43.婚約者の妹②sideアルフレッド
「殿下、これから知る内容は聞かなかったことにし、罰することはないとお約束ください」
「約束しよう」
恐らくパーティーでの件を自白させるつもりなのだろう。
「お姉様……?」
レオニールに誘導され近付いてきたメアリー嬢。
「リリーナはあの薬草を5枚も飲まされた。ずっと目を覚ましていない。メアリー、私は大袈裟だったか?」
「っ! び、媚薬効果が出るだけのはずです……目を覚まさないなんて……私はそんなの聞いてない」
「それだけで違法となるわけがないだろう。お前はよく知りもしない薬草を他人に使おうとしたんだ」
「そんな……」
人形のように眠っているリリーナを見て何か思うところがあったのか、レオニールの言葉でことの重大さにようやく気づけたのか、涙を流しだした。
「メアリー、これがお前が言うちょっと攫われたくらいで起きたことだ」
「…………」
「パーティーで殿下に使用しようと計画したな」
「……はい。申し訳ありませんでした」
今更謝られたところでもうどうだっていい。未遂で済んだし、あの日狙われたのは俺でリリーナに危険はなかったんだ。
「あぁぁぁ」
長い沈黙の後、叫びながら崩れ落ちたと思ったら、急に立ち上がりリリーナに手を伸ばしてきた。
「ごめんなさい、ごめんなさいお姉様、ごめんなさい」
「触るなっ」
「っ!!!」
この涙に嘘はないだろう。今まで自分がしでかしたことが怖くなり、反省し、許しを請いたいのだろうが、触れようとするな。
「今までの自分を省みるのであれば、触れられないことくらい理解できるだろう」
「申し訳ありません……」
レオニールによって離された彼女は今までと顔つきが変わったようにみえる。
「いかに自分の考えが甘かったのか、気づけたか?」
「はい……あの、お兄様……お姉様は目を覚ましますか?」
彼女が誰かを心配している姿は初めてなんだろう。レオニールが驚いている。
「今解毒薬で治療中だ。必ず目を覚ます」
「解毒薬があって、良かったです……」
「隣国にしかないがな」
もちろん隣国も我がセルナ王国同様、薬草の使用及び栽培を禁止している。だが製法次第で医療に使えるかもと現在研究中で、成功すれば手術の際痛みを感じずに治療を受けられるようになるそうだ。人によっては効きすぎてしまうため解毒薬も同時研究しており、その研究に彼らの再従兄弟が関わっているため手に入れることができた。
「もしかして……再従兄弟の結婚式で隣国に行った際、お兄様が公爵邸についても馬車をお降りにならなかったのって……?」
「そうだ。念の為に手に入れておこうと思ってな。メアリーはあの男爵令嬢と繋がっていたから、解毒薬の存在を知らせるわけにいかなかったんだ」
そうでしたか。そう言ってリリーナを涙を流しながら見つめる彼女をみて、これからの二人はまともな姉妹になれる気がした。




