表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/49

犠牲と成果

唐突に現れたイケメンモブに気力を大きく削がれた私は、散策を断念し、部屋に戻ってきていた。

空にはもうすでに赤い光が差し始めていた。


「失礼します」


窓の外に目をやっていると、軽快なノックの音と共に今朝お世話を担当してくれたメイドさんが部屋に入ってきた。


「そろそろ、舞踏会も始まりますので、お召し替えを手伝わせていただきますね。」


そういって、素早く隣室の衣裳室からドレスを取り出し、着せていく。

着せ替え人形みたいにされながら、されるがままに完璧な宴会モードに。


色素の薄い髪と揃えられた淡い色の紫のエンパイアラインのドレス。

瞳の色に合わせられた宝石。

今日あつらえてもらった服と同じくシンプルである点は変わらないものの、優美さも兼ね備えた仕上がりとなっていた。


「それでは、皆様お待ちですので会場へご案内させていただきますね。」


鏡の中の自分に思わず見惚れてしまっていた私にメイドさんがそんな私の様子に気にした風もなく微笑みかける。


しまった…まだ見慣れない姿だからか、いまだにシアの美少女ぶりに感嘆してしまう。

はたからみれば、自分のことが好きすぎる人に見えてしまっていたことだろう。

気をつけねば、どの仕草で、どの行動で、好感度が下がってしまうかわからない。この世界には、好感度の表示なんて優しいもの、存在しないんだから。


「レィディシア公爵閣下、アリシア公爵令嬢の御入場です。」


会場の入り口を守護する衛兵の声が広い空間に轟々と響く。

それと途端に注がれる視線。

なんだか既視感。

その視線の大半は新公爵となったお父様に向けられているが、私に向けられる視線も決して少なくなく。

その視線はギラギラとしているように思えた。

それも仕方のないこと。婚約者の座の空いている公爵令嬢。そんなの、狙われるに決まっている。


「新公爵となったこと、お祝い申し上げる。うちには息子がいて…」


ほら、もう長蛇の列が出来上がっております。

怖いです!ここの貴族の方々の行動の速さが。


そんな人たちに囲まれ、困惑するお父様を尻目に、群衆の間を縫い抜け出す。

一瞬、お父様の唖然とした顔が目に入ったけれど、知らないふりをさせてもらう。


愛する娘のためにここは少し頑張っていただこう……



大理石でできた階段を登り、二階へ向かう。

向かう先はテラス。

目的はもちろん、攻略対象者だ。

乙女ゲームと言ったら舞踏会を抜け出しテラスに行った先で…だよね!


この世界で初めてお目にかかる攻略対象者に会えるかと思うと、気分が高揚してしまう。

弾む気持ちでテラスを覗く。

月明かりに照らされ淡く輝く青い髪、ふわりと吹き付ける風に目を細める姿は、その整った容姿も相まって、幻想的にさえ感じられる。


どこか既視感のある外見……変人イケメンがいた。



君じゃないんだよ!確かにイケメンではあるけれど、性格は変人でガッカリ系イケメンさん。

そんな人は私のハーレムに加えるつもりなど毛頭ないのだよ!


攻略対象者に会えることを期待していただけに、愕然とすると同時に怒りすら感じられる。


「すみません。間違えました。」


私は開けかけたテラスの扉をそうっと閉めた。

次回は2/27投稿予定です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ