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10.主人公の姉

 そう言えばこの10年でお兄様との関係も変わった。相変わらずメアリーを溺愛しているけれど、私とも普通に話してくれるようになったのは一緒に過ごす時間が増えたからかもしれない。


 お兄様は側近だし、私も王妃教育があるからタウンハウスで過ごす日が多くて、必然的に距離を縮められたのは嬉しい誤算だったわね。


「ねぇアンナ」

「はい」

「アルフレッド様がウィッグをプレゼントしてくださるのだけど、メアリーは羨ましがるかしら」

「恐らくは。来週にはこちらに来られると聞いています。届くのがそれ以降でしたら宛先は王城の方がよろしいかと」


 そうよねぇ。私が婚約者に選ばれたのを知ってからメアリーの我が儘が酷くなってしまったし。

 案の定婚約を羨ましがり、私の代わりに婚約者になりたいと泣き出して……お母様が何とかしてとお父様に訴えていた時は、本当に強制力ってやつが存在するんじゃないかって思ったほど。

 さすがに成約済みの婚約はお父様でもどうすることもできなくて、機嫌をとるためそれ以前よりも更にメアリーを甘やかすようになって。そりゃあ我が儘に拍車がかかるわよね。


 アルフレッド様からの贈り物は全て欲しがり、それを見ていたお母様にメアリーに渡すよう言われ……流石にまずいと思ったお兄様がアルフレッド様に相談して、王城に私の部屋を作ってもらって事なきを得てるけど。


 そんなメアリーが王立セルナ学園に通うため、来週タウンハウスに来てしまう。


 私の平穏の日々が……。


「リリーナ様。アマンダ様がご到着されたようです」

「ありがとう。南庭にある東屋に案内してもらえるかしら」

「かしこまりました」



「リリーナ!」

「アマンダ。今日は来てくれてありがとう」


 アマンダはベルナール侯爵家の令嬢で、私の唯一と言えるお友達。まぁ、公爵令嬢らしく? 取り巻きはいるけどね。


「リリーナ大丈夫? 元気がなさそうだけど」

「メアリーがね……」

「もうすぐ入学式があるものね。でも私達は最終学年だから授業も別だし、心配しなくても何も起こらないんじゃない? アルフレッド殿下に憧れてる新入生も遠目から見るだけでしょうし」

「アルフレッド殿下に憧れる新入生……」


 っ!!! すっかり忘れていたもう一人の存在を思い出してしまった。


 ルーシー


 王妃教育が始まってすぐに男爵家の家名を調べたけど、肝心のルーシーの家名を覚えていなくて、後回しにしていたら忘れてしまっていた。


 メアリーは何度かカマをかけてみたけど転生者ではなかった。ルーシーはどうだろう。転生者だった場合とそうでない場合と、起こり得る全ての可能性を考えておかなきゃ。


「心配ならアルフレッド殿下に相談してみたらどう?」

「城に住めばいいって言われそう」

「ふふっ。そうね。もう住んでしまえば?」


 確かにそうすればメアリーの我が儘からは逃げることができる。でもね…もちろんアルフレッド様の事を信頼しているけど、入学のタイミングでメアリーが前世を思い出して挽回するかもしれないし、ルーシーはどんな令嬢かすら分からないから。


 不安になってきた。だって私は物語の主人公じゃないから。


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