46.作戦開始!
とうとうこの日が来てしまった。私はこの作戦を実行するのは反対。もし何か予想外のことが起きて間違いが起きてしまったらって思うと……不安。それに、ルーシーを嵌めるためには必要なことだと分かっていても、アルフレッド様と二人きりになんてしたくない。
作戦内容はこうだ。
前回と同じように平民を雇えたとしても、さすがに王城に入れることは不可能だから最初から城で働く使用人を買収しようと持ちかける。今回は姉のお見舞いを称して城に入ったメアリーが声をかける。その後の流れは基本同じ。
ちなみにその使用人はこちらで用意したあの少年の父親。
ただ立太子式は他国の王族と高位貴族しか招待されていない。だからルーシーは入ることができないのでエスコート役が必要で……流石にお兄様だと怪しまれるからと、再従兄弟のまだ結婚していないメアリー達と同じ年の三男に、ルーシーのエスコートをお願いした。もちろんルーシーには偽名で留学中だから学園には通っていないと嘘をついて。
*
「立太子式のドレスもよくお似合いでしたけど、こちらも素敵です。早くお二人が並ぶ姿を見たいですっ」
無事に式典が終わり今は城のメイドに手伝ってもらい、パーティー用ドレスに着替え終わったところ。
もうすぐ始まってしまう。
「綺麗だ」
「っ!? ア、アルフレッド様っ」
「驚かせちゃったかな。部屋の前で待っていたらメイドが開けてくれたんだ」
近寄ってきたアルフレッド様は私の腰を引き寄せ、頬に手をあて……このままキスされるんじゃないかってくらい近くで……。
「リリーナ、私にエスコートさせていただけますか」
そんな風に囁かないで。心臓は早くなるし顔は絶対真っ赤だし、メイド達がまだいるのに……。
「大丈夫。すべて俺に任せてリリーナはパーティーを楽しんで」
「み、耳元で囁かないでください」
「リリーナは耳が弱いね」
「分かってるならやめてください……」
「それは無理なお願いかな。顔が真っ赤で可愛いよ」
甘すぎる雰囲気にこれからルーシーを嵌めることなんて忘れてしまいそう。
アルフレッド様にエスコートされて会場近くの王族用控室へ入る。
「あらっ。素敵なんだけれど……ごめんなさいね、リリーナ。息子の独占欲がここまで強いと思っていなかったわ」
「これでも抑えたほうです」
えっ!? これで? 私は紫色のレースに金色の糸で全面刺繍されているドレスを着ている。デコルテや袖の部分はシースルーでドレス全体に小粒のイエローダイヤモンドが散りばめられている。
もちろんアルフレッド様も私のドレスと同じ色を使っていて、施されている刺繍は全く同じ。違うところといえば散りばめられている宝石がアメジストであることくらい。
「結婚式のドレスがどんなものになるのか今から不安だわ」
王妃様、私もです。
「リリーナ嬢が動く度にキラキラと光って綺麗ですね」
「第二王子殿下、ありがとうございます」
褒められて少し顔を赤くしてしまったことに怒ったアルフレッド様が、私の腰に当てている手にぐっと少し力を入れて引き寄せた。
ふふ。嬉しい。
「リリーナ、俺だけを見ていて」
「はい。もちろんです」
「兄上……」
国王陛下夫妻も第二王子殿下も呆れていらっしゃるけれど、私はすごく嬉しい。
「アルフレッド様も私だけを見ていてくださいね」
「もちろんだ」
「……兄上、これ以上は二人きりの時にお願いします」
*
そろそろ王族の入場時間……作戦開始だ。




