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15.私の気持ち

「ねぇ。いじめてくるのは私が可愛いから?」 


 えっと……?


「何のことかしら」


 アルフレッド様達は剣の実技授業、私とアマンダは刺繍の授業にそれぞれ向かっていると、ルーシーに冤罪をかけられた。


「入学式の日だってアルフレッド様に寮まで案内を頼んだのに、リリーナが勝手に断ったじゃない」


 なるほど。アルフレッド様達がいないと敬称がなくなるのね。


「どうせまた身分が、とか言うんでしょ。でも恋をするのに身分は関係ないわ。今はまだアルフレッド様の婚約者みたいだけど、それって幼い時に親が勝手に決めたとかよね? 公爵家だから身分が釣り合ってるとかそんな理由で。今どき許嫁って。ふっ、……じゃないんだから」


 今、昭和って言ったわね。バカにしたように笑いながら。


「しょうわ?」

「時代遅れって意味よ」

「一つ聞きたいんですが、ご兄弟はいらっしゃる?」

「は? 一人っ子ですけど」

「お母様は、本邸に住んでいるのかしら」

「当たり前でしょ。なんなのよさっきから」


 庶子ではなさそうね。


「例え恋に身分が関係なかったとしても、男爵令嬢だと王族と婚姻はできませんよ」

「そんなのどうとでもなるわ。どこかの高位貴族の養子になればいいんだから」


 そんな簡単にいかないのだけどね。教える義理もないし言わないけれど。


「何故、アルフレッド様があなたを好きになるとお考えになったのかしら」

「だって、リリーナってまさに悪役令嬢って感じじゃない」

「悪役令嬢、ですか」

「公爵家で、王子の婚約者。かたや男爵令嬢。よくある話よ」

「言っている意味がよく分からないのですが」

「ふ~ん。なるほどね。まぁいいわ」


 そう言って1年生の棟の方へ戻っていった。


「リリーナ、殿下に報告したほうが良いわ」


 ずっと側で待っていてくれたアマンダ。


「……言わないわ」

「どうしてなの!?」


 恋をするのに身分は関係ない……か。


「報告したら、どんな理由であれアルフレッド様はあの令嬢を気にするでしょう。今はまだアルフレッド様に憧れを抱いている令嬢の一人でしかないのに」

「さっき言われたことを気にしているの? 大丈夫よ。リリーナが公爵家じゃなくても殿下はリリーナを好きになってるわ」

「そんなの、分からないわよ。私が男爵家だったらきっとその他大勢にしかならないわ……」

「リリーナ……」


 そういえば、婚約者に決まった頃はメアリーに横取りされるって思っていたわね。ルーシーが実在したら面倒になるから無難な道を選ぼうって、そう思っていたのに。


 メアリーの我が儘で嫌な思いをしても、アルフレッド様と会うだけで嫌な気持ちを忘れてしまえるようになったのは、いつからだったかしら。


 ルーシーの存在を思い出し、私は主人公じゃないからって不安に思って。

 蜂蜜オイルをメアリーに取られそうになった時、本当はあの時には気付いていたのに。

 蜂蜜より、ラベンダーより、薔薇の方が好きなのに。

 アルフレッド様が好きな香りを(まと)いたくて、ずっと同じ物を使い続けていて。


 王太子妃になる覚悟はしていたくせに。

 心の何処かでモブだからと、ずっと自分の気持ちに蓋をしていた。



 私はいつの間にかアルフレッド様を好きになっていたんだ。



「アルフレッド様に会いたい……」



「リリーナ? 何かあったのか?」

「アルフレッド様……」


 刺繍の授業を終え教室に戻ると、先に戻られていたアルフレッド様が私の様子がおかしい事に気付いてくれた。


 好きだと認めた途端、メアリーなのか、ルーシーなのか、アルフレッド様に憧れを抱いている令嬢なのか、誰かにアルフレッド様を取られてしまうんじゃないかって不安に思う気持ちをうまく隠せない。

 自分がこんなにも弱いなんて知らなかった。


「アマンダ嬢」

「はい。先程ホワイト男爵家のルーシー様にお会いしまして……」



「ダニエル」

「はい。次の担当教員には伝えておきます」


 アマンダから話を聞いたアルフレッド様に連れられ、高位貴族専用のサロンへ向かった。


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