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小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜  作者: みかん桜
本編

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35.必ず助けるsideアルフレッド

「くそっ、すぐに舗装道に入ってやがる。辺りに何か手がかりになるものは」

「何もありません。目につくような変わった馬車も通っていないようです」

「そうか……一旦あの店に戻ろう」


 レオニールしか頼みの綱がない。メアリー嬢から情報を得たら必ず攫われた場所に来るだろうと、聞き込みに数人を残して店に戻った。



「アマンダ嬢、何でもいい。男の特徴を何か覚えていないか」

「立ち振舞から貴族であることは確かかと。それから……少しお酒の匂いがした気がします」


 貴族が自らリリーナを誘拐するか? たとえ酔っていたとしてもリスクが高すぎるだろう。


「殿下!」


 ここの管理者を調べていた側近が戻ってきた。この近くにある商工所で確認することができたようだ。 


「管理者が分かりました。出自は子爵家でしたが、素行が悪く貴族籍から除籍された者でした。ここは元々その子爵家が経営していた店で、除籍の際に譲り受けたようです」

「王都周辺に子爵家の屋敷は?」

「ありません。ですが至急登城するよう子爵家に早馬を出しています」


 なるほど。除籍されお金に困った末の犯行か。どう見てもこの店はまともな経営をしているようにみえないしな。


「アルッ!」

「なにか情報は」


 数人の公爵家の騎士とリリーナの専属メイドを連れてレオニールが戻ってきた。


「リリーナは王都にある無管理者の建物の中にいる」

「それは確かか」

「あぁ。詳細は後で説明するが今は俺を信じてくれ。妹を助け出したい気持ちは同じだ」


 レオニールに頷き返し、ダニエルに指示を出す。


「ダン」

「すぐに」


 ずっと黙っていたリリーナのメイドが発言の許可を求めてきた。


「今は発言の許可を取らなくていい。(みな)、気がついたことはすぐ共有するように。それで?」

「はい。最近リリーナ様は手の乾燥を気にし、いつどこでも塗れるからとクリームを小ケースに入れて持ち歩いておられました。ケースにはウィリアムズ公爵家の家紋が入っています。リリーナ様ならそれを手掛かりとして何処かに残しているのではと」

「大きさは」


 サイズはリリーナの手のひらより一回り小さいサイズ。見つけやすいところに落ちていればいいが。



 しばらくしてダニエルが戻ってきた。


「王都内に管理していない建物のうち人を隠せそうな建物は全部で3つ、そのうちの2つは元々商家、残り1つは平民街にある元娼館でした」

「あの……平民街にある娼館には地下牢があるそうです。酔っ払って手がつけられない客や、支払いを拒否した客を入れていたとか……随分昔の話のようですが、公爵家のメイドになってすぐ、先輩メイドにそう聞いたことがあります」


 地下牢……考えたくないが1番可能性が高い。


「3つに分かれよう。俺はその元娼館に、レオとダンはそれぞれ元商家へ」

「あぁ」

「承知しました」



 馬を休みなく走らせ、元娼館まで馬車なら2時間はかかるであろう距離を何とか1時間でたどり着けた。だがリリーナが攫われてからすでに3時間近く経ってしまっている。


「無事でいてくれ」


 馬は側近に任せ入口に向かっていると、ウィリアムズ公爵家の家紋の入った小ケースが落ちていることに気が付いた。中に入っているクリームからは、蜂蜜とラベンダーの香りがする。



 リリーナはここにいる。



 目の前の扉は鍵がかかっているようだ。窓を割るか……


 ガシャン。


 建物が古かったおかげで簡単に窓を割ることができた。中に入ると匂いに違和感が……もしかしてあの薬草を使ったのか!?


 薬草を乾燥させ茶葉と一緒に淹れると媚薬効果のみ、粉状にしたものを酒と混ぜると媚薬効果のあと強い後遺症として酩酊状態となる。

 しかし薬草を練り潰したものを酒と混ぜると、媚薬効果よりも感覚が鈍くる効果が強くなり、それを過剰摂取すると意識が奪われてしまう。製法によって効果が変わる、これは先程レオニールから得た最新情報だ。



 地下牢への入口を探しながら奥へと進んでいくと……


 バンッ!!!


 奥の部屋から扉が勢いよく開く音がした。


「ここかっ」


 音のした部屋に入ると、少し黄ばんだ白い布の塊に、元子爵子息であろう男が跨がっている。あの塊の中にいるのはリリーナなのか!?



 ボコッ


 男の胸ぐらを掴み頬を思い切り殴り飛ばす。


「うっ……いって。なにすん、だよ……」


 布を捲るとぐったりしているリリーナがいた。


「リリーナっ」

「ある…れっ…、ま」


 よかった。間に合った。強く強くリリーナを抱きしめ、その温もりを確かめる。少しでも薬の効果を薄めるために水を用意させよう。


「早急に医師を手配します」


 追いついた側近はそう言うが、呼んでも無駄だ。


「いや、この辺りの医師では治せないだろう。恐らく例の薬草を飲まされている。至急レオニールをここに呼ぶんだ。それから水を用意しろ」

「恐れながら、レオニール様を呼びに行くよりリリーナ様を連れて王宮へ戻られる方が……」

「レオニールを連れてこいと言っているんだ!!」



 必ず助ける。


「リリーナ、頑張るんだ。意識を持ち続けてくれ……」


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