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現実逃避

「…そろそろ止めにしていただけませんか?」


二人きりの空気に耐えかねたオルディアがおずおずと声を上げた。

さすがに放置しすぎたか。

しばらくの間いろいろと可哀想なことをしたオルディアに申し訳なさを感じつつ、オルデアとの時間を終了とすることにする。

……名残惜しいけど。



ぼすっとふわふわとしたベットに体を預ける。


さて、これからどうするべきか。


しばらくの間、おもちゃ…オルディアを使って遊んで現実逃避をしていたけれど、そろそろ現実と向き合う時だろう。

そう、現実…レイと向き合わねば。


といっても、ここはオルディアの別邸だったはずだから、レイのいた国から程遠い場所だろう。それなら、位置が割り出されてしまっていたとしてもかなりの時間的猶予はある。それならば、まずはレイが追ってきた際の逃走経路の確保だろう。逃走手段の確保と言ってもいいかもしれない。


でも……そこでふと夜風に吹かれるカーテン越しに見えた夜空を見上げる。

万が一、オルデアや、あとついでにオルディアが危険な目に遭ってしまったとしたら…


相手はあの話の通じないレイだ。何をするかわかったものじゃない。一貴族よりも王族の方が地位は当然うえ、最悪処刑だってありえる……


そこまで考えて、あまりに自己中すぎた先ほどの考えを振り払うように頭を振る。

こんなんじゃダメだ……大切な人とまあ大切かもしれない人ができた以上、見捨てて自分だけ、なんて考えじゃ。


なにか打開策は…



紙は文字で埋め尽くされ、幾つもの文章が線を引き消されている。


なんだこの紙は……


栗色の髪のメイドはベッドに置かれた紙を見て首を傾げた。その紙にはいかにしてレイという人物から逃れるかがつらつらと書かれていた。


レイとは隣国の王子のことだろうか?そしてこれはその方から逃げるための計画案のようなもの……?


「…ふっ…あははっ」


馬鹿だなぁ。私がいる限り、あなたが何をしようとも物語は私の思う通りに進むというのに。あなたが逃げようとしなくても、私の庇護下にある限り、隣国の王子が私たちに危害を加えることなどない。


この別荘は、誰も知らないのだから。


ここはオルディア様の別荘。それは間違っていない。けれど、社交界の情報としてアリシアが知っている別荘は表向きのもの。あくまでカモフラージュとして用意したものだ。本当のものはここ…隣国から最も遠い地、深い深い森の奥にひっそりと建てられた隠された別荘だ。


それに気づいてすらいないというのに、勝手に行動しようとは烏滸がましい。


紙をメイド服のワンピースのポケットに入れる。


こんな無駄なことは考えなくていい。ヒロインなら、シナリオ通りに動くべきでしょう?


そこまで考えてから、部屋の壁にかけられた時計の針が思いのほか進んでいたことに気づく。


案外、思考に耽りすぎていたようだ。

掃除に戻らないと。



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