25.私の誕生日
「おめでとう」
そう言って色とりどりの花で作られた花束を手渡してくれるアルフレッド様。
「ありがとうございます。とっても綺麗ですね」
ふふふ。持ちきれないくらい大きい花束を貰えるなんて。
そう、今日は私の18歳の誕生日。
「週末には誕生日パーティーがあるけれど、当日一番最初にお祝いしたかったんだ」
「ありがとうございます」
成人となる18歳の誕生日は特別なもので、週末は本邸に戻りパーティーを開いて盛大に祝われる。……正直に言うと物凄く面倒。
家族や友人だけでなく、普段あまり会うことのない貴族もお祝いに来てくださるし、招待客全員と挨拶しなければならない私は、純粋にパーティーを楽しむだけの時間とはならないから。
さすがに多くの貴族が集まる場所でメアリーは何もしてこないと思うけれど。でも、もちろんアルフレッド様もお祝いに来てくださる予定だから、注意しておいた方がいいわよね。
「花束、学園に持っていくのか?」
「あっ! つい嬉しくて……アンナに預けてきます。ふふふ。ドライフラワーにしようかしら」
「ドライフラワー?」
「はい。花を乾燥させると通常より長くもつのです」
「そんな事をしなくても何度でも贈る」
ドライフラワーを飾る貴族なんていないからそうなるわよね。でも、私はこの花束をできるだけ長く飾りたいし……ふふ、香りをつけるのもいいわね。
そういえば風水的に飾るのにいい場所と悪い場所とがあった気もするけれど……覚えていないし気にしないでおこう。そもそも風水が存在していないしね。
「こんなにも喜んでもらえると思わなかったよ」
*
*
学園から戻ると、お兄様の執務室に呼ばれた。
「まずは、成人おめでとう」
「ありがとうございます」
「メアリーが戻る前に話しておきたいことがある」
えぇぇ。誕生日なのにメアリーの話をするのね。仕方がない。例え誕生日当日であろうと、別の日にパーティーが開かれるならそっちでお祝いするのが当たり前だものね。……それはそれで今日もお祝いしてくれて構わないのに。
「例の薬草を手に入れたようだ」
「えっ!?」
「おそらく週末のパーティーでなにか仕掛けてくるだろう」
嘘でしょ!? 招待客が多いから人混みに紛れやすいとはいえその分警備も強化するし、何より大勢の前で何かしでかして問題になれば……いくら溺愛されているメアリーでもお父様が許すはずがない。現にお兄様はメアリー次第では公爵家から切るつもりでいてそうだし。
「恐らく殿下に使用するつもりなのだろう」
「アルフレッド様はご存知で?」
「報告済みだ」
「ならばアルフレッド様の招待をなしに……」
「……それは無理な話だろう」
それを扉横に立って聞いていたアンナが、リリーナ様のお祝いに参加しないなんてありえないわ。と、つい口に出してしまった言葉は、私には届いていない。
「当日は殿下と離れないようにし、極力メアリーには近づかないように」
「ホワイト男爵家の令嬢が来るなんてことはありえませんよね?」
「大丈夫だ。招待状を持っていないから来ても中には入れない」
だ、大丈夫、よね……?




