1.プロローグ
「騙されたと思ってさ、これ読んでみてよ~」
「ウェブ小説? 本当、小説好きだよね」
「これ珍しくって、悪役令嬢が幸せになるパターンの小説でね」
「いやいや、そういうの最近よく聞くけど」
「えっ? そうなの? 私、異世界小説初めて読んだんだよね。今まで青春ラブコメとかオフィスラブとかばっかり読んでたから知らなかったよ。でもめちゃくちゃ面白くて、異世界はまりそう~」
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「……?」
今の夢なんだろう? やけにリアルだったな…。
「失礼します。おはようございます。リリーナ様」
「おはよう」
私リリーナの専属メイド、アンナが起こしに来た。
「本日はメアリー様の5歳の誕生日でございますね。パーティーで着るドレスは先日届いたこちらでよろしいですか?」
「……」
「お嬢様?」
やっぱり先程の夢が気になって仕方ない。二人の女性が話していた場所はどこなのだろうか。懐かしさを感じるのは何故だろう。それに…二人が手にしていた本のようなものは何? 見開きの右側には見たことのない文字が並んでいた。
「リリーナ様?」
「ごめんなさい。寝起きで頭がはっきりしていなかったの。ドレスもそれで構わないわ」
アンナに着替えを手伝ってもらい、気が進まないが朝食の場へ向かう。メアリーの誕生日なんて、1年で1番って言ってもいいほど最悪な日だ。
何を隠そう、家族全員妹のメアリーを溺愛しているのだ。そのせいで存在が薄くなった私はメアリーが嫌いだし仲良くするつもりもない。そんな私に両親は扱いに困りだし、兄には最近避けられている。