20.ホワイト家
ルーシーが我が家に来た日から数日後、タウンハウスにあるお兄様の執務室に呼ばれた。
「コレを」
ソファーに腰を掛け、早々に手渡されたのは数枚の書類。ルーシーの家であるホワイト男爵家とルーシー自身の調査報告書だった。
それによるとホワイト男爵家は一見問題のない貴族だけど、過去に一度とある薬草を他国と取引した履歴がでてきたそう。それは媚薬の一種とされていたもので、後遺症が残る可能性の高いことからこの国では栽培及び使用が禁止となっている。
ルーシーが産まれる前の話で随分昔ではあるけれど、誰にどのようにして使われたのかを更に調査を進めるとお兄様がおっしゃっていた。
「どのような後遺症なのでしょうか」
「薬の効果が完全に切れるまで、酩酊状態になるようだ」
酩酊状態……もしアルフレッド様が口にしてしまったらって思うと恐ろしい。
「それに、男爵は昔、婚約者との結婚が破談になったことがあるようだ」
「それって……」
「事実関係は調査中だ」
小説と違ってルーシーが庶子じゃなかったのって……。ルーシーじゃなくて母親が転生者? ううん。もう小説のことは忘れよう。私は小説の登場人物じゃなくてこの世界に生きてるんだから。
ルーシー自身は母親が平民出身であること、にも関わらず幼い頃より頭がよく、神童だと言われていた。それくらいしか今回の調査では分からなかったようだ。
「令嬢はその薬草について何も知らなかったようだが、メアリーから聞かされた可能性がある」
「メアリーですか!?」
「母上がメアリーに頼まれ何か動いてるようなんだ。だからリリーナ、外はもちろん家の中でもなるべく一人にならないようにしなさい」
「アンナ、確か君は護衛術を身に付けていたはずだね?」
「はい」
「護衛騎士も付いているが、君もリリーナの側から離れないように」
「承知しました」
調べれば何か出てくるかもしれないとは思ったけれど、本当に何か出てくるなんて思いもしなかったわ。
とはいえまだ不明瞭な部分が多いし、私も注意深く見ておくことにしよう。




