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ゲームオーバー?

「ほんとう!?嬉しいな。折角だし、庭園でお茶でもしないか?」


ぱあっと顔を輝かせたアル。

そんな表情、ゲーム内でも結構好感度を上げなくては見れなかったはず。


私のどこがお気に召したんだろう…?


そう首を傾げつつも、アルに言われたまま、庭園へ。


ここを見るとあいつのことを思い出す……あぁ、思い出したくないことを思い出してしまった。あれは私の中では既に無かったことにしていたのに。


「紅茶と軽くスイーツを。」


私が一人思考に耽っている間にも、アルはテキパキとメイドさんに指示を飛ばす。

こうやって、指示しているところを見ると、さすが王子様って感じ。けれど、私に対してのアルって、子犬みたいで可愛いんだよな……。

ここもゲームと違う感じがする。

やはり、ゲーム世界と現実世界とでは、違いが生じてしまうものなのだろうか?


「お気遣いありがとうございます。」


「いいんだよ、僕がしたくてしたことだ。」


ゆっくりしていてねと一度、席を外すアル。

騎士団での訓練に使っていた訓練の用の衣服のままだったため、着替えてくるそうだ。

客人でもないに関わらず、ここまで至れり尽くせりのもてなしを受けてしまうと、いくら婚約の危機が迫っているとはいえ、申し訳なさが先立つ。


なにかできることないかな……


そんなことをぼんやりと考えながら、メイドさんが運んできてくれたスコーンに手を伸ばす。

さすが王国の料理長製。

外側はサクサクとしていて中はふわふわ。

これ以上のものに出会うことはできないのではないだろうか。


「美味しい……」


「そうですか、それはよかった。」


私の呟きに言葉が返ってくる。

アル…にしては帰ってくるのが早いな。

誰だろう?なんだかとても嫌な予感がするけれど…


その感は正しかったらしく、目の前の椅子、本来ならばアルが座るであろう椅子に腰掛けた青年がこちらを見つめていた。

その姿には見覚えしかなく……いや、こんなイケメンそうそういない。


「どうしたの?レイ。今私はお楽しみ中なのだけれど?」


若干の嫌味を込めて発した言葉は案外冷めた声になってしまった。


「いやぁ、婚約者が他の男にうつつを抜かしてるって聞いたら、見にいきたくもなるよね。」


「いえ、婚約者ではありませんよ。私はまだ婚約に同意していませんので。」


私の冷めた声を意に返さない様子で言葉を返してきたレイ。

そのセリフに若干引きつつも、冷めた態度は一貫して言葉を発する。

しかしそんな態度を取り続けているにも関わらず、レイは


「でも、他国の公爵令嬢に過ぎない君に拒否権などないんじゃないかな?」


と、にっこりとそう言ってのけた。

わかっている。わかっているけれど足掻いているのだ!

これって、ゲームオーバーですか?

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