対処不可能
「いえいえ、そんな訳にはいきません。改めまして、お目にかかれて光栄です。アリシア・レィディシアと申します。」
思わず呆けていた口を閉じ、改めて挨拶をする。
危ない……礼儀を欠くところだった。
攻略対象者を意識しすぎるのも禁物かもしれない。
「話には聞いているよ。慣れないことも多いかもしれないけれど、困ったときはぜひ僕を頼ってね。」
なんだか、王子に後光が差しているように見える…
「あっ、そうだ。僕のことはアルとでも呼んでくれる?アリシア。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
愛称呼び&愛称許可いただきました!
これは、ある程度親密度がないと到達できない高み…
序盤でここまで行けるとは。ゲームとの齟齬を少し感じるけれど、そこは、私の行動が功を奏したと思っておこう。
「それでは、みなさんのお邪魔をするわけにはいきませんから、お暇させていただきますね。」
興奮してしまうも、少し申し訳なさそうな表情で取り繕う。
すると、王子……アルがなぜだか、残念そうな顔をした。
あれ…?
「どうしましたか?アル。」
若干、内心いやらしい笑みを浮かべながら早速愛称呼びを使わせてもらう。
この機会を逃す手はない!少しでも爪痕を…
「いや……その。」
アルが先な言葉を話すことを躊躇するかのように口籠る。
「もう少し、ここにいてほしいなって。」
えっ
「みなさんが…いいのであれば」
急な展開についていけていない頭でなんとか返す。
とりあえずは謙虚な態度を貫くことはできたものの、表情まで取り繕えたかは怪しい。
こんな表情をされるほど、好感度を上げたわけではないのに……
ゲームとの齟齬が発生してしまえば、手に負えそうにありません…