拒否権を主張します!3
カフェインをとったことで少しだけ冴えた頭で、打開策を練る。
とりあえず、どうすればこの状況を打破できるか考えるのが先決。
けれど、王子は今回の件で仲を深めるのは少し厳しそうよね……
というか、何故レイはここまで邪魔をしてくるんだろう?
そもそも執着されるようなことなどしていないし、レイは乙女ゲームに登場していない。
それなのにヒロインと攻略対象者のイベントを邪魔するって……あきらかにおかしいよね。
レイは転生者だったりするのかな?それとも、ゲームと現実は違うのかな?
前者だった場合、ヒロインと私の行動の違いに違和感を感じるはず。その転生者がこの乙女ゲームを知っていた場合は…だけれど。それにしても、転生者だとは思えないな…
後者の場合は、まあ、あり得ない話でもない。
必ずしもゲームと現実が同じとは限らないし、私というイレギュラーな存在が介入したことにより、歪みが生じてしまったのかもしれないし。
まあ、どちらにせよ、私がすることには変わりはないかな。とりあえず、王子は保留にするとして、他の攻略対象者を攻略しに行くとしよう。
レイの横槍を防ぐことも必要で、労力が…
これも夢の逆ハーレムのためと思って耐えよう……
「こんにちは!オルディア様。」
訪れたのは王城に与えられた部屋から程遠い、別宮にある一つの部署。
国の財政を管理する部署だ。
そこには国の貴族が多く勤めており、地位、能力ともに優れた者たちが集っている。
そんな国の中枢とも言えるこの場所には、攻略対象者の一人、オルディア・アルデがいた。
「どうしましたか?お嬢さん。」
切れ長の瞳を涼しげに細めたオルディアは、陽の光を受けて輝く金色の髪に透き通った緑の瞳、整った鼻梁の他の攻略対象者に並ぶイケメンだった。
オルディアは淡々とした冷めた態度でありながらも一度心を開いた者にはとても優しく、それはもう甘やかしてくれる。
けれどそんな一面もありながら普段は冷めた態度を貫いているのだ。
いわばツンデレである。
ツンデレもツンデレでいい。
イケメンなら誰でも受け付けているが、ツンデレという属性付きイケメンもまた……
「どうしたんですか?」
少し邪なことを考えていた私に返事がないことを不審に思ったのか、少し怪訝そうに尋ねてくる。
「あっ、すみません。父に要件がありまして。」
何故用もなしに来ることができたのか?それはひとえに、シアの父、レィディシア公爵様がこの財務部署をまとめる役職、部署長を務めていたからだ。
この国の公爵家はどこも国の重鎮として国の重要な役職についており、今回公爵となったレィディシア公爵も例に漏れずこのような役職についたのだった。
「そうか、あなたはレィディシア公爵の……」
私の言葉を受けて、オルディアがぼそっと呟く。
少し考える素振りを見せたのち、オルディアが私の方をちらっと一瞥した。
「わかった。公爵様に伝えてくるから、応接室で待っていてくれ。」
彼はそばにいた部下らしきひとに私を案内するように伝え、執務室のさらに奥の部屋へと去っていった。
なんだか、私に向けられた視線が少し冷めていたような……?
これは、少しの接する時間でもいい印象を与えるという作戦は失敗してしまったのかな。
笑顔は上手くできるように練習したし、細かな仕草も、オルディア好みの服装も全て揃えてきた。
私の一晩で考えた計画に穴はないはず。
なんで…?
「どうしたのかい?シア。」
程なくして応接室に訪れたお父様は、心なしからやつれて見えた。
ここ最近、部署で寝泊まりしていると聞いてはいたけれど、まさかここまでとは……
「少しお願いがありまして…」
どうしよう、お願いがあるとは言ったものの、とりあえずオルディアに会うことを第一目標として考えていたせいで、お父様に話、といってもなにもない。
考えてないよ…!どうしよう
「あ、そのまえに、シア。私に話があるんじゃないかな?」
はっとしたように目を見開いたお父様。
その視線が急に冷めたものになったのを見て、嫌な予感が込み上げる。
「なにか、ありましたっけ……?」
婚約についてですか?違いますよね?何故私宛の手紙を知っているんですか…?
いや、よりによってそんな話知らないですよね。きっと。