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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (2)

桜桃が選んだメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64は全三楽章で全曲演奏すれば25分を越える曲で、第一楽章だけでも13分にも及ぶ。ヴァイオリンを主役を張る有名曲だ。桜桃が中学生の時にコンクールで弾いたのは第一楽章の冒頭の3分間で、その部分を生徒会選挙の最終PRで弾くつもりだ。部分的に弾くとはいえ、曲全体を知っておくと、より鮮明に描写することができるし、作曲者の意図や込められた想いも読み取りやすくなる。

 音楽を入れて、桜桃自身をPRする。ヴァイオリン協奏曲で桜桃のことを知ってもらうという自己PRは、突飛なアイディアではあるけれども、桜桃らしさを出すのに良いものであった。とはいえ、生徒会選挙なわけで、生徒会長として何がやりたいのかということを主張することが一番重要である。持ち時間の8分間の前半は、よくある最終演説、そして、伝えたいことを楽曲で示すということで、桜桃は練習に取り組んだ。

 うまくなるためには、誰かに聞いてもらうのがいい。幼馴染の島田蒼佑が、数日前に桜桃に良いレッスンを受ける方法を教えてくれた。

「ReGだとさ、仕事を見つけられるし、反対に仕事を依頼できる。ちょっと手伝ってもらいたいことがあったんだけど、そん時に見つけてさ」

蒼佑が教えてくれたのは、ギュフや雁湖学院の関係者だけが使っているアプリReGで、そこで趣味の講師を見つけ出すというものだった。音楽のレッスンも頼めることを悟り、リストを確認すると、知っている名前があった。

 若宮奏……彼女は、桜桃と同世代で、テレビ番組で天才ピアニストとして囃し立てられた少女だった。桜桃は田舎に住んでいたが、インターネットで情報を得ていたから、奏のことを良く知っていた。中学生の頃は、CDを発売したり、演奏がCMに使われたりと有名であったが、最近はあまり活動していないようだった。まさかそんな子が芸術科に居る。奏だけではなくて、有名な浅木海里まで居て、桜桃の眼はくらむようだった。

 若宮奏の演奏も、浅木海里の演奏もよく聞いていたけれども、どちらかというと奏の演奏の方が好きだった。

(まさか、ReG見てたら、若宮奏のオンラインレッスンがあるとは……しかも、Gp、ポイントで受けられという凄いサービス……。絶対受けるに決まってる……)

奏は、音楽全般についてのレッスンをオンラインで引き受けるということだったので、桜桃は迷わずレッスンを依頼した。

 18時から一時間のレッスンだったが、良い演奏を聞かせたいと思い授業が終わった後、すぐに練習室に入って練習をした。練習室はオンラインレッスンのことも考慮に入れて、タブレットを置くことができるような台も設置されていて、どうすれば上手くこちらの映像が届くのか、台にタブレットを置いて、画像を確認し、よりよく見えるように工夫を凝らした。

 若宮奏は背が高く、体格のいい少女で、その大きな手で男性に負けないくらいの力強い表現を生み出すことができた。力強さだけではなくて、女性らしい繊細で柔らかいパッセージも特徴的で、中性的な王子様のような雰囲気がする。演奏も好きだけれども、その人となりがが好きだった。そして、憧れの若宮奏がやってくるのを待った。


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