47.作戦開始だsideアルフレッド
入場後リリーナとファーストダンスを踊る。
「私と踊っていただけますか?」
「ふふ。はい、喜んで」
本来婚約者とのダンスは『行こうか』や『私達も踊ろう』などと言って始める人が多い。でもこう誘ってダンスを始めるとリリーナが物凄く嬉しそうにするから、それに気付いてからは毎回同じように声をかけダンスを始めている。
ほら今回も嬉しそうだ。ダンスの練習中では、膝をつき片手を出して誘い、リリーナが了承しながら手を重ねてから踊ったりもしている。これはリリーナから昔一度お願いされて始めたものだが……絵本で見たと言っていたがどれだけ調べても出てこなかった。恐らく夢で見たのではないかと思っている。
「リリーナ、今はダンスを楽しもう」
「はい……」
敵意むき出しの目でこちらを睨みつけているあの男爵令嬢が気になっているのだろう。なぜ彼女はここまでリリーナを恨むんだ? 私のことが好きだからだとリリーナは言うがそうは思えない。
曲に合わせて中央で踊り始めると、徐々に男爵令嬢のことは気にならなくなったみたいだ。それにしてもこのドレスにして正解だったな。回るたびにイエローダイヤモンドが光り輝き、リリーナの美しさをより引き立てている。
でもそんな楽しい時間はすぐに終わってしまい、今から長い挨拶を受け続けなければならない。そしてその後は作戦開始だ。
「もう終わっちゃいましたね……」
「全てが解決したらまた踊ろう」
「はいっ」
必ず捕らえてみせる。
挨拶の波も無事に終わり、まだ完全に体力が戻っていないリリーナは作戦が終わるまでは壁の花となり会場で待つと言っていた。本当は控室で休んでほしいが、高位貴族の控室ではゆっくりできないだろうし、王族用の控室にはアマンダ嬢が入ることができないからな。一人にはなってほしくないから仕方ない。
あの男爵令嬢は、挨拶を受けている間にベッドが置いてある休憩室へとメアリー嬢が誘導している。だから会場内であの薬草を飲むふりも、気分が悪くなったふりもしなくていい。
捕らえた後はパーティー終了後まで側近や騎士たちに任せ、私は会場へと戻る予定。他国の王族もいるパーティーなので、あまり事を大きくせず解決するためだ。
「そろそろ行ってくるよ」
「気をつけてくださいませ……」
「大丈夫だ。心配しなくとも間違いは絶対に起こらない」
そう言うとリリーナはほんの少し目を見開いた。
「気付いておられたのですね」
「あぁ。嫉妬してくれるまで好きになってもらえて嬉しいよ」
顔が真っ赤だ。
全てを終わらせてくるから、待っていてくれ。




