第一章 異世界で人魚?
昔、絵本の人魚姫を読んで大泣きした。
絵本の中の人魚姫はとてもきれいで清らかだった。
私だったらこんな風にはなれないと思いながら彼女をかわいそうだと思った。
でも、自分が全く泳げないことを知ると、今度は彼女を羨ましく思うようになった。
「きれいだな~」
目の前に広がる青い空、青い海。
そしてその海にいる私、七瀬亜衣17歳。
泳げるはずのない私がまだ生きていられる理由は、これだ。
「うろこ」
下半身が魚になっている。そう、足が尾びれになっている。赤いうろこが眩しいぜ!とか言っている場合ではない。なんでこんなことになってるんだか。
どうしてこんなことになったのかもう一度考えてみる。
そう、今日は確か美穂にナンパのために海につれていかれて……。
私の愛しの命綱である浮輪で美穂を無視して海に浮かんでいたら謎の渦に巻き込まれて……。
溺れたら人魚になるってあり得るのかな?
「いや、ありえないだろ!!」
足をバタバタと動かそうとしたら尾びれがパシャパシャと水面を揺らした。
泳げない私は昔無理やりチャレンジさせられても浮けるようにすらならなかったのに……何だか複雑な気分。
う~ん、せっかくだし泳ぐか。
潜って海を堪能する。青というよりエメラルドグリーンのような綺麗な海に見たこともない綺麗な魚たち。
「うわー。きれーい!!水の中なのに目を開けてられる!溺れない!!」
泳ぐのは楽しい、海の世界は壮大だ、と嫌がる私を説得した友だちや先生の言葉を思い出す。
あのときは写真で見れば十分と思ってたけど撤回。ものすごくきれい。
感動している泳ぎまわっていると何かに引っかかった。
いたっ!!なに!?
そう思った瞬間私は何かに強く引っ張られた。