和歌で漫才してみます
「転生と悪役令嬢追放と次は一体何が来るかな?」
「あれ――待って!令嬢のとこ文字多い!」
「字余りや字足らずとかもありだよね?なろうの流行り詠ってみたよ」
スポットライトが集まるマイクの前で、漫才さながらに話す二人がいた。
「季語入れて!俳句読むなら季語入れて!」
「川柳もまた乙なものだよ。文字が躍るよ、脳内で」
「うそ寒い。急な都都逸、うそ寒い!」
ボケ役の言葉に合わせ、ツッコミ役は腕を組み寒そうに体を震わせる。
「繰り返し……やってみるかな、都都逸で」
「やる前にこの曲聞いて。甲子園」
ああ栄冠は君に輝くの曲が流れ始めた。
「旋頭歌――なら控えるが無難かな?会話中での検索並みに」
端末を操作し、音楽を流すツッコミ役にボケ役が冷ややかな視線を送る。
「ネットとかAIとかはよく使う。頼りすぎるの控えておこう」
ぷいっと顔をそむけた相方にボケ役は視線の先に動き、ゆっくりと口を開く。
「機械はね、使っていると使われる。主従が逆になるほどに」
「便利だし春夏秋冬いつだって」
季重なりなどどこ吹く風か、ツッコミ役はそっぽを向いて答えた。
「考える力はきっと役立つよ。いついつだって、どこにいたって」
「なら俳句。スイートピーを咲かすなら」
新たな門出の花言葉を持つ花を出し、突っ込み役はボケ役に要求する。
長歌を読むつもりでいたのか、ボケ役は面食らう。
少しの間顎に手を当てて考えた後、ツッコミ役は俳句を詠む。
「コスモスや。ああコスモスや。コスモスや」