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小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜  作者: みかん桜
本編

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49.作戦開始だ③sideアルフレッド

 ベッド横に置いておいた花瓶を落とし、部屋の外で待機しているレオニール達側近や騎士達に合図を送る。


「アルフレッド? なんで花瓶を落としたの? そんな大きな音を出したらダメでしょう? 人が来ちゃうじゃない」


 そう言ってこの女は右手に隠していた物を見せてきた。


「まさかっ、この部屋の鍵か?」

「ええ。まさか扉前にいる騎士が持っているとは思わなかったわ。迂闊ね。他の人に託しておけばよかったのに」


 どうやってそれを? 鍵は騎士服の内ポケットに入れていたはずだ。


「ふふ。私ね、鍵を取るのが得意なの」

「そんなことバラしていいのか」

「ええ。だって妊娠してしまえばこっちのものだもの。さすがに王族の子供を身籠っていたら責任取ってくれるでしょう? あぁ、男爵じゃ王妃は無理って言いたいのよね? 大丈夫。私はリリーナだから。ねぇ? リリーナからのキスは嬉しいのよね?」

「お前はリリーナじゃない」


 リリーナに成り済ますつもりか? いかれてる。


 現行犯で捕まえたかったが仕方ない。俺の証言だけでなんとか……なんだ? 今一瞬頭がフラッとした気がする。


 まさかっ! 目の前の女がニヤリと口角を上げた……どこで盛られたんだ。


「そろそろ効いてきた? 知らなかったのね。焼いた時に出る煙がお酒に混ぜた時と……いいえ、それ以上に効果が出るって。でも安心して? 粉状の物でも練り潰した物でもないわ。そのままの葉を焼いているから媚薬効果と……ほんの少し意識が薄くなるくらいよ」


 まさかそんな使い方があったなんて……。


「事前に準備しておいてよかったわ。元いた部屋も薬草独特の香りがしていたから……この部屋の匂いの濃さに気付かなかった? それとも、もうすぐ捕まえられるからって油断した? ふふ。私、二度同じ間違いはしないタイプなの」


 二度? 一度目はいつだ? 前回は部屋にすら入っていないし、領民の恋人同士を別れさせていたのはこの薬草を手に入れる前のはずだ。


「さぁ、一緒に楽しみましょう?」


 ベッドに乗り押し倒してきた。ダメだ……短剣に手を伸ばすも力が入らず上手く握ることができない。


「毒の訓練って本当にすごいのね。こんなに効きが悪いなんて思わなかったわ」

「なぜお前には効かない」

「解毒薬を作ったからよ。私、薬の研究をしてたから知識があるの。せっかくだから私は覚えておきたいじゃない?」


 あぁ、捕らえられないだけでなく、本当に襲われてしまうのか……。リリーナ以外となんて耐えられない。いっそ殺してくれ……そう意識を飛ばしそうになった時、大きな音が聞こえ、なんとか意識を保つことができた。


 ガチャガチャ


 ドンドン


「アルフレッド様っ!」


 遠くから声が聞こえる。リリーナ?


「チッ、煩いわね。ここまで聞こえてくるってどれだけ大きな声で呼んでるのよ」


 ドンドン


「アルフレッド様っ!!」


 リリーナだ。


「まぁいいわ。このまま始めましょう」


 そう言って顔を近付けてくるが、今出せる力を全て出し切ってこの女を突き飛ばした。リリーナのおかげで少し冷静さを取り戻せたおかげだ。


 床に倒れている隙になんとか扉へ駆け寄り鍵を開けると……。


「アルフレッド様っ」

「リリーナ……」


 目の前のリリーナを力いっぱい抱きしめる。少しでもあの女に触れられたことを忘れたい。


「殿下、あとは私達に任せて移動を」

「あの薬草を別の方法で使用されてしまい、このまま会場に戻るのは難しい。事を大きくしたくなかったのだが、父上……陛下に報告を頼む」

「承知しました。リリーナ、殿下と王族用の控室へ」

「はい。行きましょう、アルフレッド様」



 王族用の控室へと入り、媚薬効果で高まった熱を冷ます。


「会場内でじっと待っているだけなんてできなくて、部屋の前に向かっていたらお兄様が慌てていらして。合図が来たのに部屋の鍵がないって聞いて、作戦中にも関わらず慌てて扉を叩いてしまいました。でも、アルフレッド様を無事に助けられて本当によかったです」


 隣で涙を浮かべながらリリーナが部屋に来た理由を話してくれているが、熱を冷ましたい今はそんな顔で見つめないでほしいし、少し黙っていてほしい。


「アルフレッド様? 何もされていないのですよね?」

「えっ、あぁ。何もされていない」

「何か私にできる事はありますか?」


 俺から離れるとこが今リリーナにできることだ……と言いたいが目一杯に抱きしめたい気持ちが勝る。


 いっそあの薬草のせいにして押し倒してしまうか? そう思い手を伸ばしたら……


「アルフレッドっ」

「は、母上!?」


 良いのか悪いのか、一瞬で正気に戻れた。


「他国の王族への対応は私達に任せて、あなたはもう自分の王宮へ戻りなさい。リリーナは陛下が事情を聞きたいそうだから、ここで待っていてくれるかしら」

「私は大丈夫なので会場に戻ります」

「あなたも病み上がりなんだから、ここでゆっくりしておきなさい」


 王太子初日にこの有様……明日から挽回していかねばな。



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