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小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜  作者: みかん桜
番外編

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黒ウィッグ

リリーナとアルフレッドが9歳頃

「ふふっ」

「嬉しそうですね」

「えぇ。だって今日は貴族街へお買い物に行くのよ。せっかく王都に滞在する日が増えたのに、邸と城の往復ばかりで街に出たいとずっと思っていたの」

「殿下とのデートが楽しみなんですね」


 アンナの誤解をスルーできるくらい楽しみ。


 前世を思い出すまでは、外商が来ることもオーダーメイドで服を作ることも不思議に思っていなかったけれど、やっぱり自分の目で見て手にとって選びたいじゃない?


 数ある商品の中から欲しい物を選んだり、時には買う予定のなかった物まで買ってしまったり……要するにウィンドウショッピングをしたかったのよ。


 今日はアルフレッド様が公爵邸に迎えに来てくださる。執事から殿下が到着したと知らせを受け入り口へ向かうと、馬車の前で立っているのは……アルフレッド様よね? か、髪色が……


「リリーナ」

「アルフレッド様? その……髪はどうされたんですか?」

「執事に、街へ行くなら被るようにって言われたんだ」


 王子だし、変装のためにウィッグを被るのは分かるけどなぜその色を? 土壁みたいな、しかも少し古い家に使われていそうな色。


「その色はアルフレッド様が選ばれのですか?」

「違うよ? 渡されたのがこの色だったんだ」


 何てことを!! これは王族用? 確かに渋い色で目立ちにくいかもしれないけれど、他にはなかったの? それに目の色を隠すためか前髪が長すぎる。逆に目立つ気がするんだけど。


「に、似合わない?」

「えぇ。あっ! いえ、そういう訳では……」

「……新しく作り直す」


 わぁぁ。めちゃくちゃ落ち込んでるよ。子供を傷つけてしまった……人を傷つけないための嘘を付ける大人だったはずなのに。

 やっぱり咄嗟の反応は実年齢に引っ張られてしまうものなのね。


 馬車のカーテンが閉められていたし、傷付けてしまったことを後悔していたから、全く外の景色を見ずに到着してしまった。


 気を持ち直して一緒に楽しまなきゃっ! そう思っていたのに扉が開いた先は……


 王都貴族街……ではなく、アルフレッド様の王宮の前だった。


「えっ?」


 しっかりと私をエスコートして馬車から降り、(かつら)職人を呼ぶよう指示を出した後、向かったのは王宮内の客室で。


 アルフレッド様は向かい合って座ったソファーで、俯いたまま沈黙を貫かれている。


「あ、あの、王都の貴族街に行く予定では……?」

「……あんな髪じゃ外に出られない」


 小さな声で何かおっしゃっているようだけど、全く聞こえない。隣に移動するのって失礼よね?


「リリーナ……」


 なっ、泣か、ないわよ、ね? (すが)るような目で見ないでっ。


 あぁ、もうっ! 失礼でもいいやっ。泣きそうな顔をされてほっとけないよ。隣に移動し、両手を膝の上に置かれているアルフレッド様の左手を私の両手で重ね、声をかけた。


「アルフレッド様」

「……僕のこと、嫌いにならなで」

「えっ? 聞こえ……」

「き、嫌いにっ! ならなぃで……」


 ん? 嫌いにならないで? ごめんね、どのへんの話?


「だ、だめか……? 嫌いになってしまったのか?」


 もしかしてウィッグがダサかったから気にしてるの? それくらいで嫌いになるわけないのに。


「嫌いじゃないですよ」

「ほ、ほんと……?」

「はい」

「よかっ、た。よかった。ありがとう、リリーナ」


 お茶を飲みようやく落ち着いた頃、鬘職人がやってきた。


 サイズを測り、どんなデザインで何色で作るのか。


「色はリリーナに決めてもらいたい」

「いいのですか?」

「うん」


 何色がいいかな? 金や銀系統は遡ると王族の血筋が混ざったりしているため、高位貴族に多い色。やっぱり茶色とか深緑とか……あっ!


「黒っ、黒はどうですか?」

「珍しい色ですが構わないのですか?」

「ですよね。じゃあ無難に茶色が良いかと」

「黒にするっ! リリーナは黒がいいんでしょ? なら黒にする」


 前世はほぼみんな地毛が黒だったから忘れていたけど、この国では黒髪って珍しいんだった。


 確か光の当たり具合で茶色に見えるとかだった気もしないし……いいかな?


「黒にしちゃいましょう。アルフレッド様の黒髪見てみたいです」

「っ!!! 絶対に、黒にするっ!」

「はいっ。それと前髪は普通の長さにしてくださいね? 目は伊達眼鏡をかけてごまかしましょう」


 いくら隠すためとはいえ、前髪が長いと目も悪くなっちゃうし。


「黒髪が似合うといいな。……そうしたらリリーナに好きになってもらえるかな……」


 アルフレッド様が何か呟いておられる姿を微笑ましい目で見ている執事さん。孫を可愛がっているおじいちゃんって感じね。



 そうしてアルフレッドの黒ウィッグが作られる事になったのだが……リリーナは自分が勧めたことをすっかり忘れ、成長とともにウィッグを作り直す姿を見てせっかくだから違う色にすればいいのにと思っていた。

 そのことをアルフレッドが知るのはもう少し先の話。


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