34.誰か助けてsideレオニール
「お帰りなさいませ」
今朝のリリーナは、アルへのお祝いの品を選びに行くのだと楽しそうにしていたのに。やはり外出禁止にして外商を呼びつければよかった。
「メアリーはどこだ」
「お部屋にいらっしゃいます」
関わっていてほしくない。だが、リリーナを助ける手立てがほしい。何でもいいから情報を持っていてくれ。
「メアリー」
「お兄様? そんなに慌ててどうなさったんですか?」
部屋に入るとメアリーはソファーで本を読みながら寛いでいた。
「リリーナが攫われた。何か知らないか」
「お姉様が? そうでしたか。ですが私は何も知りません」
「メアリー!!」
二人の仲が悪いのは昔からだ。でも実の姉が攫われたというのに何故こんなにも落ち着いていられるんだ。
「メアリー、お前は本当に何も知らないのか。知っているのに何も話さないのであれば、実の妹であろうと私はお前を見捨てる」
「えっ!!」
「何か知っているな」
「本当に何も知らないのですっ」
俺のあまりの剣幕に怯えたのか、縋り付いてくるメアリーを引き剥がし、更に問いただす。
「最近ホワイト嬢とどんな話をした。リリーナと彼女が貴族街で会ったのは偶然か?」
「ル、ルーシーに……本日お姉様が……貴族街に行くことを、お、教えて、しまいました……」
リリーナと会ったのは偶然ではなかったのだな。
「貴族を攫う方法を教えたことは」
「ありませんっ」
「男性用の貴族服を渡したことは」
「…………ごめんなさい。ひ、必要だと言われて」
助けたふりをした男は平民か、没落貴族か、除籍された元貴族か……。
「人を隠せる場所を教えたことは」
「あ、あり、ません……」
「メアリー!」
「王都の……平民街、にある、建物は……管理、者がいない、建物が、あると……」
「なぜそんな話になった」
「うちの領に……貴族が、住んで、いた、廃墟が……ないか聞かれて……」
元々はうちの公爵領内に攫うつもりだったのか。その方が探しやすかったというのに! メアリーが手配すれば父上に報告が入り未然に防げたというのに。
「王都の話しかしていないんだな? 領内全ての建物を管理しているなんてうちの公爵領くらいだ。その話はしていないな!?」
「し、していませんっ!」
そうか。ならリリーナは王都の何処かにいるはずだ。恐らくホワイト嬢は高位貴族は領内全ての建物を管理しているのだと勘違いしているだろう。
「失礼します」
「……意識が戻ったのか」
部屋を訪ねてきたのは頭に包帯を巻いたアンナだった。
「レオニール様、申し訳ありません」
「謝罪は後でいい。リリーナを助け出すことが最優先だ。リリーナが攫われた場所に向かいながら状況を説明してくれ」
「承知しました」




