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ハガキ 水の物語  作者: 伊諾 愛彩
第6章
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水の物語 6.Put together (32)


 その議題となっている芸術奨励金を貰った若宮奏は、画面越しの葛西桜桃に対して語り始めた。

「ギュフの芸術奨励金、その給付が決まって、3枚のハガキをもらった。そこには、真生の想いが詰まっていてね、……私の気持ちを大切にしてくれるものだった。私が、海外に行きたいということを話したら、行きたいときに行った方が良いって、真生は背中押してくれた。大きな力を感じた。ハガキで鼓舞してくれただけじゃなくてね。ヨーロッパでこういう人を頼ればいいって、色んな人紹介してもらった。ホームステイさせてもらったり、そういうので費用抑えて、色んな経験しなさいって、言ってもらってる」

桜桃は表情を緩めて言った。

「羨ましいな。そんな経験なかなか出来ないよ。……親に頼めば、出来るかもしれないけど、私は怖いなって思っちゃうから」

「どうして、怖い?」

「だって、言葉違うんだよ。何かあった時に、自分のこと、話せないよ」

「……そうかな。寧ろこっちの方が自分の話をできていると思う。言葉は違うけど、感性が近かったら、そんなに困らない、ホームステイの家族とは、すごく合うの。だから、自分のことちゃんと話せるし、話そうと思える。これは、真生がくれた縁なんだよね。安く済ませられるっていうのもあるけど、それ以上に大事な気持ちをくれた」

羨ましいと思った。そして、桜桃は目を細めた。

「……へぇ、真生さんって凄い人なんだ」

(そんな人が支えてくれる環境に居るってことなんだなって思ったら、何だか嬉しいな)

心が温かくなって、微笑んだ桜桃は、画面越しでも、穏やかで、とても綺麗だった。

「あ、でも、別に全面的に信頼してるっていうわけではなくて、契約の関係でもあるんだ。えっと、奨励金を貰ってるでしょ。だから、代わりに、ギュフの広報誌とかのインタビューとかはやってる。あまり、言葉で自分のことを説明するのは得意じゃないし、好きじゃないけど、パトロンの仕事断るなんてできないじゃない。……奨励金だから、別に無視してもいいんだけど、真生のなら、やってもいいかなって……。これ、やりたいからやってるのかなって……。真生が応援してくれる……違うな、真生を通じてギュフの人みんなが応援してくれてる奨励金なんだよね。だから、それに応えたいと思うから、やろうって思える。良いものを届けられるように、頑張ってる。色んな人に会って、色んな経験をして、たくさん練習して……」

奏から溢れてくるものは、穏やかで柔らかく、丸い。そのテクスチャーを感じた。

「……素敵、だね」

桜桃は呟いた。



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