イケメンなら……ね?1
たどり着いたのはざわざわと人の声で賑わう大通りとは違い、静かな雰囲気を纏う場所。
まるでそこだけ別世界かのようにしんと静まり返っている。
そう、路地です。
路地裏と言ったら危ない人に絡まれたり…しそうだけれど、そこは公爵令嬢です。
公爵令嬢を侮るなかれ!もちろん、屈強な男たちが背後を守っているおかげで襲われることはございません!
これほど貴族という地位をフルに活用する私は、かなりこの世界の貴族が板について来たのではなかろうか。
というわけで、あの大通りの治安の悪さから逃げた先でまたもや治安の悪さによる問題に巻き込まれる…なんてことはなく、順調に目的地へと進んでいた。
大通りと違って曲がり角などが多く、まるで迷路なそこは少し遠回りになってしまっているのだけれど。
「アリシア様。足元お気をつけください。目的地はあと少しですので。」
そんな迷路でも安心!土地勘のある王城勤めの騎士様のナビ機能までついていますから。
あぁ……貴族令嬢という立場に混乱していたりしていたけれど、慣れたものだわ。
権力最高!
我ながらヒロインであるというのに、ヒロインらしからぬ性格だな…と苦笑しつつもこの考えを改めることはできない。
権力は最高。それでいいのだ。
手持ちの手札は上手く使う。遠慮していては宝の持ち腐れだろう。
そんなくだらないことに思考のリソースを割きつつ歩いていると、建物ばかりで狭まっていた視界が開けた。
少し大きい道に出たようで、そこは先はどこ路地のように閑散とした場所ではなく、また賑わいを取り戻したような人通りの多さだった。
ここは5番街。あの道をまっすぐ行くと……
案内に従いながらも頭の中にゲーム内で得た知識である、攻略対象者のいる場所を思い浮かべながら進んでいく。
と、路地を抜け少し歩くと一軒の屋敷とも言える規模の家が見えた。
赤茶けた屋根に黄変したような白い煉瓦造りの壁。壁を這う蔦は伸び切っていた。
それほどの広さはないものの家を取り囲むように佇む庭には、手入れがされていないのか雑草が生い茂り、雑然とものが並んでいた。
一見すると廃墟みたいなこの屋敷…
こんなところに攻略対象者がいるのか?
ーいるんですね。
まぁ、ここにいるのは攻略対象者の中でも1番の変わり者。イケメンなので許容範囲なんですけどね。
この話も前回と同じく何話かあわせての一つの話になります!
次回投稿もお楽しみに!