」
「……」
「え、何その笑顔。怖いんだけど」
シルアさんは、何を想像したのかふふふ、と口に手を当てて笑いをこらえている。
あー、窓から見える空が青いな。
こんな日には海に行きたいなー。
「着きましたよ、アイ様」
現実逃避していた私にシルアさんがとどめを刺した。
散歩の目的は、城内探索であってルカに会うためじゃなかったんだけどな。
それに、最初外に出たいって言ったのに……。
気のせいか、私とツィネさんのため息が重なった気がした。